クルージングヨット教室物語112
Photo by K Muramatsu on Unsplash
「お風呂屋さんってどこにあるの?」
「わからない」
ラッコの皆は、お風呂へ入りに行こうと保田の街をぶらぶら歩いていた。
「え、わからないの?」
「うん、わからない。いや、保田の駅へ行くまでの道のどっかにあったよ」
隆は、陽子に答えた。
「え、道をぜんぜんわからなくて、ここまで歩いてきたの」
「いや、駅に着くまでのどっかにあったよ。歩いていれば出てくるかなと思って・・」
隆は、麻美子に答えた。
「やだ、わからずに歩いていたなんて」
「保田の街なんて小さいんだから、あそこの駅を過ぎたら何も無い街なんだから、どっかで見つかるさ」
隆は、麻美子に言った。
「呆れた道案内さんね」
そうこう歩いているうちに、保田駅の駅前までやって来てしまっていた。
「あ、横須賀線!」
駅にやって来た電車を見て、横浜育ちの瑠璃子が叫んだ。
「横須賀線じゃないよ、内房線だよ」
反対側からは、オレンジとグリーン色の電車がやって来た。
「東海道線!」
「だから、内房線だって」
「私も、東海道線だと思った」
陽子が、瑠璃子と同じことを言った。
「電車の本数が少ないね」
「田舎のローカル線だからね」
麻美子と雪が、駅の時刻表を眺めていた。
「ばんやって店、けっこう話題になっているじゃない。うちのお父さんとお母さんを連れて来てあげようかと思ったけど、この本数だと連れて来るの大変かもね」
「そうだね」
雪は、麻美子に答えた。
「電車で連れてこなくても良いじゃん」
隆が、麻美子に言った。
「ヨットで来ればすぐだよ」
「お父さんとお母さんを連れて来るんだけど、ヨットで来れないでしょう」
「麻美子のお父さんって、ヨットに乗れないんだっけ?」
「乗れないよ」
「なんか乗っていた気がしたけど。外国で」
「乗ってないよ。サンフランシスコのこと?海にいっぱいヨットが浮かんでいたってだけで、本人は全くヨットなんて乗ったことないし」
「そうなんだ、今度一緒に連れてこようよ」
「こんな寒い時期じゃなくて、もっと来年の暖かい日にでもね」
麻美子は、隆に答えた。
「麻美ちゃんのお父さんに会ってみたい!」
「うん、そうだ!お父さん連れて来たら、香代ちゃんにヨットを出してもらおうかな」
麻美子が言うと、香代は大きく頷いていた。
「で、お風呂屋さんは?」
「どこだろうね、どこかで通り越してしまったかな」
「当てにならないんだから」
麻美子は、隆に苦笑して、駅にいた駅員さんに訪ねてみた。
「はい、ありがとうございます」
麻美子は、駅員さんにお礼を言って、駅から出て来た。
「お風呂屋さんは無いってさ」
麻美子は、隆に言った。
「民宿で日帰り入浴させてくれるところがあるんですって」
麻美子を先頭に駅からすぐ近くにある民宿へと向かった。
「確かにそうだったかも。前にきたときも、お風呂屋さんが無くて、民宿でお風呂を借りた気がする」
隆は、麻美子の後ろを追っかけながら、陽子と話していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など