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クルージングヨット教室物語111

Photo by Ryo Nagisa on Unsplash

「保田の漁港は見て来たの?」

「ううん。まだ、こっちに着いてから陸には全然上がっていない」

香織は、アクエリアスを経由して、ポンツーンに移動している隆に聞かれて、答えた。

「それじゃ、これが千葉の初上陸だ」

隆は、一緒に移動していた陽子とアクエリアスからポンツーンに降り立ちながら、香織に言った。

「私も、千葉に初上陸!」

香織も、隆と陽子に続いて、ポンツーンに降り立って答えた。ポンツーンのスロープを上がると、本当の千葉の陸地、保田の漁港に初上陸となった。

「隆ー!どこに行くの?」

ラッコのデッキ上から、麻美子が大声で呼んだ。

「ちょっと、そこら辺を散歩して来るだけ」

隆は、麻美子に返事した。

「停船料を払いに行くなら、お金渡すよ」

麻美子は、自分のバッグを隆に見せながら、返事した。

「麻美子、一緒に来て、払って来てよ」

隆に言われて、麻美子は香代と一緒にアクエリアスを経由して、ポンツーンに降りると、3人のいる岸壁に走ってきた。

「ちょっと散歩してこよう」

5人は、船を離れて、漁港内をぶらぶらと歩き出した。

「隆さん、待ってー」

ラッコに残っていた瑠璃子と雪も降りてきて、結局7人全員で散歩に行くこととなった。

鈴野さんは、アクエリアスで中村さんたちとお酒を飲んでいた。

「漁港の事務所は、そこだよ」

隆に言われて、麻美子と香代は事務所に停船料を支払いに行った。

「隆、先に行かないでよ。そこで待っていてよ」

事務所の入り口の扉を開けながら、先に散歩に行ってしまいそうな隆に、麻美子は声をかけた。

「魚でも眺めて、待っていよう」

隆たちは、麻美子が戻って来るまで、漁港の水揚げされた魚を眺めていた。

「なんか割引券をくれた」

麻美子は、隆に漁港事務所でもらった食事の割引券を見せた。

「そこのばんやの割引券でしょう」

漁港の入り口のところに掘建て小屋が建っていて、そこが食事できる料理屋さんになっていた。

「どうせ、ばんやでマリーナの懇親会やるから行くけど」

「じゃ、その時に、この割引券使えるのかな」

「今日の懇親会は、マリーナでまとめて手配済みだけど後で、鈴野さんに聞いてみたら」

皆は、ばんやの前に立っていた。

「今夜は、ここで食事するの」

「うん。懇親会と、あと皆さんの卒業式」

隆は、麻美子を始め皆に答えた。

「このばんやってお店、よくテレビとかで紹介されているよね。お魚が新鮮で東京から車や電車でわざわざ食べに来る人も多いって」

「雑誌とかでも、よく掲載されているよね」

「一度、食べてみたかったんだ」

麻美子は、ばんやの夕食が楽しみだった。

「1回、船に戻ってお風呂行こうか」

「お風呂あるの?」

「小さい村だけど、銭湯ぐらいはあるよ。せっかくお目貸し持ってきたんだし」

隆は、瑠璃子に言った。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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