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クルージングヨット教室物語110

Photo by ISO10 on Unsplash

「もう目の前だから、セイルを下ろそうか」

ラッコが本船航路を無事渡り終えると、隆は皆に指示を出した。

メインとミズンのマスト根元に行くと、セイルのハリヤーどのシートを緩めて、上がっていたメインセイルとミズンセイルを下ろした。

ヨットのセイルは、ハリヤーどと呼ばれるマストに沿って、セイルを上げ下げするシートを引いたり、緩めたりすることで上下する。

「エンジンの速度を上げます」

香代は、皆がセイルを下ろし終わったのを確認してから、エンジンのスピードをあげて、保田の漁港内に入港した。

「ここで、到着時間になります」

漁港の中にラッコが入ると、鈴野さんが言った。鈴野さんの声を受けて、瑠璃子は、スマホにラッコの到着時間を記録した。

「代わろうか」

港内に入ってから、隆が香代とラットを代わった。

保田の漁港には、ゲストでやって来たボートやヨットが停泊するためのポンツーンが付いているのだが、既にラッコと同じ横浜のマリーナから出航して来た船がいっぱい泊まっていて空きがなかった。

「アンドサンクの横に泊めさせてもらおうか」

隆は、既にポンツーンに停泊しているアンドサンクの横付けしようと考えていた。

「アクエリアスの横は?」

ラットを握っている隆の背後に香代と立っていた麻美子が、隆に聞いた。

「アクエリアスって、ポンツーンの向こう側じゃん。あっちに回り込むの」

「大変?」

「別に、大変ではないけど」

隆は、麻美子に答えた。

「だったら、アクエリアスの横に泊めてよ」

麻美子は、隆に指示した。

「アクエリアスと離れたところだと、香織ちゃんがこっちに来るの大変になってしまうじゃない」

「わかった」

隆は、麻美子の指示で、ポンツーンの反対側に回り、アクエリアスに横付けした。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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