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クルージングヨット教室物語89

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「三崎の出入り口付近は、漁網がいっぱい張ってあるからな」

隆は、漁網にラッコが引っかからないようにと、香代に注意していた。

「漁網に引っかかってしまったらどうなるの?」

「引っかかってしまったら、その日に獲れるはずだった想定の漁獲量分を弁償だよ」

「その日に獲れる分って・・」

「1000万とか」

隆が、麻美子に答えると、

「やだ、香代ちゃん気をつけてね。ぜったいに網に引っ掛けないでね」

麻美子が心配そうに、香代へお願いしていた。

「なるだけ、左のほうを走って、網の方には近寄らないように入港しような」

隆は、漁港の入り口の城ヶ島に渡る橋をくぐるまでは、気をつけるようにと注意するだけで、ずっと香代にラットを持たせたまま、三崎漁港に入港させていた。

「よし、ラットを代わろうか」

城ヶ島大橋をくぐった後、ようやく隆は香代からラットを代わった。

「その先の白い建物の前に停泊しよう」

隆は、ラットを操船しながら、ラッコのメンバーたちに伝えた。メンバーたちは、舫いロープやフェンダーなどをロッカーから取り出して、着岸の準備していた。

ラッコの前方を走っていたアクエリアスは、隆が停泊させようとしていた白い建物の前に停泊していた。

「岸壁じゃなくて、アクエリアスの横に付けるか」

隆は、皆に伝えて、岸壁に横付けしているアクエリアスの横にラッコを横付けした。

「そちらの船も、こちらのシートにご記入お願いします」

白い建物の前に立っていた係りの男性が、ラッコたちにも声をかけてきた。

「え、何か記入するの?」

「ここの漁港に一泊するから、船の名前とか記載しておいてくれってさ」

隆は、麻美子に漁港の係りの男性が来た理由を説明した。

「お財布も持っていかないとだめだよ」

そのまま、岸壁に向かおうとしている麻美子に、隆が言った。

「今夜、ここに一泊する停泊料を払わないといけないんだから」

麻美子は、慌ててキャビンの中に入ると、お財布を持って出て来た。

「ここって、停泊するのにお金がかかるんだ」

「1泊1000円ぐらいだけどね」

「館山って、特にお金は掛からなかったよね」

「うん。でも、1000円ぐらいだったら払った方が、こっちも気持ちよく泊まれるじゃん」

「確かに、それはあるかも」

陽子が、隆に頷いた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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