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クルージングヨット教室物語86

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「なんか手伝う?」

「陽子ちゃんとか瑠璃ちゃんが手伝ってくれてるし大丈夫よ。中村さんたちとお酒飲んでて」

雪は、麻美子に言われて、パイロットハウスのメインサロンで、中村さんたちとビールを飲んでいた。

「きれいなお魚。ローゼンでこんな魚買ったっけ?」

「さっき、お風呂の帰りに漁港前のお魚屋さんで買ったのよ」

麻美子は、真っ赤な鯛のアラを煮込みながら。瑠璃子に返事した。

「やっぱり、漁港のお魚はスーパーで買うお魚と全然違うよね」

「クルージングで、漁港に停泊した時の楽しみの一つよね」

美味しい魚が食べられるのは、ヨットで漁港に立ち寄った時の楽しみだった。

「お鍋さ、これ一つをテーブルの真ん中に置いて、皆で突っつきましょうか」

麻美子は、魚とお野菜を煮込んだ鍋を、パイロットハウス側のメインテーブルの真ん中に置いた。

「こっち側で食べる人たちの分はないの?」

ダイニングテーブルで野菜を揃えていた隆が、麻美子に聞いた。

「今日は人数少ないし、皆そろって向こうで全員食べられるでしょう」

アクエリアスの人数が少ないから、メインサロンで全員座れそうだった。

パイロットハウスのメインサロンだと、四方を大きな窓で囲まれているので、漁港の漁船やボートなど港の景色を眺めながらの食事ができた。

「いただきましょう」

麻美子の言葉で、メインサロンの席に座った皆の夕食の時間になった。

「中村さん、ビールからお酒に切り替えますか」

「お、そうだね」

麻美子は、ギャレーで温めておいた熱燗を中村さんたちの前に出した。

「隆は?熱燗は飲んでみる?」

麻美子に聞かれたが、隆は首を横に振って断っていた。

今夜の熱燗は、中村さんと雪の2人だけだった。

「麻美ちゃんは、熱燗飲まないの?」

「じゃ、少しだけ」

麻美子は、雪からお酌に半分ぐらいだけ熱燗を注いでもらっていた。

夏のクルージングでは、ドリーム号とも合流したし、お酒を飲む人たちの人数も多く、割と豪快に賑やかな飲み会になっていたが、今夜はしっとりと静かにお酒を楽しんでいた。

「こういう飲みも良いね」

隆たちビールを飲んでいた人たちは、1杯目のビールを飲み終えると、もう既にオレンジジュースや烏竜茶に飲み物は切り替えていた。

食事を終えた後も、静かにお喋りして過ごす一夜となった。パイロットハウス前方に付いているモニターから流れてくるテレビの音ぐらいだった。

「そろそろ寝ましょうか」

夜遅くまで飲み明かすなんてこともなく、適当な時間で夕食の片付けすると、就寝となった。

麻美子は、ダイニングサロンのテーブルを下ろすと、クッションを敷いてベッドメイクして、カーテンを敷いて、そこで眠れるようにした。

「3人で並んで寝れるわよね」

麻美子が言うと、陽子、瑠璃子、香織の3人は頷いた。

フォアキャビンでは、雪が自分が寝るためのベッドメイクをして、眠りについた。ダイニングのベッドメイクを終えた麻美子は、パイロットハウスのメインサロンのテーブルを下ろして、パイロットハウスのベッドメイクを始めていた。

「ここは、どうやったらベッドに変わるの?」

始めて、メインサロンのバース作りする麻美子は、横にいる隆にクッションの敷き詰め方を聞いていた。

「後は、普通にシーツとか敷けば良いのよね」

麻美子が、メインサロンのバースにシーツを敷き終えると、ベッドが出来上がっていた。

「これだと、朝陽が入って、この部屋眩しくない?」

麻美子は、パイロットハウスの四方に付いた大きな窓を見て呟いた。

「朝陽ぐらい大丈夫よ」

中村さんは、麻美子に言ったが、

「カーテンを閉めれば良いんですよ」

隆は、窓枠の内側に付いているロールカーテンを下ろした。

「そんなところにカーテンが付いていたんだ」

麻美子は、隆が閉めたロールカーテンを真似して、ほかの窓にも付いていたロールカーテンも閉めて、全ての窓のカーテンを締め切った。遮光性のあるロールカーテンで、窓の外の漁船の灯などがパイロットハウス内に全く入ってこなくなった。

「後は、ここを閉めてしまえば、完全個室だよ」

隆は、パイロットハウスの通路とサロンの間に付いたカーテンを仕切った。

「これは、快適に寝れてしまうね」

「おやすみなさい」

隆と麻美子は、香代を連れて、アフトキャビンの自分たちのバースに入った。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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