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クルージングヨット教室物語82

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「おはよう!」

ラッコの皆は、横浜のマリーナに集まっていた。

シルバーウィーク初日、これから千葉、房総半島の館山に出かけるのだった。アクエリアスも一緒に行く予定だった。

なので、香織もラッコのメンバーたちと一緒だった。

「もうポンツーンに降りているよ」

隆が、ラッコのメンバーたちに伝えた。昨日のうちに、麻美子がマリーナの職員に連絡して、ラッコを海上に降ろしておいてもらったのだった。

「楽だね。ポンツーンにもう泊まっていてくれると」

いつもマリーナに着くと、自分たちで船の準備をしてから、マリーナ職員にクレーンを使って、海上に下ろしてもらっているので、初めから海上に浮かんでいてくれるとなんか出航が楽だった。

「今回は、たった2日間だけかもしれないけど、船で生活するんだから荷物とかちゃんと整理して置いておきましょう」

きれい好きの麻美子の提案で、皆は自分たちの荷物をキャビンの棚に片付けていた。

「ね、ね、香織ちゃんも、自分の荷物をここに置いても大丈夫なの?」

陽子は、自分の荷物の横においている香織に聞いた。

「別に、荷物ぐらいこっちに置いておいても良いんじゃないの」

隆が陽子に言うと、陽子は嬉しそうに頷いていた。

荷物を片付け終わると、ラッコのデッキ上で皆はお喋りをしていた。

「おはよう」

中村さんたちアクエリアスのメンバーも、遅れてやって来た。

「あれ、中村さんたちって、今日は2人だけですか?」

「そう、いや、後そこにもう1人いるから3人」

中村さんは、デッキにいる香織を指差しながら隆に返事した。

「さあ、船を取りに行くよ」

中村さんは、マリーナの沖、海上に係留しているアクエリアスを取りに行くと香織にも声をかけた。

「船を取りに、俺らも一緒に行こうかな」

隆が言ったので、

「うん、行こう行こう」

と香織が喜んでいた。

隆たちは、マリーナ職員の操船するテンダーに乗ると、海上に係留されているアクエリアスのところまで連れていってもらった。

「中村さん、係留ロープにモニターロープが付いているのだから、エンジンなんかかけなくても、モニターロープを活用すれば、そのままバースから出せますよ」

隆は、バースから船を出すのに、エンジンをかけようとしていた中村さんに伝えた。

「そうなのか、隆くん頼むよ」

中村さんに言われて、隆はラットを中村さんから代わると、陽子と香織に指示していた。

「陽子は左側のシートを持って、香織は右のシートを持っておいて、そのままシートを持ったまま、ゆっくり前へ進んでいく」

隆の指示で、両サイドの香織と陽子はシートを持って前方に進んだ。2人の前進に合わせて、船自身もエンジンもかかっていないのに前方へと進み出した。

「真ん中辺まで来たら、陽子はそのままシートを持ったまま待機。香織は前へ進んで」

陽子は停止、香織だけさらに前方へと進んでいた。前へ進んでいた船は、左で停止している陽子の側に曲がっていき、左方向へ方向転換してバースから出た。

「ここで初めてエンジンをかければ、バースのモニターロープとか巻き込むことなく、アクエリアスの船体がバースから出せるんですよ」

隆は、中村さんに説明しながら、アクエリアスのエンジンをかけた。

そのままラットを操船すると、ラッコが泊まっているポンツーンのすぐ後ろに、アクエリアスを停泊させるために、船を移動させていた。

「香代ちゃんがいたら、今ごろ隆さんにラット代わってって言っていたね」

「そうだな。香代も一緒に連れてくれば良かったな」

香代は最近、ラットの操船に夢中だった。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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