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クルージングヨット教室物語65

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「お邪魔します、ご馳走になります」

麻美子は、ドリーム号を訪れると、ドリーム号のオーナーに挨拶した。

隆が、ドリーム号のオーナーからラッコの皆も、今夜の食事はドリーム号に食べに来なさいと誘われたことを麻美子に伝えたので、ラッコのメンバー皆でドリーム号にやって来たのだった。

「隆って、ずっとドリーム号にお世話になっていたとかで・・」

「そうだね。隆君が大学生だった頃は、ずっとうちの坂田のもとでクルーしていたんだよね」

久保さんは、麻美子に聞かれて返事した。

「そうだったんですね」

麻美子は、久保さんに言った。

「私も、隆とずっと大学が同級生だったんですけど、いつもドリーム号に乗っていたなんて、ぜんぜん知らなかったです。隆、いつ乗っていたの?」

「え、大学が休みの日曜日に乗ってた」

隆は、麻美子に白状した。

「そうだったんだ。そういえば、日曜日に何かというと、どっかに出かけているなと思ったけど、あれがヨットに乗りに行っていたんだったのね」

麻美子は、納得した。

ドリーム号は、お酒の強い、いわゆる呑ん兵衛ばかりが集まっているヨットで、キャビンには日本酒の一升瓶がずらりと並んでいた。

「旨そうでしょう」

「ええ、旨そうです!」

同じくわりと呑ん兵衛の雪が、久保さんたちドリーム号のメンバーに聞かれて頷いていた。

「飲むか?」

けっこう酒豪の雪は、久保さんたちドリーム号の呑ん兵衛たちに気に入られて、キャビンに並べられている日本酒の一升瓶は、次々と開けられて雪の前にお酌されていた。

「雪ちゃん、お酒強いものね」

クルージング中、毎晩のようにアクエリアスのメンバーとも夜遅くまでキャビンで飲んでいた雪の姿を真横で見てきた麻美子は、雪に言った。

麻美子自身も、わりとお酒は強い方なので、久保さんにお酌されていた。

「次は、新潟の純米酒を開けようよ!」

久保さんが、自分のとこのクルーに言うと、新潟の純米酒ボトルが開けられて、雪や麻美子のところにもコップでまわってきた。

「あ、これって円やかで良い味」

「だろう、これは日本酒の味がわかる通にしかわからない味だよ」

久保さんは、雪に答えていた。

麻美子も、新潟の純米酒を一口頂くと、かなり度数の強いお酒だと感じていた。

「隆君も一杯だけ飲んでみるか」

久保さんは、隆のコップにも注いでやっていた。

「いただきます」

隆が、注いでもらったコップを飲もうと手に取ると、いつの間にか真横にやって来ていた麻美子に持っていたお酒の入ったコップを取られてしまっていた。

麻美子は、隆から取ったコップのお酒を自分で飲んでいた。

「このお酒はね、かなり度数が高いから、隆には無理よ」

隆が飲むのを麻美子に止められていた。

「隆君、今日は奥さんと一緒だから飲めないよな」

久保さんは、隆が麻美子にお酒を止められるのを笑顔で眺めていた。

「え、私は別に隆の奥さんではないですけど・・」

麻美子が言ったが、それなりにお酒がだいぶ入っている皆の耳には届かなかったようだった。

ドリーム号のデッキに、アクエリアスのメンバーたちもやって来て、3艇の船のメンバーが一堂に集まってデッキ上は大賑わいだった。

ある程度、宴会に参加した後で、隆と陽子、瑠璃子たちお酒を飲まない組は、先にドリーム号のデッキからはお暇して、ラッコのキャビンに戻ることになった。

「もう帰るの?」

「ああ。麻美子もあまり飲みすぎないでよ」

隆は、声をかけられた麻美子に答えた。

「それじゃ、香代ちゃんも眠そうだし、一緒に連れ帰ってあげて」

「わかった。おいで、香代ちゃん」

香代も、隆に呼ばれてラッコnキャビンに戻ることになった。

隆に、陽子、瑠璃子、香代の4人がラッコに戻って、麻美子と雪の2人が、アクエリアスのメンバーたちと共にまだドリーム号のデッキに残ることになった。

「瑠璃子も、お酒は飲んだの?」

「うん、日本酒一杯だけね」

「俺、結局、麻美子に日本酒のコップを取られてしまったから、お酒は一滴も飲んでいない」

「そうだったんだ」

瑠璃子は、隆に答えた。

「え、うそ。最初にビール一杯飲んでいたじゃん」

ずっと隆の真横で飲んでいた陽子が、隆に言った。

「ああ、あの一杯だけしか飲んでないよ」

「私、まったく飲んでいない」

香代が皆に言った。

「そうか、香代が一番偉いな」

隆は、香代の頭を撫でた。

「最近、麻美子ちゃんだけじゃなくて、隆さんもよく香代ちゃんの頭を撫で撫でしてない」

「なんか、麻美子が撫でているの見てたら、クセになってしまったよ」

隆は、陽子に答えた。

陽子と瑠璃子は、ダイニングサロンのテーブルを下ろすとダブルバースに変化させて、そこで眠りについた。隆は、香代と一緒にアフトキャビンの部屋に入ると、そこのダブルバースで眠った。

「おやすみ」

「おやすみ。後で麻美ちゃんも来るから、ここの場所は空けておかなきゃね」

香代は、バースの一番手前側のところを麻美子が寝れるようにと場所を開けておいた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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