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クルージングヨット教室物語48

Photo by ün LIU on Unsplash

「おはよう!」

朝、隆はアフトキャビンのバースで目が覚めて、横に眠っている麻美子に声をかけた。

「おはよう!」

麻美子からではなく、2人の間に眠っていた香代から返事が返ってきた。

「おはよう」

少し遅れて、一番奥側に眠っている麻美子からも返事があった。

「2日酔いですか」

隆は、昨夜、雪やアクエリアスの人たちとお酒を飲んでいた麻美子に聞いた。

「え、私はあんまりお酒は飲んでいないもの」

雪は、中村さんやアクエリアスのメンバーたちと一緒にお酒を飲んでいたみたいだったが、麻美子は話に加わっていただけで、そんなにはお酒を飲んではいなかった。

「今日は新島から式根島に移動するけど、皆とセーリングできる?」

「だから、私は飲んでいないって」

どうしても飲んでいたことにしたがっている隆にマミコが言い返した。

「そうだ、今日だけどさ、新島じゃなくて三宅島に行こうって話だったわよ」

「三宅島?」

隆は、麻美子に聞き返した。

「中村さんたち、アクエリアスの人たちが話していたの」

隆たちは、バースから起き上がると、アフトキャビンの部屋から出た。

「おはよう、朝ごはん作るね」

フォアで寝ていた雪も、ダイニングで寝ていた陽子と瑠璃子も起きてきていた。

「朝ごはんの前に、ちょっと朝の散歩に行ってこないか」

「それじゃ、皆が帰ってくるまでの間に、私が朝ごはんを作っておくね」

麻美子は、,1人でギャレーに残って、朝ごはんを作っておこうかと思っていた。

「麻美子も一緒に、お散歩に行こうよ」

隆は、皆とラッコのキャビンを出ながら、ギャレーの麻美子に声をかけた。

「朝ごはん作っておいた方が良いでしょう」

「朝ごはんは、お散歩から戻ってきてから作れば良いよ」

隆は、麻美子に言った。

「麻美子だって、新島の島にはまだ来たことないでしょう。島巡りしてこようよ」

「そうね」

隆に言われて、麻美子も皆とラッコから岸壁に降り立った。

「私、まだメイクも何もしていない」

瑠璃子が、陽子と話していた。

「まだ若いし、メイクなんてしなくても大丈夫よ。私もまだ何もしていないし」

「麻美子は、おばさんなんだしメイクしてないのヤバいんじゃないの」

「そうね。広いひさしの付いた帽子被ってるから大丈夫よ、おじさん」

麻美子は、隆に言い返していた。

漁港の入り口から出ると、昨日行った街の中心街とは別の方向に皆は歩き出していた。沿岸沿いの道を島の上の方に向かって、のんびりと歩いていた。

「なんか、水たまりがあるよ」

上り坂を登っていくと、岩場に囲まれたところに水が溜まっていた。

「天然の温泉だよ」

隆は、瑠璃子に答えた。

新島や式根島には、海中から温泉が吹き出しているところが何箇所もあった。

「本当だ!温かい!」

陽子が、水たまりに手を突っ込んでみて感想を伝えた。それを見て、他のメンバーたちも水たまりの中に手を突っ込んで、お湯の温度を確かめていた。

「ここで、ただでお風呂に入れるの?」

「海水だから、やや塩っぽいけど温泉だから、ただで入浴できるお風呂にはなるよ」

隆が、皆に答えた。

「でも、見晴らし良いから、海から皆にまる見えだね」

「さすがに、ここは水着を着て入るんでしょう」

全裸で入浴するつもりでいた瑠璃子に、雪が伝えた。

「あ、ここって水着を着て入浴する場所なんだ」

「当たり前だよ!あの辺でセーリングしているヨットから瑠璃子の全裸まる見えじゃないかよ」

隆が思わず瑠璃子の言葉に吹き出しながら、海上を指差していた。

「瑠璃ちゃんの裸なら可愛くて大サービスで皆が大喜びね」

「いやいや、不満で炎上しちゃうって」

瑠璃子は、少し照れながら麻美子に返事していた。

「ほら、モヤイ像」

天然の温泉からさらに先へと道路を登っていくと、見晴らしの良いところに出た。

「イースター島じゃないけど、新島にもモヤイ像があっちこっちにあるんだよ」

隆が新島の観光案内をしていた。

「新島にモヤイ像があるのおもしろいわね」

「でも、渋谷にあるよりも、ここにある方がぴったりで似合っているよね」

何個も並んでいるモヤイ像の姿を眺めていた。

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