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クルージングヨット教室物語45

Photo by Kanata on Unsplash

時刻は午後3時、ラッコは新島の港に到着した。

昨夜の午前12時、午前1時近くに横浜のマリーナを出港しているので、だいたい14時間ぐらい掛かって、新島港に到着したことになる。

「すごい大混雑ね」

麻美子は、港の周りを眺めながら、呟いた。

港内は、東京や湘南、静岡など至るところのマリーナからやって来たボートやヨットでいっぱいになっていた。もともと漁港に停泊している漁船の数よりも、ヨットやボートの数の方が遥かに多かった。

「泊められる場所ある?」

麻美子は、ラットを握っている隆に聞いたが、隆は狭い港内の中を停泊できる場所を探して、ぐるぐるまわっている最中なので、麻美子の質問に答えている余裕は無かった。

「あの端に停めようか」

隆は、漁港の一番隅の方に空いている場所を見つけて、陽子に伝えた。

「いつでも、アンカーの準備はできているよ」

陽子は、アンカーロープとアンカーを、瑠璃子と一緒に持ちながら、隆に返事した。

海の日のクルージングでは、波浮港の岸壁へ後ろ向きに停泊していたので、船首にあるアンカーを使えたが、今回は、大勢のボートやヨットで混雑しているし、他のヨットやボートが船首から岸壁に突っ込む形で停泊しているため、他に合わせて、ラッコも船首から岸壁に着けるしかなかった。

船首から岸壁に停泊する場合は、アンカーを船尾から落とさなければならなかった。

船首のアンカーは、常に船首に取り付けられていて、スイッチ一つでアンカーの出し入れができるが、船尾には、アンカーが常時取り付けられているわけではなく、陽子と瑠璃子に、雪も加わって船尾用のアンカーが入っているアンカーロッカーから手でアンカーとアンカーロープを取り出して、2人が手動で船尾に取り付けたのだった。

「アンカー、レッコー!」

隆は、ラッコを操船して、空いている岸壁に近づきつつ、頃合いの良い場所で、アンカーを持っている陽子と瑠璃子に、アンカーを落とす指示を出した。

アンカー、レッコーとは、アンカーを落とせという意味だ。

ラッコは、岸壁に向かって前進していたが、陽子と瑠璃子が落としたアンカーが効いて、前進するのが止まって、岸壁の手前でしっかり停泊した。

ラッコが岸壁の手前で停泊したのに合わせて、船首で舫いロープを持って構えていた香代が、舫いロープを持ったまま岸壁に飛び移って、岸壁に付いていたクリートに舫いを結んだ。

「すごいね!女の子ばかりで、かっこ良く船を停泊させたね」

隣に停泊していたヨットのおじさんたちから香代に歓声が上がっていた。

ラッコが岸壁に停泊し終わった後、ラッコのすぐ後ろにアクエリアスがアンカーを打って停泊した。港内は、お盆休みを新島で過ごそうとやって来たボートやヨットの数が多すぎて、全艇が全て岸壁に停泊できる場所がないため、ラッコのように直接、岸壁に停泊したヨットの後ろに、さらに後からやって来たヨットが二重に停泊しているのだった。

「お願いします」

アクエリアスのクルーが船首からラッコの船尾にいた陽子たちにもやいロープを投げて渡した。

「はい!」

陽子や瑠璃子が、アクエリアスのクルーから舫いロープを受け取り、ラッコの船尾に付いている左右のクリートにロープを結んだ。

「どちらから来られたのですか?」

「横浜です」

「女性ばかりで乗られているのですね」

「一応、男性も1人いますけどね」

皆の中で、年長の麻美子や雪は、周りに停泊しているヨットの男性たちに声をかけられていた。

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