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クルージングヨット教室物語44

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「おはよう、良い天気だな」

隆が6時に起きてきた時には、もう皆起きていた。

「どこら辺まで来たか」

「大島の中間ぐらい、筆島のところ」

瑠璃子が隆に答えた。

「また、香代がヘルムを取っているんだ」

隆が、コクピットでラットを握っている香代の姿に気づいた。

「香代ちゃんが5時過ぎぐらいに目が覚めちゃったとかで起きてきて、ラットを変わりたいって言うから、それからずっと代わってもらってたの」

陽子が隆に答えた。

「瑠璃子、今回のクルージングで、まだ舵をぜんぜん握っていなくないか」

「うん。まだ後でいいよ」

瑠璃子は、答えた。

「雪は、まだぜんぜん舵を取っていないだろう」

「私は、別に舵は取らなくても良いのよ」

雪は答えた。

「おばさんたちは、舵は若い子たちにお任せで良いのよ。ねぇ」

麻美子が雪に同調した。

「え、ダメだよ。麻美子は、後でちゃんと舵を取れよ」

隆は、麻美子に命じた。

「ちゃんと舵は取るようにしないと、いつまでもヨットが上達しないぞ」

「とりあえず、朝ごはんを作ろうか」

麻美子は、陽子を連れて、朝ごはんを作りにギャレーへ逃げてしまっていた。

「そういえば、アクエリアスは?」

「後ろにずっとくっついて来ているよ」

瑠璃子が、後ろの方を走っているアクエリアスの姿を指差した。

「前回は、ここでエンジンが止まったとか連絡が入って、Uターンさせられたんだったよな」

「今回は、目視だけじゃなく、航海計器にもアクエリアスの場所を追尾してあるの」

瑠璃子は、航海計器のモニターを隆に見せた。モニター上には、ラッコが進んで来た航跡だけじゃなく、アクエリアスの進んで来た航跡まで映っていた。

「さすが、瑠璃子。名航海士だな」

隆は、瑠璃子のことを褒めた。

ラッコを造船所で造ってもらっている時に取り付けてもらった最新のGPS航海計器を、瑠璃子は見事に使いこなしてしまっていた。今は、おそらく隆よりも操作方法が得意だろう。

風も無く、穏やかな海上で、セイルはメインセイルとミズンセイルのみを上げて、ずっとエンジンとハイブリッドの機帆走で走っているラッコだった。同じく、セイルはメインセイルのみでエンジンとハイブリッドの機帆走で走っているアクエリアス。

ここまで順調に走って来て、麻美子が作った朝ごはんを食べ終わった頃には、大島を越えて、さらに南へ向けて、ヨットを走らせていた。

前回の海の日のクルージングでは、大島の波浮港までしか来ていないので、ここから先は、隆以外のラッコのクルーにとっては、初めての海域だった。

「新島は、あの先の方にあるから」

隆は、ようやく渋々とラットを握っている麻美子に針路を説明した。

「あの真横にある島は何なの?」

「利島」

隆は、陽子に聞かれて答えた。

「無人島?」

「無人島じゃないよ、ちゃんと人が住んでいる島だよ」

隆は、香代の質問に答えていた。

「せっかくだから、あの島に上陸してみたいな」

香代が言った。

「利島は、ヨットが停められる港が無いからね。利島に上陸しようと思ったら、伊豆の下田港にでも停泊させておいて、そこから観光船にでも乗って渡るしかないかな」

「下田って静岡県のこと?」

「うん。下田も、横浜からヨットで行くのは楽しいぞ。途中に、熱海とか熱海の沖には初島って島もあるし、稲取とかいろいろな漁港に立ち寄りながら行ける」

「そっちのクルージングも楽しそうだね」

「ああ、来年とかのクルージングは、静岡の東伊豆とか巡ってみようか」

「それは良いかも!行ってみたい!」

陽子が隆に賛成した。

「それで、下田に着いたら、観光船で利島に上陸してみようか」

香代が嬉しそうに頷いた。

「その次は、伊豆でも東伊豆ではなく西伊豆の方に行ってみるのも良いよ」

「うわ、大変。この先、何年もあっちこっち行かなければならない所がいっぱいね」

麻美子は、皆に言った。

「とりあえず、今は新島を目指そう」

隆が、現実の航海に皆を戻した。

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