クルージングヨット教室物語32
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「お腹がすいたでしょう?」
麻美子は、リス村を出て車に乗ると、車の中の皆に聞いた。
「うん、お腹が空いてきた」
「ここから割とすぐ近いところに懐石料理屋さんがあるんだ。そこを予約してあるの」
麻美子は、皆に言った。
「別に、そんな懐石でなくても定食屋でも大丈夫だったけど」
雪は、麻美子に答えた。
「麻美子が、そこの懐石を食べてみたかったんだよな」
「そう、なんかうちの両親が新婚旅行で大島に来た時に食べた懐石屋さんらしいんだ」
麻美子は、皆に説明した。
「麻美子が食べたかった料理屋だから、今日の昼は麻美子のおごりだよな」
「もちろん、うちの母からお金もらって来ているし」
麻美子は、隆に自分のバッグの中の財布を見せながら答えた。
「そういえば、隆さんってバッグとか持っていないの?」
助手席と運転席の真ん中に座っている香代が、麻美子の差し出したバッグの中を覗き込みながら聞いた。
「隆のバッグっていうか、お財布はここにあるじゃない」
麻美子は、自分のバッグの中にあるもう一つの財布を香代に見せた。
「これを隆に渡しておくと、落としたり無駄遣いしたりするから、いつも私が持っているの」
麻美子は、隆のことを指差しながら、香代に説明した。
「さあ、懐石屋さんに行こうか」
隆は、エンジンをかけて車を出した。