クルージングヨット教室物語5
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ヨットのクルーとは、そのヨットのオーナーと一緒に乗っている仲間、船員のことだ。
「クルーってそういう意味だったの」
麻美子は、フェリックスの人たちが帰った後に、隆から意味を聞いて驚いた。
「私、別にクルーではないんだけど」
「もうクルーみたいなものじゃん。俺と一緒にうちのヨットに乗っているんだから」
それから、寒い冬の間ずっと毎週のように隆は、自分のヨットに乗っていた。
「あんたも一緒に乗ってあげなさいよ」
麻美子は、母から隆が1人で海にヨットを出していて何かあったらいけないからと言われた。そんなわけで、この冬は寒い中、毎週のように横浜のマリーナに通うこととなった麻美子だった。
「お、麻美ちゃん」
冬の間ずっと毎週のように、横浜のマリーナに通っていると、フェリックスの市毛さん以外にも、横浜のマリーナにヨットを停泊しているオーナーさんたちともすっかり顔見知りになってしまっていた。
麻美子が、街中で皆がよく着ている一般的なコートを着て、冬の海のヨットに乗っていると、それでは寒いだろうと隆が、自分のお金でヨット専門の風を通さない暖かいオイルスキンを購入してくれた。
「これって7万円もするよ!」
中目黒のマリンショップへ買いに行った時、隆が購入してくれた暖かいオイルスキンに付いていた値札を確認して、麻美子は驚いた。
「こんなの高くないの?」
「いいよいいよ、麻美子が毎週寒そうに乗っていたから」
「隆は、社長さんでお金持ちだものね」
麻美子は、隆の頭を小突きながら、笑顔で笑った。
その7万円もする暖かいオイルスキンを着て、ヨットに乗っていると、寒い冬の海の上でも暖かく過ごせて快適だった。横浜のマリーナの中を、ヨット専門の暖かいオイルスキンを着て歩き回っていると、格好だけは。一人前のヨットウーマンに見えている麻美子だった。
そして、半年があっという間に過ぎて、季節は春を迎えて、せっかく初めて隆に買ってもらったヨット用のオイルスキンも着ていると暑すぎる季節になってきた。
「そろそろ、うちのヨットにも麻美子以外のクルーも増えてくるよ」
隆は、麻美子に話した。
「そしたら、麻美子も先輩クルーだね」
「先輩クルーって、私、ヨットのことは全然わからないけど」
麻美子は、隆に答えた。