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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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「社員からパンチを受けたいし、自分もパンチを与えたい」VICE Media Japan 代表 佐藤ビンゴが語る、チームとメディアの今とこれから

バンドマンから社長へ転身した佐藤ビンゴの戸惑いと挑戦に迫るインタビュー後編

2017/05/11

1994年にカナダで創刊され、現在では世界36か国に拠点を持ち、月間で5千万人が訪れるメディア「 VICE 」。その日本支社である「 VICE Media Japan 」の代表を務める佐藤ビンゴさんにインタビューしています。(2016年8月)

前編では、「 54-71 」のバンドマンとして活動していた佐藤さんが、スパイク・ジョーンズ氏との出会いをきっかけに VICE Japan を立ち上げるまでを伺いました。

前編▶︎バンドマン、植木職人、そして社長 − VICE Media Japan 代表 佐藤ビンゴのたどる数奇なキャリア

後編では、その後 VICE Japan がどのように成長してきたか、どのようなメディアを目指しているのかをじっくりと伺っていきます。

わずか7人で始動した VICE Japan

「好きにやっていいよ」と裁量を任され始動した VICE Japan 。創業当初、7人のメンバーのほとんどが映像プロデューサーでした。

−コンテンツを配信するにあたって、方向性や軸はどのように決めたのですか?

「そういうの全然決めてないんですよね…。僕はあまり事前に考えたりせずにいきなり風呂敷をばーんってやっちゃってから、やっぱりこうかな、いやこうかな、というふうに考えていくタイプなんです。で、形になる前に次に行っちゃうんですけど(笑)」

− VICEというと、危ないところに取材に行くというイメージがあるんですが、それについて抵抗はありませんでしたか?

「危ないところに行っていることは確かに多いんですけど、それだけじゃなくてクリエイターズプロジェクトとかカルチャーも同等に取り扱っていて、それが VICE の面白いところだと思っているので全体から見たら抵抗はないですね。

VICE の本部にサリューシュというユニークな人がいるんですよ。アラブ系なのかな…独特な空気感をまとった人なんですが、パキスタンやコロンビアにも取材に行っているような屈強なタイプです。それでいてカルチャー好きで、紙世代の話とかもしてくれるんですよ。そういう塩梅が VICE っぽくていいなと」

− VICE Japan の認知も広がっていると思いますが、きっかけなどはありますか?

「海外が盛りあがることで全体の知名度が上がって、その余波がこっちにもきたというのはありますね。目端の効く人が VICE Japan の存在に気づいてくれて、『Japanがあるならやってみよう』って声をかけてくれたりとか。そうやってくうちにJapanのPVも緩やかにあがっていって仕事も取れるようになってきました。

『 VICE =メディア』と思われがちなんですけど、代理店的な部分も積極的にやっているんですよ。海外でも経営的につらい時期はあったので、仕事を引っ張ってきてなんとかまわすという文化が染み付いているというのもあって、日本でも立ち上げ当初から受託案件をかなり多くやっていますね」

今はメンバーも30名ほどに増えた VICE Japan 。ライター・編集をしている人が一番多く、営業部隊も佐藤さん含め5名ほどいるそうです。

−Vice Japan の採用ページを拝見するとユニークな文言をいろいろと見かけますよね。「TOEICのスコアは『有能』の条件ではありません」とか「思考過程、意思伝達において日本語と英語を混用しない方(長嶋茂雄、ルー大柴級であれば可)」とか…。

「VICE の性質上、帰国子女の方とかの応募も多いのですが、英語力は条件ではなくて。あくまで日本で配信するコンテンツなので、日本語を組み立てる能力の方を重視しています」

−日本語能力以外にはどういった点を重視しますか?

「うーん…………。わかんない……わかんない……というか僕、人を見る目がないと思っているので…(笑)」

「でも、僕は知性を求めます。それと同時にぐいぐい行く姿勢も。文武両道みたいなイメージで、バランス感を持った人がほしいですね。あと、VICE Japan の目指すところとして、『オープンでありつつ敷居は高い』というのはあります。誰でもチームに入れそうという印象は持たれたくないですね」

−バンドのフロントマンから、突如社長というポジションに就任したわけですが、それに対する戸惑いはあるんでしょうか?

「会社勤めをしたこともないのにいきなり社長ですからね…。経営もなんとかやってるという感じで、簿記の知識が必要とか言われると『あぶね〜』って思ったり…。売り上げを作っていくというところもまだ上手とは言えないです。

そもそも VICE Japan が立ち上がるときも、僕が川口よりは人当たりが柔らかいから、という感じで社長になったんですよ…(笑)。ただ、VICE Japanの代表としてフロントに立って話すのはもういいかなと思っていて…。僕が口を開かなくても、VICEというメディア自体がもうひとつの答えなので」

−逆に社内でのコミュニケーションはどのように取っているんですか?

「うちは全社会議もないし、あんまりコミュニケーションは取れていないかもしれないです…。事業の一環で AbemaTV もやっているんですけど、それを知らない社員もいたくらいで、『あれ、全然共有できてないのか…』と思ったり。あ、でもこの間アメリカの創設者が YouTube のライブストリーミングでいろいろしゃべる機会があったんですけど、それはみんなで見ましたね。アメリカと日本ではスケールも置かれた状況も全然違うので、結構ぽかーんって感じでした。僕自身、社員を育てたいとかいう気持ちも特になくて…。ただ、社員からパンチを受けたいし自分もパンチを与えたい。そういうのをロジカルに実現したいなっていうのは個人的に思っていることですね」

VICE Japanの未来

注目度とともにPVも右肩上がりの VICE Japan 。佐藤さんの目には、VICE Japan の未来はどのように映っているのでしょうか。

「3年先くらいだったら、社員が100人くらいに増えていないといけないなあと思っています。10年先となると考えられないですね…。だってプラットフォームやテクノロジーは刻一刻と変わっていくものだし、臨機応変に対応していくためには描きすぎないようにした方がいいと思うんです。というか、描いても意味ないかなと。もし今、『将来はこんなメディアにしたい』と明確な構想を持っても、たとえば攻殻機動隊やマトリックスのように、頭で思うことを直接伝えることができる未来になってたらそもそもメディアとして存在するかわからないし」

また、佐藤さんは現在の日本のWEBメディアのあり方を例にあげて VICE Japan の目指す像を教えてくれました。

「今の日本のWEBメディアって、簡単に読めるものをぱかぱかリリースして消費されていくじゃないですか。クライアントもそういうのに慣れていて、こちらに求めてくる。でも、僕はそれはやりたくないんです。『読んで、タメになったなあ』と心から思えるような良質なコンテンツを出していきたい。ただ、アメリカではブランドも確立されて VICE.com だけでやっていけるかもしれないけど、日本でそれは厳しいかなという考えもあります。なので、プラットフォームはたくさん用意して、いろんなところにフィールドを持って、それぞれ別のタイプのお客さんを集めて…というふうに、マルチにやっていくのがいいかなと

−佐藤さんご自身が参考にしていたり、注目しているメディアはあるんですか?

「いやあ、ないですね…。他のメディアあんまり見ないんですよ。どこの真似をしているわけでもないし、見ても仕方なくないですか? なので僕がネットを使うときは、ラーメン屋さんを調べるときとかですよ(笑)」

「緊張するからフロントマンはいや」

バンド時代、エキセントリックなパフォーマンスで注目を浴びた佐藤さんですが、実際にお会いしてお話してみると、その価値観がかなり控えめであることに驚かされます。

「僕、人に迷惑をかけたくないんです。何かを始めるときは、『人に迷惑をかけてまでやることなのか』ということをよく自問自答します。でも誰にも迷惑をかけずにやっていくなんてことは不可能なんですよね。今も大勢の人を巻き込んでやってますけど、これが正解かなんてわからないし…。

バンド時代も、自分がイケてないと周りに迷惑がかかると思ってたんですよ。バックバンドにパワーがあるのにフロントマンがウスバカゲロウみたいだったらみんな嫌じゃないですか(笑)。緊張するから本当はフロントマンは嫌なんですけどね…」

−あまり気の進まない役割をバンド時代から今まで続けていられる理由というのは…?

「結局のところ、なんにも考えてないだけです(笑)。自分でもどうしてこんなに楽観的なのかわからないんですが…感覚が麻痺しているのか、0型だからですかね?」

−川口さんや小林さんもそうですが、誰かと長いスパンでお付き合いされていることが多いように見受けられます。人間関係を円滑にするコツなどありますか?

「そうですねえ、バンドメンバーはもう恋人以上家族未満という感じなので…。まあでも妥協の仕方じゃないですか。妥協は妥協でも、『最高に良いポイントで妥協する』ということが大事。

社長という立場になってからまわりの環境もいろいろと変わりましたけど、今でもピュアな考えを持っている人が好きです。ぐいぐいお金の話をしてくる人は苦手ですね。お互いに何か還元していけるような関係性を築きたいです」

−最後に、佐藤さんの仕事観について教えてください。バンドからレーベル、メディアと“仕事”の性質を変えてきた佐藤さんですが、佐藤さんにとっての「仕事」とはなんですか?

「正直、普通の就職をしたことがないから『仕事とはなにか』と問われるとよくわからないんですよね。でも、たとえばですけどパンの包装の空気漏れをチェックするとかそういうのを仕事だと仮定すると、僕のやっていることは仕事という感覚はないです。

アウトプットするものに対して、なにかがそこにないと意味がないと思っているんです。自分だったら、音楽でも情報でも、何かを受け取るときには満足したいと思うので。VICE Japan のコンテンツを作るときも、誰かの役に立ったり、何かを考えさせるきっかけになったりしたらいいなと思っています。最悪笑えればいいんです。これを読んだ人が喜んでくれたらいいなって」

物腰が柔らかく、質問にもふわりふわりと答えるので、一見捉えどころのないような印象を受ける佐藤さん。ですが、いざお話を伺うと、新しいことや不確定要素への挑戦を恐れず、大きな決断をしてきたという姿勢に、佐藤さんの意思の強さをうかがい知ることができました。

佐藤さんが繰り返し口にする「パンチを与える」というテーマ。臨機応変に活動のフィールドが変わっても、胸に抱くその命題がある限り、佐藤さんの挑戦は続くのだと思いました。

Information

VICE Japanが「VICE PLUS」をリリース!

作家性をコアにした、VICEの新たな雑誌的VODサービス「VICE PLUS」。日本では見れないVICEのプレミアムな動画を始め、国内外のもっと光を浴びるべき映像作品を厳選して配信。

https://plus.vice.com/

Interviewee Profiles

佐藤 ビンゴ
「VICE Media Japan」代表取締役。1995年に「54-71」を同級生らと結成。バンド活動を続けると同時に、2007年に音楽レーベル&プロモーター事業を行う「contrarede」を設立。音楽だけでなく雑誌「Libertin DUNE」の刊行やバンドの海外ツアーを通じて「Vice US」との交流を深め、2012年にはグローバルメディアViceの日本支社「Vice Media Japan」を設立。同社代表取締役に就任。

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