早稲田大学大学院 / 経営管理研究科(MBA)
【研究論文】日本におけるEdTech事業の収益モデル分析と構築
▼研究概要 教育にITを融合させることで学習者に新しい価値を提供するEdTechはその可能性に期待を持たれているものの、持続的収益性に疑問を持たれている。本稿ではEdTechビジネス収益化の源泉を事例研究 で検討し、日本におけるEdTech事業の持続的収益モデル仮説構築を目的とする。 今日のIT技術の進化により、どこにいても低価格で良質な教育サービスを受講できるようになり、 教育機会の差の縮小が可能となりつつある。更に学習者にとって学習効率の向上や世界中の学習者との 交流、学校以外の学びの選択肢増加など、学ぶ意欲があるすべての人にとっての学習機会・選択肢が増 えた。しかしながらこうしたサービスを展開するEdTech企業は、必ずしも収益化が実現できず継続性 に疑問を持たれるケースがあり、実際に事業停止に至る例もみられている。 本稿では上記の問題意識をベースに、以下の3つのリサーチ・クエスチョンについて分析を試みた。 ▼研究テーマ EdTechビジネスの収益モデル分析と構築 (EdTechはビジネスとして収益化できるのかどうか。もしできないのであれば、どうすれば収益化できるのか。) ▼研究の目的 EdTech収益化の源泉を事例研究で検討し、日本におけるEdTech事業の持続的収益モデルを仮説構築する。 ▼研究に至る課題意識 ・日本のEdTech事業はミッションドリブンで 収益化が二の次になっていることが多いのではないか。 ・EdTechという言葉だけがバズワード化し、収益モデルに言及する先行研究がない ▼研究手法 文献研究とEdTech事業を展開する企業・組織・識者へのインタビュー調査を行い、収益モ デルを考察。 ▼リサーチ・クエスチョン(問いの設定)と結論 ・RQ1. EdTech事業はどのようなピジネスモデルがあり得るのか。 →下記3種があり得る。 1.「EdTech事業のみで収益化を図るモデル」 2.「他事業との複合モデル」 3.「他事業の付帯サービスとしてEdTechを行うモデル」 ・RQ2. EdTech事業で収益化は可能か。 可能あれば、どのように収益化が図れるか。 →「他事業との複合モデル」であれば収益化は可能な場合がある。かつ既存事業で教育事業を展開している企業がEdTechを展開するとシナジーが生まれやすい。 ・RQ3. EdTechを活用することで収益モデルは創ることが可能か(EdTechを通して得られた副次的なもの、例えばデータなどを活用することで収益モデルは創る ことができるか)。 →EdTechを活用することによる収益モデル創出の事実は現状見出せず収益化途中。 ▼収益モデル実現に向けた仮説提言 仮説提言1. 既存事業が 教育事業 の場合 既に完成された収益モデルを確立している教育企業が多角化のひとつとして、学習者に向けたEdTech事業 を展開すれば、既存事業の資源を活用でき、中長期的に投資回収が見込める収益モデルが成立する可能 性が高い。 仮説提言2. 既存事業が 教育事業以外 の場合 完成された収益モデルを確立している企業がB2CのEdTech事業を展開すれば、EdTech事業そのもので十分な収益化は見込めなくても、EdTechが事業全体の価値を高めるような効果を発揮し、間接的に収益化に繋がる可能性がある。 本稿は事例をベースに仮説を構築しているが、どの事例も事業構築途上の事例であり今後継続的な観 察などを経てEdTechビジネスの継続的な収益化に関する検証が必要である。