初めましての人は、初めまして、株式会社イエソドの代表の竹内と申します。もしかしたら、株式会社ユーザベースの竹内と名乗った方が名前が通っているかもしれません(現職)。
株式会社イエソドでは、企業の人・組織・情報を正しく整理し、業務改善、内部統制、情報セキュリティへの対応を一気通貫に整えることを可能とする、挑戦しつづける企業を支える管理部門のためのサービスを開発しています。
あまり文章を書くのは得意ではないのですが、なぜイエソド(基礎・基盤の意味)という会社を作ったのか、そしてなぜ作る必要があったのかという話を書いてみたいと思います。
企業は象だ
「群盲象を評す」というインドの寓話があります。暗闇の中の男達が、象を別々の一部分だけ触り、象とは何かを表現しようとします。ある人は、これは綱だと言い、ある人は柱だと言い、別の人は壁だと言い。しかし、それは象という動物のあくまで一側面であり、象全体を表現しているわけではありません。プログラミングの世界だと、数年前に「モナドは象だ」という表現が一時期流行ったりしました。
企業にも色々な側面があります。わかりやすい例として、営業、エンジニア、カスタマーサポートは全く違う側面を支えています。プロダクトという大きな物体を様々な方向から見て支えることで、プロダクトを成立させています。
そんな中、同じように見えて、実は全然違う側面を触っている管理部門という部門があります。財務、経理、総務、労務、人事、法務、情シス、内部監査。ひとくくりに管理部門とされますが、それぞれ触っている面が全く違います。そして、それぞれの業務で必要となる情報は全く違います。同じ人・組織というものを扱っているのに。
直近のスタートアップにおける課題
ここ数年、特に昨年は「SaaS元年」と言われるぐらい、便利で多種多様なクラウド型サービスが提供され始めています。それこそ、"G Suite"、"Slack"をはじめとして汎用型から業界特化型まで、そして、管理部門向けにも、会計、労務、人事、法務、システム管理向けのサービスがいくつも出てきています。
それらは、本当に便利で、それぞれの部署の人たちの業務を効率化し、働き方を変えていっています。素晴らしいことだと思いますし、ここ最近のスタートアップが成長する速度も実際に加速していると思っています。
しかし、実は落とし穴となる部分があります。先ほど書いたとおり企業は象です。それぞれの部門の人たちの仕事を一側面から切り出して効率化しても、別の部署・側面と連携しようとする時に非効率が残ります。
この非効率は、数十人程度の組織であれば、問題無く人の手で連携できるのですが、数百人の組織になってくると苦しくなり、千人を超えるとまず人の手では無理でしょう。ミスも増え、システム化で業務のスピードが速くなってる今だからこそ、ミス発生時に逆に戻すのが大変になり、それにより業務がスタックするという状況が起こります。
また、監査の時にも大変で、どことどこがどう繋がっているのか、システムの中でブラックボックスになっていて見えないという問題も出てきます。
イエソドも象だ
イエソドでは、上記の問題を解決するために、各サービスを横で繋げるための仕組みを作っています。
こう表現してしまうと、「なんだ、右から左にデータを流すだけか」、というイメージを持たれてしまうかもしれません。そんな簡単なものではありません。
上に書いているとおり、企業は象です。そして現状の各サービスはそれぞれの一側面を捉えているだけです。側面から側面へ情報をそのまま移すと、全く違った意味になる情報が沢山あります。それを整理し綺麗に流せるようにするための仕組みをイエソドが提供していきます。
正直、イエソドの社内でも、このサービスをユーザにどう説明しようか非常に困っています。このシステムが関連してくる部門の大きな括りとして、管理部門、情報システム部門、監査部門があり、同じサービスなのにそれぞれの部門に刺さる部分が全く違うというちょっと不思議なサービスです。
なぜ起業したのか
「この領域でシステムを「正しく」作れるのが、世界を探しても自分しかいないと思えたから」
この一言に尽きます。傲慢かもしれませんが、本気で思っています。そして、それを一企業の社内システムで終わらせるのでなく、ちゃんと世の中に向けて販売し、管理部門そしてその先にいる企業で働く人たちの働き方を変えていきたいと思い法人を作りました。起業と言うより法人(ハコ)を作ったという感覚の方が正しいです。
そもそも僕自身は怠惰な人間ですし、他の人が作れるなら作ってもらえばいいやと考える人間です。また、UB Venturesとしてベンチャーキャピタリストを兼務してスタートアップを支援する立場ではありますが、正直、起業することに対しては否定的な人間です。過去の経験上、よっぽど明確な目的、かつ、ビジネスとして成り立つ見込みがない限り起業するべきではないとも思っています。
イエソドが狙っている領域は、
- 数百人規模の上場前後のスタートアップの問題を正しく把握できる立場にあるCIO/CTO/CFO/監査役の経験者
- 管理部門全般の業務を実際自分でなんとなくやったことがある
- データ設計の知見が深く、それを自分でコードに落とせる
この三つを満たさないと正しく作れないと思っています。
雰囲気でまわる仕組みだったら、作れる人はいると思います。しかし、企業をしっかり象として捉え、成長し続ける企業の問題を根本から解決するためには、複雑なデータ構造が必要になってきます。
一般的なリレーショナルデータベースを普通の使い方をしても、表としての二次元の一側面しか表現できないため、ある程度の規模以上の企業にはまず対応できなくなります。
企業を象として捉えるためには、高次元のデータを扱うためのフレームワークを一から設計する必要があります。そして、その高次元のデータベースを正しく企業管理部門にはめ込む必要があります。
今まで、株式会社ユーザベースにて、SPEEDA、NewsPicks、FORCASを回すために、トリッキーなデータ設計、および、そのシステム実装をいくつもしてきた自分としては、それを達成するための知識と技術があると思っていますし、作りきる自信もあります。
また、このデータ設計および実装はプロダクトの根幹部分となり、現実的コストとして後から置き換えが不可能なもので、既に普通のフレームワークで普通にリレーショナルデータベースを使って、管理部門の一部署向けサービスを展開して先を行ってしまっているスタートアップが手を出そうと思っても容易には手を出せない領域だとも思っています。
さらにその先について
少し長くなってしまいましたが、以上のようなことを妄想しつつ、秋葉原のオフィスに引き籠もって、このシステムの設計実装難易度激ムズだーとか考えながら、ガリガリコードを書いています。もうちょいで表に出せます。
イエソドのプロダクト基盤がしっかり構築されると、可能になることが沢山あります。色々夢が膨らんでいるので、もし少しでも面白そうだとか、先が見えた!とか、技術的に何が違うのかよくわからないとか、思えたら、ぜひ話を聞きに来てください。