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【第3話】「親の七光り」と言われたこともあった。私が伝えたい事業承継で大切な2つのこと

この記事は、連載「起業よりもむずかしいよ、事業承継」の最終話になります。まだの方は、ぜひ第1話・第2話からご覧ください。

第3話の今回は「事業承継で伝えたいこと」をテーマに、事業継承で感じた大切な2つのことに焦点を当て、お伝えしていきます。第3部作の詳細は、以下となっています。

第1話:事業承継の背景
第2話:しんどかった柳井工業での修行
第3話:事業承継で伝えたいこと

はじめは「5年は何がなんでも辛抱する」と腹をくくり、事業継承の世界へ飛び込みました。

ただありがたいことに、入社3年目の頃、社長の父から「一人前の職人になれているよ。今度は経営に携わらないか?」と言われ、晴れて経営者に。

「ここで少しは肩の荷が降りるかな…」と思っていましたが、そう簡単にはいきません。経営者には「経営者ならではの悩み」があったのです。

お客様や同僚に「二代目」や「ぬるま湯」と言われる日々

経営者になり直面した問題は、お客様から「社長の息子」「二代目」「ぬるま湯」というイメージが先行していたことです。

「どうせ親の七光り。実力なんて備わっていないだろう」。悲しいことに、協力会社やクライアントとしてお世話になっていた会社の方から、言われることもありました。

とても悔しかったです。負けず嫌いの私は、事業継承で1つ決意しました。

「社長の伝統を引き継ぎながら”私と働きたい”と思ってくれる、客先・協力会社・社員と一緒に働くこと」。

このモットーを軸に、仕事を受注していきました。

全部「自分流」に進めるのはリスクが高い。そこで行なった「役割分担」

とは言え、「自分と合わない人とは働かない」というやり方はリスクがありました。社長が今まで築いた協力会社との関係性を切る可能性があるからです。

そこで考えたのは、"社長と自分の進め方を統一しないこと"です。

・社長:元々お世話になっているお客様と一緒に仕事をする(既存メイン)
・自分:"私と一緒に仕事をしたい"方を探して仕事をする(新規メイン)

今まで社長の人柄がよくて、一緒に仕事をしていた人がいました。

経営者が私に変わることで、もしその方々が離れる可能性があるのなら、「社長と引き続き、一緒に仕事をしてもいい」と方針で定めたのです。

なんと売上が2倍に!方針を統一したいことで得られたメリット

あえて経営方針を固めず、それぞれのやり方で進めることでたくさんのメリットを得られました。かんたんに箇条書きでお伝えしますね。

・売上が2倍になった
・新規の協力会社/お客様が増えた
・社長も自分もそれぞれのやり方で進められる

例えば先ほどの方針で進めて行けば、私は「自分と一緒に働きたい協力会社」を探せますし、かつ、新規の顧客層がぐっと増えます。

この手法にすることで、売上は2倍近く上がりました。

そして、社長も私もお客様も、それぞれが一緒に働きたい人と仕事ができるので、win-win-winです。

起業よりもむずかしい、事業継承。大切な「後継者の努力」と「初代の受け入れ」

事業継承は、本当にむずかしいです。今まで築き上げた社長の考え方や方針がある中、そこに「自分の方針」を融合させていく必要があります。

事業継承をしてきた私が伝えたいことは、主に2つあります。初代と後継者の各々にお伝えしていきますね。

●1. 後継者の努力

根性論に聞こえるかもしれませんが、まずは「後継者の努力」が大切です。

完成されている会社に突然やってきて、偉そうに机に座り、指示しか出さない社長には誰もついてきません。それこそ「親の七光り」と後ろ指を指されます。

まずは5年ほど腹をくくり、1番下っ端として仕事をしていく。1つ1つ地道に積み上げることで、私はお客様や同僚との信頼関係を、築けるようになりました。

●2. 初代の受け入れ

そして2つ目に大切なのは、「初代の受け入れ」です。今まで築き上げてきた中、「自分の方針が崩れる…」と不安になるのはわかります。

ただそこで、頑なに自分の方針を突きつけるのではなく、「後継者の考え方や方針」を受け入れながら、よりいいものを創ること「共存」が大切です。

私も最初は社長と合わず、ぶつかり合うことがありました。ただ社長から「ダブル経営」を受け入れてくれてから、結果がでてきました。

「後継者の努力」と「初代の受け入れ」。うまくいく事業承継は、ここからはじまります。

・・・

「起業よりもむずかしい、事業承継」をテーマに、3部作でお伝えしていきました。

「親父の会社を継ぐ」と腹をくくり、野村證券を辞めて早5年。これまで、酸いも甘いも噛み分けてきました。

今回の記事をきっかけに、私の価値観や柳井工業の方針などを感じていただけたらうれしいです。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。  

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