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未来の車は「車・道・人」を一つに繋げる。 コネクテッドの事業化に挑む男

スマートフォンの普及や通信の進化、無料アプリケーションの利便性向上により、今「車」に問われる真の価値が変化しようとしている。いわば、モビリティ領域の変革期だ。

過去には、排ガス問題の解決や世界初のインターナビの開発など、業界を牽引してきた本田技研工業株式会社。「今の時代、車をつくって売るだけでは終わらない」と話すコネクテッド事業部の徳永和典に、これからの車の価値を聞いてきた。

インターネットに繋がる車は、人々の可能性を拡げる

誰もが当たり前のようにインターネットを利用する現代。最近では、音楽や動画のストリーミングサービス、スマートスピーカーなど、その人にあわせて生活を豊かにするサービスが身近になっている。

人々の生活が急速に変化しているなか、携帯キャリアの通信開発を経て、2005年にHondaに中途入社した徳永は、アメリカ駐在を経て、現在は「インターネットに繋がる車」を事業化するコネクテッド事業部で、事業性と商品性をどちらも考える「戦略企画」を担当している。

「ストリーミングサービスが普及した今、好きな音楽がいつでも聴ける状態が当たり前。リアルタイムの渋滞情報や最適な順路、行き先の店舗情報だって携帯でわかる。そういった”人々の生活にとって当たり前”になったことを、車の中でもできるようにしていきます。

近い将来クルマは、たとえば「○○に行きたい」と言えば最短ルートで自動で連れて行ってくれたり、途中でコーヒーが飲みたくなったらお店に立ち寄って支払いまで自動で済ませてくれる。

車を運転できない、したくない人だって車を使えるようになります。わかりにくいボタンや表示などもどんどんシンプルになっていくし、車を運転することへのストレスや不安を極小化できる。いわば、自分たちが作った複雑怪奇な車をより本質的に使える車にする取り組みです。移動に対するハードルを下げ、『人々の行動の自由』を実現していくんです。」

これらが実現されるのは少し先の未来だが、車と道と人がオンラインで繋がることで、初めて車の安全が担保され、人々の可能性が拡がる。

シリコンバレーでの最先端技術の研究、コネクテッド領域の専門組織提案やサービスづくりなどを経て日本に戻ってきた、エキスパートの徳永。「このサービスの実現には、コネクテッドの技術が必要不可欠なのだ」と熱く語ってくれた。

スピード重視のサービス開発。事業化の推進に奮闘する男の「使命」

また、徳永が担う「戦略企画」はサービス開発だけでなく「事業性」も考える。2018年に組織化されたばかりのコネクテッド事業部は、技術的な視点からビジネスを立ち上げようと奮闘しているのだ。

車をつくって売るだけではなく、ユーザーにサービスを提供し継続して使ってもらうこと。そのために徳永は「CASE(ケース)」と呼ばれている、「Connected(つながる)」「Autonomous(自動運転)」「Sharing(シェアリング・利用)」「Electricity(電動化)」の4項目を考えながら、いち早くビジネスを構築する必要があると話した。

「コネクテッドのサービスはスマートフォンと同じように、新しいアプリが出ては無くなって…と、流行り廃りが出てくるはずです。開発にばかり時間をかけていても、リリースした頃には時代遅れかもしれません。それでは事業として意味がないので、社会に必要とされるであろうサービスを、いかに早く出すかのスピード勝負になります。」

サービスを作りリリースし、運用後さらに改善を図る。そういった意味でも、リリースしてからが本当の勝負になるだろう。スピード重視でスタートをきり、走りながら経験値をためるそのスタイルは、レガシーな企業というよりも、スタートアップのサービス開発に通ずるものがある。

「Hondaが今後、安定して事業をしていくためにもコネクテッドはなくてはならない存在です。1つの事業として成り立たせるのは、事業部としての使命。この思いを肝に命じて、仕事をしています。便利なサービスが無料で使える今の時代、事業性を考えながらサービスを提供する難しさを感じていますが、その分大きなやりがいがありますね。」

「自由闊達・自己責任」現場が意志を持って動くHondaの社風

壮大なミッションと責任を負うコネクテッド事業部と徳永。その成功に向けて、マイルールがあるという。

「チームワークをすごく大事にしています。管理職になり、任される仕事や課題が困難な業務なので、一人ではできません。だからこそみんなの力が必要です。難しいことを1人でネガティブに考えるよりも、チームワークの力でモチベーション高く取り組む。一番根底にあるのは『チームのみんながいるから倒れても大丈夫だ』と思える信頼です。安心できる力強い支えがあるから、思い切って進むことができるんです。」

チームワークが機能するのは、意志あるメンバーがいてこそ。徳永がプロジェクトをうまくリードできている背景には、Hondaらしい社風がある。

「わたしの上司はHondaの社風について、よく『自由闊達・自己責任』と表現しています。やりたいことを発信してそれが会社に認められれば自分の仕事になる。Hondaは現場にいるメンバーが意志を持って動いているんです。上司からの指示を待つトップダウン型ではなく、意志や発信が必要なボトムアップ型の組織なので、自由度高く仕事ができます。」

現場にいる一人ひとりが意志を持ち、自分が貢献できるアウトプットを考える。この社風がチームワークを強固なものにし、自身の強みがより明確になりキャリア形成に繋がる。徳永が所属するコネクテッド事業部も「コネクテッド専任の組織が必要だ」という社員の声が認められてできた事業部だ。

車の未来を創る。生みの苦しみがあるこそ、自己成長に繋がる

構築段階のコネクテッドの領域は事業性やサービス開発においても、未だ「こうすれば成功する」と確立されたものはない。徳永は、変革期である今こそ成長のチャンスだと話す。

「コネクテッド事業部では、研究だけ、開発だけ、事業だけ、といったように点で物事を考えるのではなく、全部を繋ぐ『線』で考える必要があります。また、『チャンス』の裏を返せば『生みの苦しみ』を味わうことになりますし、人並み以上の努力が必要ということになりますが、将来の車のあるべき姿を時代と共に創ることにもなる。近い将来、必ず未来の車の時代が来るので、今なら新しくて大きなビジネスを構築するところを体験できますよ!」

Hondaには、決まったことを繰り返すような淡々とした仕事はない。今はまだない「未来の車」を熱く考えながら、部署の垣根を越えてチームで向き合う。対峙するのはどれもハイレベルな課題にはなるが、最先端の技術やプロフェッショナルが集結する中で実現する事業の先には、Hondaにとっても社員にとっても大きな成長が待っている。

ぜひ一度、Hondaが挑戦する新しい試みに興味を持っていただきたい。

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