※2022年4月入社時の内容です
みなさん、はじめまして。今年4月にボーダレス・ジャパンにジョインした糸井明日香(いといあすか)と申します。
私は、弱い立場に置かれた人が抑圧され黙らされる現状に対して、マイノリティへのアプローチではなくマジョリティへのアプローチで挑みたいと思い、ボーダレス・ジャパンへのジョインを決めました。
今回はその決意に至るまでについてご紹介します。
<目次>
1.大当たりベイビー
2.子どもの声を聴かない大人たち
3.社会ってなんてテキトーなんだ
4.ソーシャルビジネスで、ボーダレスで挑む理由
5.最後に
1.大当たりベイビー
突然ですが、「アルビノ」という単語をご存じでしょうか?
アルビノとは、目・皮膚・毛髪など全身(または目のみ)が、先天的にメラニン色素を少ししかつくれない(または全くつくれない)体質のことです。
小児慢性特定疾病情報センターはアルビノ(眼皮膚白皮症)を次のように定義しています。
眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism; OCA )は、出生時より皮膚、毛髪、眼のメラニン合成が低下ないしは消失することにより、全身皮膚が白色調であり、青~灰色調の虹彩、白~茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈する。眼の症状を伴うことが多い。皮膚症状が判然とせず、眼の症状のみのものは眼白皮症(ocular albinism;OA)という。
引用元:小児慢性特定疾病情報センター 眼皮膚白皮症(先天性白皮症)概要(2022年取得)
私は、こうした生まれつき髪や肌の色が明るい、アルビノと呼ばれる遺伝子疾患をもって生まれました。
数万人に1人の割合で生まれるとされていて、アルビノの私をとりあげた産婦人科の先生は「大当たり~!」と言ったそうです(笑)
生後3ヶ月ごろ
悪いことばかりでもありませんでしたが、紫外線に弱いことや、見た目が人とちがうことで苦労した経験も少なくありません。
好奇の目で見られ、いじめられて、何も知らない先生に叱られても言い返せず、アルバイトに応募しても面接さえしてもらえない。そんなことがたくさんありました。
私はそうした壁にぶつかるたびに、その壁を壊すのではなく、迂回してやり過ごしてきました。我慢することに慣れ、「よくあることだからね」と笑い、日々の生きづらさを自ら小さく見積もり、文句を言いながらも、結局は諦める。そんなことの繰り返しです。
しかし、私は自分1人の生きづらさは諦められても、未来の子どもたちや、隣の友だちの生きづらさを諦めることはしたくないと思っています。
私は、苦しんでいる人に、痛みを感じている人に、「問題は社会の側にある」と言いたいし、「社会は変えられる」と伝えたい。
苦しみの声は、社会を変える出発点。
我慢しなくていい。
黙らなくていい。
この信念を体現するため、マイノリティの声を可視化・加勢する事業をプランニングしています。
2.子どもの声を聴かない大人たち
私がこのような問題意識をもったのは、高校生のときでした。
私の母校は「自主・自律」を重んじる自由な校風をもっていました。制服がなく、染髪などを禁止する校則もありません。それは、頭髪の色が生まれつき明るい私を「特例」としてではなく「多様性」として認めてくれたはじめての場所でした。
しかし、高校1年時、当時の校長が次年度から制服着用を義務化し、頭髪指導を開始すると発表しました。変更が適応されるのは私の一つ下の学年からで、私自身には適用されないものでしたが、むしろそうだったからこそ嫌でした。
私は校則改定に反対するために全生徒の4分の3以上の署名を集め、生徒会役員を説得して臨時の生徒総会を開催しました。抗議の意思を示し撤回を求めましたが、生徒の意見など関係ないとでも言うように、校則は翌年度から変更されてしまいました。
生徒総会では、全校生徒の前で名前を名乗って自分の意見を述べる生徒が何人もいて、なかには涙を流しながら反対意見を述べた人もいました。みんなこんなにも言いたいことがあったのか、と驚いたのを覚えています。
そして同時に、生徒という立場の弱い存在の声が蔑ろにされ、影響力をもたないことに憤りを感じました。
学校に対するもやもやを抱えたまま卒業
進学した大学ではメディア社会学を専攻し、卒業研究で不登校をテーマにドキュメンタリー映像を制作。大学での学びを通して、より一層日本の学校教育や社会そのものへの課題意識が強くなっていきました。
3.社会ってなんてテキトーなんだ
2021年は、入学金の支払期日によって生じる「受験機会の不平等」是正のために、署名キャンペーン「入学しない大学には入学金を払わなくていいようにしてください!」に取り組んでいました。
これは私の友人が「署名を集めたい」と相談してくれたことがきっかけで立ち上げたオンラインの署名活動です。
入学金には関連の実態調査がほとんどないため、自分たちで調査するところから始め、仲間集めのためにオンラインイベントを開催し、問題提起のための記者会見を開き、専門家や弁護士、政治家に話を聞いてもらい、時には地道なビラ配りもしながら、活動を進めました。
問題提起をするために開いた記者会見
活動の中で、多くの方から「前から問題だと思っていたんだよ」という声を聞き、一方で政治家の方からは「新しい視点ですね」と言われました。
これは「誰かが声を上げなければ社会問題は社会問題として認識されず、放置される」と実感した大きな経験でした。
私たちの活動がきっかけで議員さんが国会で質問をしてくれたり、選挙公約に入学金問題を明記してくれる政党が出てくるなど、署名には一定の成果があったと思っています。
しかし同時に、時間と体力と心を削られ、無償無給・全て持ち出しの手弁当でやっていてはすぐに限界がくることも痛感させられました。
そして、週末や空き時間ではなく、仕事として社会問題に向き合える環境に身を置きたいと考えるようになっていきました。
4.ソーシャルビジネスで、ボーダレスで挑む理由
さまざまな変遷を経て、ボーダレスの採用募集に応募したきっかけは、「無関心」に挑むRICE PEOPLEの取り組みを見たことでした。
それまでボーダレスは途上国の貧困や環境問題などに取り組んでいる会社だと思っていたので、「ボーダレスって、こういうのもやれるんだ」と驚いたのを覚えています。
そこから、ボーダレスの説明会に参加し、社長の著書を読み、ボーダレス・ジャパンにもソーシャルビジネスにも惹かれていきました。
惹かれた理由は3つほどあります。
1つは、ビジネスの領域が最も早く社会的なインパクトを出せそうだということです。「いま」を諦めないために、より早く。
マジョリティを変えるために、より大きく。それを追求できるのがソーシャルビジネスの長けたところだと感じました。
2つ目は、今はまだ社会に存在しない新しい選択肢・新しい方法を自分で走りながら探せるかもしれないと思ったことです。
問題提起するだけではなく、解決策もセットで提案し、体現する。
ソーシャルビジネスなら、そしてボーダレスでなら、そこに挑んでいけると思っています。
3つ目は、格差を拡大させ、弱者を搾取し続ける今の資本主義社会を根本から変えていくために、ビジネスそのものを変えなければならないと感じていることです。
出資額以上の配当をせず、ソーシャルビジネスしかやらないボーダレスでなら、社会問題の解決を目指しながらビジネスのあり方に挑戦していくこともできると考えました。
そして何より、ミジンコ以下で、何も成し遂げていない、ビジネスなんてやったこともない……こんな何もない私でも、挑戦できる環境がある。
それが、ソーシャルビジネスで、ボーダレスで挑みたい理由です。
5.最後に
頑張ることができる環境が当たり前ではないということを肝に銘じながら、そして周りのみなさんに頼りながら、必要なことはなんでも、心を込めて全力でやっていきます
弱い立場に置かれている人に心を寄せ、どんなに困難でも何らかのアプローチをとり続けることで、周囲をエンパワーメントする。そんな人になれたらと思います。
これからよろしくお願いします!
糸井 明日香