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残業のヒューマンコスト

(原文はhttps://www.wizcorp.jp/post/%E6%AE%8B%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88?lang=ja

先日、CEDECで私にとって大事なテーマについてお話をさせていただきました。その中のひとつに、この10年間改善されているとは思えない日本のゲーム業界の劣悪な労働環境がありました。

Twitterでちょっとした投票を行ったところ、私が長年抱いていた予感が的中しました。それは、この業界で働く人々の不満の原因の第一位が残業であるということです。

ゲーム業界の月平均残業時間が45時間であることを考えれば、驚くべきことではありません。1日あたり約2時間の残業です。

これだけでも十分に懸念するべきですが、さらに心配なことがあります。ほとんどの残業代は支払われておらず、基本給に含まれている、いわゆる「みなし残業」です。

残業(特にみなし残業)が従業員にとって悪いものであることを説明する必要はないと思いますが、雇用者にとっても悪いものであることを説明する良い機会ではないかと思います。

私自身も雇用者の一人として、最終的にはビジネスはボトムラインがすべてであることを理解しています。利益 = 収入 ー コスト。みなし残業というのは、コストを増やさずに収入を増やす魔法のような方法です。

しかし、かえってそうなのか?

それはヒューマンコストを考慮しなければの話です。

ヒューマンコスト

ヒューマンコストとはどういう意味でしょうか?簡単に言えば、残業に費やす時間は、他のことに使えない時間ということです。

いくつかの例を挙げて説明しましょう。

学ぶ時間がない

ゲーム開発は複雑で、さまざまな専門知識が必要です。学習に関しては、経験に勝るものはありませんが、限界があります。

スキルを維持し、新しい技術を学び、新しい情報を得る必要があります。

残業は、スタッフの貴重な学習時間を奪ってしまいます

はっきり言いましょう。10時間も働いたら、誰も効率よく何かを学ぶことはできません。

コスト: スキルの停滞、競争力の低下、離職率の上昇

休む時間がない

1日の法定労働時間が8時間であることには理由があります。特にクリエイティブな仕事では、8時間を超えると高い生産性を維持できません。

また、経験を知識や知恵として定着させる時間も必要です。ストレスや過労の状態では、それができません。

残業によって、休息や回復に使える時間が全体的に減り、健康問題やパフォーマンスの低下、さらには創造性の低下にもつながります。

コスト: 健康状態の悪化、慢性的なパフォーマンスの低下

反省会(ポストモーテム)の時間がない

誰がポストモーテムをやるものか?いや、いや、やりましょうよ!

ポストモーテムを行うことは、プロダクションで同じ間違いを何度も繰り返さないようにし、プロセスと効率を改善するための唯一の方法です。

納品するためにスタッフが既に残業している状況では、ポストモーテムを実施する時間が取れないでしょう。

コスト: プロセスを改善せず、同じ失敗を繰り返す

新しいことに挑戦する時間がない

新しいこと(新しいツール、新しい技術、新しいプロセスなど)に挑戦する際の最大の課題は、見積もりが難しく、スケジュールや予算に落とし込むことができないことです。

競争力を維持するために、そしてさらに重要なことは、企業が時代遅れにならないようにするために、ある程度の時間を研究と実験に割り当てる必要があるということです。

すでに残業している人がいる中で、その時間をどうやって確保するのか?

コスト: 陳腐化のリスク、イノベーションの欠如

マネージメントコスト

上記は、残業によって損なわれるヒューマンコストのほんの一例です。

また、もっと間接的で、厄介で、広まっている「見えない」コストがあります。不正確な管理によるコストです。

不正確な計画

制作スタッフがかなりの残業をしていることを忘れてしまうと、チームの生産性が非常に誇張されて見えてしまいます。プロジェクトが「オンタイム」なのは、計画が正確だったからではなく、従業員がより長い時間働いているからなのです。

しかし、チームが最終的に期限を守ると、経営陣は自分たちの計画能力に安心してしまいます。そして、ポストモーテムがいつも省略されるため、「前回はうまくいったから」という理由で、何度も同じ見積もりをしてしまうのです。

このような誤った計画性が、デスマーチを起こす一番の原因なのです。

不正確な予算編成

不正確な計画は、不正確な予算編成と誤ったコスト感覚をもたらします。

残業代が「含まれている」と、実際のコストを可視化することがさらに難しくなります。時間が「無償」になると、経営陣は時間を節約できるツールやサービスにお金を使わずに時間を費やしてしまいます。

繰り返しになりますが、コストの可視化やポストモーテムが行われないため、プロジェクトの予算編成や支出は、時間が経っても改善されない誤ったコスト感覚に導かれます。

まとめ

残業は(たとえ残業代が支給されていても)、どの会社も喜んではいけないコストなのです。

  • 競争力と生産性の低下
  • 健康状態が悪化、離職率の上昇
  • 改良と革新の欠如
  • 不正確な計画と予算編成

時間は商品ではありません。時間は私たちにとって最も貴重な資源であり、また非常に希少なものでもあります。

最終的には、できるだけ賢く使うのは経営者の責任です

Wizcorpでは

Wizcorpでは、残業についてのシンプルなポリシーがあります。残業をしてはいけません。

最も生産性の高い時間帯を知っているのは自分自身だと考え、スタッフにはフレックスタイムを認め、労働時間は追跡・監視しています。

また、残業をしないように、2時間のバッファーを設けています。1ヶ月の労働時間の合計が、月間法廷労働時間から2時間を引いた時間を超えていれば、問題ありません。

また、納期に間に合わせるために多少の残業が必要になることも理解しています。当社では、最初の1分から1分ごとに残業代を支払っています。

実際に残業時間はどのくらいですか?このポリシーを導入して以来、当社のスタッフの残業時間は月平均30分未満です。これは、2時間のバッファによるマイナスを考慮していないので、実際はマイナスになってしまいます。

当社の理念や福利厚生について詳しく知りたい方は、キャリアページをご覧ください。

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