WHILLに入る前までを教えてください。
もともと文系で、大学では西洋史を選考しました。興味のあった舞台芸術を専攻するため、大学時代はカナダ・モントリオールに交換留学し、「Department of Theatre(舞台芸術学科)」で、ステージマネージメントの勉強をしていました。ステージマネジメントとは、舞台の稽古やリハーサルを円滑に行うための現場最高責任者ともいえる役割で、演出家をサポートします。キャスト、美術スタッフ、音響スタッフなど大勢を取りまとめて、最終的には舞台芸術を完成させる司令塔のような役割に、魅力を感じました。大学卒業後は、色々考えた末、日本発でグローバルな仕事に関われそうな総合電機メーカーに就職し、人事・総務スタッフとして配属されました。総務・法務業務を幅広く経験した後、広報部門に異動しました。
関わった舞台の1シーン。ステージマネージャーのアシスタントを務めた。
WHILLに入ったきっかけは?
当時所属していた会社で人員削減や事業の縮小がおこり、これまで安泰だと思っていたことがそうではなかったのだと肌で感じました。こんな変化の大きい世の中でどのように生きていったら良いのだろう? 考えて出た一つの答えは、「自分ができることを増やし、死ぬまで働けるスキルを身につけること」でした。当時は広報部門に所属していましたが、部署の中でも専門の分化が進んでおり、広報のすべてを知らないという自覚がありました。PRの横断的なスキルと経験を身につけるには、ベンチャー企業が良いのではと考え、ベンチャーのなかでも、業務内容に興味を惹かれたWHILLを選びました。
WHILLに入ってギャップはありましたか?
ギャップというか苦労の連続でした。大企業での常識を、ベンチャーにそのまま持ってきてしまって、トンチンカンなことばかりしていたのです。今も周囲に笑い話にされますが、入社数日で初めて任されたイベントの「製品出荷式」で、私は万全を期して社内デザイナー(WHILL Model Cのデザイナーの鳥山)に垂れ幕を作ってもらい、リハーサル、立ち位置の設定などすべてやったのですが、取締役に「そもそもこのイベントやる意味あるっけ?」とばっさり。今思えば、何のためにやるかということと、ベンチャー企業の忙しさ、人的リソースの貴重さに気づいていなかったと思います。また、経験しなかったマーケティング業務も担当することになりましたが、全く未経験のデジタルマーケティングには相当苦労しました。
広報業務についても、取材対応など受動的な広報は一通りはできていましたが、メディアへのアプローチがなかなかできず、「社会人生活で、今まで何をやってきたんだろう・・」と思うことも多かったです。また、入社から現在までずっと広報は一人なので、なかなか相談できず辛いときもありました。ただ、ある時、自分を見つめ直そうと、「好きな仕事」と「嫌いな仕事」を書き出してみたのですが、意外なことに好きな仕事のほうが多くて、そのほとんどが広報業務にかかわることだったのです。「自分の売り込んだ企画によって番組化されるのが嬉しい」「人の話を聞いて記事化することが楽しい」など・・その時に、実は広報の仕事を楽しんでいた、好きだったと気づきました。
その後、資金調達の大規模なPR、2019年の世界的な家電見本市であるCESでの新製品発表など、経験を積むにつれ、他社の広報担当者や、記者の皆さんにも助けてもらい、だんだんと思ったように露出ができるようになってきました。なかでもCES2019の発表で、50以上のメディアに露出できた時の、社員の嬉しそうな顔や自分の満足感は忘れられません。また、新聞やメディアに露出が増えるようになると、連動してお客様からのお問い合わせの増加や売上の増加にも繋がり、経営への貢献も実感することができるようになりました。
多くのメディアが集まった羽田空港でのメディアイベント
2020年には、世界初となる羽田空港での自動運転システムの導入を果たし、AP通信、ロイター通信、Wall Street Journalなど世界的なメディアに相次いで取り上げられ、MaaSの分野でのパーソナルモビリティの主要ポジションを築けたのではないかと思っています。
さらに、羽田空港導入については、導入までの1年以上を「ガイアの夜明け」にも長期密着いただきました。
その後、キャリアチェンジでマーケティング部門のマネージャーに。
社内の人事異動で、2020年11年にマーケティングコミュニケーション部門のマネージャーを務めることになりました。マネジメントという業務になんとなく興味はあったものの、いつか経験するとするとそれは広報業務だと思っていたし、未経験のマーケティング業務とマネジメントを両立するのは「無茶だな」と思いました。業務指示を一つするのでも、自分の言葉に確信が持てず、足元に何もないような頼りなさを感じ続けたことを覚えています。
さらに、広報という、自分としてはある意味「泥臭い地上戦」と思っていた仕事に比べ、マーケティングは華やかなイメージが拭えず、この仕事を好きになるのも時間がかかりました。マーケティングはセンスやひらめきが必要で、空中戦ができる人がやること。その先入観があり、戦略を考えたり他社事例を見たりすると嫌気で吐きそうになっていました。
そんな中、ある人にマーケティングを学ぶ機会があり、ほんの短い間ではあるのですが、マーケティングとは「誰に、何を、どう伝えるかだ」と実感させていただいたことで、少しずつマーケティング活動のよりどころができるようになってきました。まずはユーザーを知ること。そしてカスタマージャーニーに基づいてその方へに刺さるリーチの仕方、タッチポイントにおけるペインポイントをクリアにして一つずつ実行していくこと。それがクリアになることで、ユーザーにリーチするポイントが広がっただけで、広報業務と同じように、地道にやっていけば良いことなんだ! と気づけました。
ターゲットが変わっていくことを実感できる、マーケティング部門の活動
マーケティング業務においては、WHILLという乗り物を「電動車椅子」ではなく、新しい近距離用のモビリティとして広く認知させる、というところにもっとも重点を置いています。「近距離モビリティ」という新しいカテゴリの乗り物としてのコミュニケーションを徹底することで、昔は「電動車椅子のWHILL」として認識されていましたが、最近ではメディアにも取引先にもユーザーの方にも、「近距離モビリティのWHILL」として表現いただくことが増えてきました。
さらに、「ターゲット拡大のスピードが自分の想像を超えてくる」というのもWHILLならではの経験でした。私が入社した5年前は、ユーザーは車椅子をお使いの方が中心で、歩きづらさを感じているシニアの方は「私には早い、まだまだWHILLは不要」とおっしゃる方が多かったです。
しかし、全国で自動車ディーラーが続々と取り扱い始めたり、近距離用のモビリティとしての認知が広がっていったことで、「来年は免許返納を考えているので、代わりになる乗り物を探している」「母が近所の買い物に苦労していて、自転車はちょっと危ないのでこれを勧めたい」という、新しい乗り物としてのお問い合わせをいただくようになりました。
自分でも「あと10年くらいは難しいのでは・・」と思っていた層の方々が、実際にもうWHILLを選び始めていることは、世の中の変化って自分が想像したよりも早くくることがあるんだ! と感慨深かったですし、これからもっともっと、自分の想像していたより早く、未来が来るという体験が味わえるのかな、と思っています。
WHILLで働くおすすめのポイントを教えて下さい。
たくさんありますが、絞ると、以下の二つです。
① 人が爆速で育っていける体制、土壌があること
スタートアップならではのスピード感と裁量の大きさで、若い方や未経験の方でもやる気とポテンシャルがあれば、どんどん大きい仕事を任せて成長していける土壌があると思っています。
たとえば、1年前に入った広報担当は、広報業務未経験から3ヶ月くらいで一人でメディア対応できるようになり、今では年間3,000件くらいのメディア露出を一人でハンドリングしています。
また、総合広告代理店で経験を詰んだプランナー、事業開発経験者、データ解析のプロフェッショナルなどがいる部署なので、メンバーに学びながら幅広いマーケティングの経験を積むことで、総合力のあるマーケターを目指すことができます。私も20代でこういう環境で働きたかったです(笑)
② 自分が関わるプロダクト、サービスが世の中を良くしていることを日々実感できること
ユーザーの方や法人の取引先の方々と接する機会も多いのですが、多くの方から「WHILLが来てから、お出かけがもっと楽しくなりました」とか「お客様の人生が変わったプロダクトです」といっていただくことが非常に多く、自分が関わるプロダクト、サービスが世の中を良くしていることを日々実感できるのではないかと思います。お客様への納品の同行をさせてもらうことも多いですが、お客様の、”新しいクルマ”を手に入れた瞬間の嬉しそうな顔を見るたびに、世の中に対して、ちょっと良いことをしているのだなと思えます。
実際のお客様と接する機会も多い
ちょっと話がずれるのですが、昔ステージマネジメントを学んでいた頃、世の中には美術センスや演技力などものすごい才能を持つ人がたくさんいて、自分は特に才能がないのに、マネジメントという役目で一つの作品を作ることに関われるって幸せだなと思っていました。
今WHILLでマネジメントという仕事をしていて思うのは、経験と才能のあるマーケターのメンバー、日本でもトップクラスのデザイナー、エンジニアなどと一緒に、製品/サービスを世の中に送り出していけるのはすごく幸運だなということです。一人ひとりの得意なところを発見して、特性に合った仕事をお願いする、裏方的な立ち位置でもあるので、昔、魅力を感じたステージマネジメントとの共通点もあるのかもしれません。
マーケティングのための動画撮影にて。WHILLのバリューである"One Team"精神で乗り切る
20−30代でキャリアやワークライフバランスを考え直す人は多いと思います。そんな時に、スタートアップという選択肢も持っておくことが、今後の人生に幅が出ると個人的には考えています。そして、WHILLという場所は、自分の成長を実感しつつ、自分の仕事がお客様や社会の役に立っていると実感できる職場だと思います。入社時60名程度だったWHILLも今やグローバルで数百人を超え、製品を販売する国もどんどん増えています。スタートアップだからこその成長スピードで、自分が納得できる仕事をしたい方、ぜひWHILLに興味を持っていただきたいと思います。