WASSHA COOの米田です。
2014年から東アフリカに駐在して、未電化地域向けランタンレンタルサービスの立ち上げとグロースを担当しています。WASSHAに関心を持ってくださっている方々に、アフリカビジネスの現場からリアルな情報を発信していければと思います。今回は、2020年を振り返って、そして、2021年のフォーカスについてです。
2020年を振り返って
・創業始まって以来の危機
・コロナによる駐在メンバーの緊急帰国
・慣れないリモートワークと働き方の変化
・アフリカチームのハードワーク
2021年のフォーカス
・事業の解像度を上げ経営管理を強くする
・他国展開を加速させる
・ランタンの次のプロダクトをつくる
2020年を振り返って
創業始まって以来の危機
2020年はスタートからカオスでした。年明け早々、創業以来ランタンやソーラーパネルなどの機器を供給してくれていた中国のサプライヤーが「機器を供給できない」と突然言ってきました。。。急遽、役員3人で中国に飛び、サプライヤーの会長と会って話をしたものの「供給不可、ペナルティも払わない」の一点張りで全く話が通じません。完全に契約違反です。にも関わらず、先方は契約なんてあってないようなものと言わんばかりの言動でした。見かねた同僚が「契約を無視するなんて野蛮人の行為だ!」と声を荒げるほど協議は難航し(barbarian(野蛮人)という英単語を現実世界で耳にしたのはこれが初めて笑)、最終的に交渉はまとまりませんでした。結果、2020年は機器調達に不安を抱えた状態でスタートすることになります。
コロナによる駐在メンバーの緊急帰国
サプライヤー危機の次はコロナでした。年初から中国、欧州、アジア、アメリカと徐々に感染拡大していたコロナウイルスがアフリカ大陸にも上陸します。3月に入ると、アフリカ各国で感染者数が増加し始めていました。当初は情報も少なく未知のパンデミックという認識だったこともあり、アフリカに駐在しているメンバーは全員日本へ緊急退避することを決めました。事業のことを考えると現地に残りたい気持ちもあり、また、タンザニアチーム・ウガンダチームへの後ろめたさもありました。ただ、コロナの実態がよく分からない状況下、駐在メンバーの安全確保を最優先としました。
金曜日の経営会議で緊急退避を決めたのですが、決めたら即実行しよう!となり、土日の間に帰国準備を整え全員が出国しました。この翌週から、航空会社各社がタンザニア経由の国際便数を減らし始めたことで予約が取れない、航空運賃が大幅に値上がりする事態に陥ったことを振り返ると、ベストなタイミングで動けたのかも知れません。(WASSHAのValueの1つ”Speed matters”の大切さを実感。)
3月後半に全員で帰国した翌週には、東京でも緊急事態宣言が発令されました。東京オフィスをクローズとし、日本チームはリモートワークへ突入します。この時点では、日本滞在とリモートワークがこんなに長期化するとは想定していませんでした。
リモートワークの導入と働き方の変化
リモートワークがスタートし、試行錯誤を繰り返す中で働き方は大きく変化しました。
まず、アフリカチームとの働き方については、駐在メンバーが日本に帰国したことで大きな進歩がありました。プロジェクト化、コミュニケーション機会の定例化、情報の蓄積と共有化が進んだことで、リモートでも事業活動に参加しやすい環境が整いました。その結果、以前は日本チームからは見えにくかった課題や活動進捗が可視化されるようになり、また、アフリカ側の地方拠点にいるメンバーとも直接連携してプロジェクトベースの働き方ができるようになりました。タンザニアでは、以前はダルエスサラームオフィスのメンバーのみで開催していた月曜日の朝会にも、今ではタンザニア全国のメンバー(約250名)と日本チームがオンラインで参加するようになりました。
日本側でもメンバー間のコミュニケーションを促進するための様々なトライがありました。毎朝10分間はオンラインでつないでチームで話す朝会、週1でランチタイムに各メンバーが持ち回りで趣味、前職の経験、生い立ちなど、フリーテーマでカジュアルに話すOpen door、夜に不定期に開催するオンラインスナック、月1回は対面で会う機会を設けるOffice day、などなど。リモートワークについては、移動時間がない効率の良さがある反面、朝から晩までミーティングで埋まってしまい考える時間や作業する時間が取れないことや、行き詰まったときや上手く言語化できない悩みをカジュアルに話す機会がないといった課題があります。これらの課題には今後も全社的に継続的に取り組んでいきたいと思います。
これら働き方の変化については、昨年入社してくれたメンバーがリーダーシップを発揮して進めてくれました。新しくジョインしたメンバー視点で、仕事を進める上でのハードルやコミュニケーション上の課題感をきちんと声をあげてくれたこと、また、前職や他社の取り組みを参考に率先して社内の活動を企画、リードしてくれたことが今の成果につながっていると思います。
アフリカチームのハードワークと日本チームの役割の変化
2020年を振り返ると、冒頭に書いたサプライヤー危機はあったものの(後に奇跡的にリカバリー策が見つかった)、事業に対するコロナの影響は限定的で、主戦場であるタンザニアではほとんど影響がありませんでした。未電化地域にソーラーパネルを設置し電力サービスを提供するという事業の性質上、①収益をあげるポイントが全国の過疎地に分散していること、②料金回収がモバイルマネーによりリモート化されていたこと、③一度機器を導入すれば後はコールセンターからのサポートを中心に対応できることが上手くハマって運が良かったんだと思います。
また、駐在メンバー不在の中、事業が止まるような大きなトラブルもなく成長を維持できたのはアフリカチームの現場でのハードワークがあったからです。この10ヶ月間、現場レベルの意思決定は全てアフリカチームのマネジメントメンバーへ権限移譲し、日本チームは収益改善のプロジェクトと中長期戦略の施策化に割く時間を増やしてきました。この過程で、アフリカチームの問題解決力、現場のリーダーシップ、プロジェクトマネジメント力は大きく成長しました。駐在メンバー不在で難しい部分もあったかと思いますが(少しはあって欲しい。。)、アフリカチームがオーナーシップを持ってイキイキとポジティブに働く姿には助けられました。
2021年のフォーカス
2020年はサプライヤー危機から始まり、コロナ危機を経験し、未曾有の変化に対応しながら事業とチームを維持した1年でした。2021年は攻めの年、次の3つに注力して事業の成長をつくっていきます。
・事業の解像度を上げ経営管理を強くする
・他国展開を加速させる
・ランタンの次のプロダクトをつくる
事業の解像度を上げ経営管理を強くする
2020年に解像度がぐっと上がった領域の1つにSupply Chain Management(以下、SCM)があります。WASSHAにおけるSCMとは広義には資産効率の最大化、狭義には在庫管理を意味します。SCMチームは全国2,000箇所にある小売店(キオスク)に配置されている10万個以上のアイテムをタイムリーに把握し、需要に合わせて追加や回収を行い、故障品の修理や新たな機器を調達することで供給をコントロールしています。このSCMの領域において、昨年1年間でシステムを内製し導入、現場オペレーションへの落とし込みが完了したことで全国のキオスクと倉庫にある在庫が把握できるようになりました。今年はこの在庫のデータと需要(売上)のデータを活用することで、最適な在庫配置の基準を設け、適時に供給される仕組みを構築したいと考えています。オペレーションの中の属人的な要素を減らし、数字に基づく意思決定やアクションを取れる経営管理体制を目指します。
SCMで成果が上がっているのは、チームのハードワークに加えて、2019年、2020年と日本チームのメンバーが増えたことで、経営管理機能の強化に向けてシステム開発と現場のオペレーション構築へリソースを集中的に投下できるなったことが要因の1つです。日本チームのメンバーは複数のチームやプロジェクトを担当することが多くリソースが分散しがちです。その結果、時間が経つほど手が広がってしまい、1つ1つのアプトプットが浅くなる傾向があります。これは個でみると、経営陣からメンバーまで全員に当てはまります。この事業拡大に伴うリソース分散化問題を解決するために、2019年以降は採用を強化してきました。その結果、営業・マーケティング、カスタマーサポート、人事、コーポレートの領域においても少しずつ解像度が高まり、より細かい粒度で課題や施策の議論ができるようになってきています。とは言え、まだ足りないと思っています。2021年も引き続き、アフリカに駐在して一緒に事業をつくっていける仲間を探したいと思います。
(関連する募集)電力事業マネージャー
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他国展開を加速させる
2020年は他国展開をリードするGlobal expansionチームが、サービスの拡大に向けて本格的に始動した年でした。ウガンダでは2019年のトライアルフェーズを経て拡大期へ突入。コロナ渦、オペレーション、組織ともリモートマネジメントによる拡大となりましが、チームのハードワークと試行錯誤を重ねた結果少しずつ型ができてきており、ウガンダでのベストプラクティスをタンザニアに逆輸入するケースも出てきています。今後も各国での知見の蓄積と共有、メンバーの交流を通じて、グローバルな標準化と各国毎のローカライズをバランスよく進めていきたいと考えています。モザンビークでは、昨年2月に子会社を設立した直後からコロナの影響で動けない期間が続き、最近ようやく活動を再開しました。2021年はウガンダでの更なる事業拡大と、モザンビークでのPMFの実現と事業化をメインに進めつつ、もう1,2カ国仕込んでいきたいと思っています。
他国展開においては、タンザニアの型を他の国へ展開しPMF、ユニットエコノミクスの成立、組織の立ち上げを担当する”横”の機能と、その後に、組織を拡大させながら事業をグロースさせる1つの国を深く掘っていく"縦"の機能が求められます。将来的には各国現地のメンバーに経営も事業もリードしていただくことを目指していますが、当面はそこに至るまでの足りないピースを補完する柔軟な働きをGlobal expansionチームが担っていくことになります。時には現場に深く入り込んで泥臭い仕事が必要とされることもあれば、思い切って権限移譲して仕組み化や制度設計にフォーカスすべきフェーズもあります。
現在Global expansionチームは2名体制ですが、今年は社内外から増員して他国展開を加速させます。
(関連する募集)海外進出担当マネージャー
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ランタンの次のプロダクトをつくる
世界の未電化人口の72パーセントにあたる約6億人がアフリカにいると言われています。広大な国土をもつ国が多く、人口も増えて続けており、送配電網の延伸による電化という従来のアプローチが間に合っていないのが現状です。また、ここ数年でソーラープロダクトやOff gridソリューションを提供するスタートアップも増えてきましたが、粗悪品が多く購入後すぐに壊れてしまうケースや、価格が高く手が出ない人々がまだまだ多いのが実態です。先進国の人々からすると信じられないかも知れませんが、未だに灯油ランプや、ロウソクの灯りで生活を送る人々や、灯り代すら節約するために月灯りで我慢する人々がいます。
この課題に対し、WASSHAは分散型発電とレンタルによる電力の小売りというアプローチで解決に取り組んできました。しかし、タンザニアやウガンダでは、所得が低くレンタルサービスを利用できない人はまだまだ存在します。言い換えると、WASSHAにとっては、収益性のハードルから進出できない地域やコミュニティが多く存在します。この現状を打破するために、新たなプロダクトを開発し年内にローンチします。
(関連する募集)ハードウェアプロダクトマネージャー
https://www.wantedly.com/projects/538591
昨年から議論を重ね、最近Visionをアップデートしました。
新しいVision
Unlock humankind's limitation(人類の「できない」を「できる」に変える)
アフリカには人類の「できない」ことがたくさん残っています。WASSHAは僕たちなりのユニークなアプローチを磨くことで、ビジネスでこれらの「できない」を「できる」に変えていきます。既存のEaaS(Energy as a Service)事業の中から、Visionの実現に向けたモメンタムを創っていきたいと思っています。Visionに共感いただける方、一緒に未電化地域を駆けずり回ってプロダクト開発、事業開発をしてくださる仲間を引き続き募集しております!
(関連する募集)オープンポジション
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