ー外部環境が変化しても、成長を続けられる企業の共通点とは?
言葉で聞くと月並みかもしれませんが、所謂、「いかなる変化にも対応できる会社」ではないでしょうか。
今の日本の社会って、今日より明日、明日より明後日と、頑張って、頑張り続けて、それで報われる時代じゃないと思うんですよね。残念ながら、同じことばかり繰り返していても、衰退していく国なんです。
では、そんな社会の中でどうすれば成長できるのか。
それは、「新しいことを受け入れ、対応していく」、そして「新しい価値を創造する」ことに挑戦をしていくことだと、私は思っています。
私は「挑戦し続ける」ことで、「安定」が生まれると考えています。それが例え今、順調で上手くいっていたとしても、同じことを続けることは結果としてリスクが大きい。
「自社が持っている武器や強みってなんだろう」と考えたときに、それらにいかに新しい価値を付加していくか。もちろん、何でもかんでも挑戦すればいいってものじゃないですよ。気合と根性だけの話ではないので(笑)
自社の強み、そして弱みもしっかりと分析して、それに対する外部環境を再認識するんです。成長する多くの企業は、経営者が中心となり、社員一丸となって挑戦し続けているのではないでしょうか。
ー業界に成長性が見えない場合、変えるべきは商材?それともマーケット?
私たちは従来、オフィス家具の販売を生業としていました。
企業様がオフィス家具をお買い求めになるとき…って、どんなときでしょうか。机が汚くなったから?椅子が壊れたから…?
そう考えたとき、生業としていた私たちが自身が、オフィス家具そのものを価値を見直すことが必要だと思ったんです。つまり企業様は、「オフィス家具や事務機を通して、従業員が働きやすくなる」ということを、求めているのではないかと。
業界自体に成長性がない…と言いますが、本当に業界に成長性がないというのは、その業界が提供しているサービスや商品に価値がなく、必要とされていないということです。単純に、椅子やテーブル、プリンターなどのオフィス用品だけを提供しているという発想であれば、確かに成長性はない。
日本の中小企業は、後継者不在などの問題を抱え、今後も減り続ける一方です。単なるなオフィス家具・事務機販売業は、間違いなく更なる価格競争になるでしょう。
しかし、「より良い働き方」の提供という観点から見直したこの業界は、間違いなく求められるニーズなのではないか。であれば、衰退する社会の中でも、事務機業界はまだまだ成長性があるのではないかと、私は考えています。
その考えに辿り着くまで、見る角度を幾度となく変え、「価値」を改めて見出すことに注力しました。質問の答えで言うと、我々の場合は自社で築き上げてきた市場は大きく変えず、商品としていたものの在り方を見直すことで、新しい「価値」を創造することができた、そう考えていますね。
ーワクスマが作り上げた新しい価値とは?
私たちはオフィス用品販売業から、「ワークスタイル創造提案業」という事業へと再定義しました。やっていることは、正直大きく変わらないんです。
売るものを変えた、つまり売る「価値」を変えた。
この商品を売ります、って言うと分かりやすいですが、「価値」を売るのって説明しにくいんですよね。
例えば、『これを使うと、こう言うふうに働き方が良くなるんです!』ってお客様に言っても、イメージするのは難しい。なので、従来の会社に訪問して提案するスタイルから、来社して体験いただく提案スタイルに切り替えました。
その「価値」に共感していただけるお客様というのは、同じような規模感の企業様です。
従業員数が50名以下で、会社を成長させたい、発展していきたいというビジョンを持たれている、20代から50代までの経営者というイメージで、ターゲティングしてきましたね。
ー過去、倒産の危機に陥ったときに、足元の資金繰りや目先の売上の確保に必死だったと言うお話をされていますが、その当時に心がけていたことはありましたか?
実際問題、お金がないと何をやってもダメなんですよ。
目の前の資金繰りに追われている追われている状況で、理念とかビジョンとか、ビジネスモデルとか言っている場合じゃなくて。次の思考が生まれなくなってしまうので、そう言う意味でもキャッシュは本当に重要だと、当時痛感しました。
なので今は、必要はありませんが銀行からお金を借りるようにしています。資金はできるだけ潤沢に、少々の金利を払ってでも余裕を持った経営をすると意識していますね。
借り入れは少ない方がいい、と言う意見も多く聞きますが、これは財務的な問題だと思います。
キャッシュがあれば心にも余裕が生まれるし、チャンスを逃さないためのスピード感も持てる。会社にとっては、そちらの方が重要じゃないかなと思います。
あの当時は、常に緊張を強いられていて、綱渡りの状況が続いていました。
そんな状態の中、私自身を奮い立たせていたのは、「絶対に会社を復活させて、この惨めな状況から脱出してやる」という、もはや根性論でしたね。
会社の理念とか社会貢献とか、全然きれいなものではなくて。純、不純は良いんです、「必ずこうなってやる」と言う強く明確な願望、心の支えを持つことが重要だと思います。
ー社員のエンゲージメントを高めるためにされていることはありますか?
石井事務機センターからワクスマへと変わっていく中で、入ってくる社員もいれば、もちろんやめていく社員もいました。どこまで行っても、100%の採用は難しい。
だからこそ、今いる社員は会社の意思を理解し、共感してくれていると思っていますし、そういう社員がいてくれればそれで良いんです。
これから先はそういったメンバーを中心とし、次の代へと権限委譲をしていかないと思っています。社長が言うから、社長が褒めるから頑張る、では今後の発展性は絶対にないので。
現状、社会的にはまだまだニーズの少ない会社なので、今は私が起点となって社員のモチベーションを上げることはあります。
しかし私が目指すところは、社員一人ひとりが自分の仕事にやりがいを持てるようになること、それが最強のエンゲージメントではないでしょうか。