ベンチャー投資の世界に正解はなく、常にリスクとは背中合わせ。ベンチャーキャピタルの人々はどんなノウハウや知見で投資する・しないの判断を下すのででょうか?
みらい證券株式会社でのベンチャーキャピタル事業を皮切りに、スタートアップ投資、アライアンス支援、M&A業務に従事した後、2017年にbasepartners LLPを創業した代表パートナー、山口 丈寛さんにお話を伺いました。
ちなみにユーティルはbasepartners LLPの投資先のひとつ。
ユーティルへの投資を決めた背景のお話も合わせてお聞きしています。
スモールベンチャーに「投資する・しない」の決定するときの判断軸は?
我々の場合、創業準備中の早いステージに決定することが多いです。よって判断材料が少なく、経営陣との会話やディスカッションで見極めていくことがほとんど。
いくつかの仮説を立て、このチームでなら事業化できる、行けそうだって期待値を計ります。返済を不要とする分、リスク回避するために厳しい視点でジャッジはしますよ。
ただ、数字や合理性だけで説明のつかない部分もあって、たとえば事業のジャンル選定も良い、数字も良い、でも人に対してなんだかモヤモヤする…という場合、結局うまく行かなかったということもあります。
誠実であることは経営者としての絶対条件として、お金にルーズではないか?先々の資金繰りを考えているか?事業のことしか見えていないのではないか?といった部分も大事。
数字のスペシャリストである必要はないですが、最低限は理解していないとまずいです。
具体的に、どのように人を見極めていく?
経営者本人やマネジメントチームとの直の会話が大事。ビジネスMTGもすれば、酒のないランチ、酒のある会食等、色んな方法で総合的に人柄を見ています。会社に足を運んで雰囲気や空気を確認することもしますし、取引先の社長や従業員へのヒアリングすることも普通にやります。
ただ、岩田さんと私の間には共通の知人も多く、信頼関係が早期に築けました。かつ岩田さんご自身が投資する側のお仕事をしていたこともあって、見極めという点ではあまり苦労していないです。
投資家から見たユーティルはどうだった?
経営者の人柄はとても重視していて、そういう意味では岩田さんは良い人間性をお持ちだと思いました。
B2B領域のマッチング事業面でいうと、類似したビジネスモデルはすでにあります。ただ、岩田さんはもともと持っていた経験を軸にサービスを設計していました。業界を知る人が始めたサービスであるのは大きなプラスです。
マッチングサービスってたくさんありますが、不満も多くないですか?軽い気持ちで問い合わせただけなのに、たくさんの業者が鬼のように電話をかけてきてうんざりする…ってこと、誰しも経験があるはずです。
ユーティルは、ユーザーの「どこに頼めばいいかわからない悩み」や「相場観や選択肢を知らないまま発注してしまうリスク」を解消するサービスを提供しています。ユーザーが嫌がることをせず、本質的な問題解決にフォーカスすることで、“これまでなかった新しい価値”を生んでいる点を高く評価しています。
※弊社事業の詳しい内容はこちらの記事もご覧ください。
ユーティルに不安を感じた要素は?
ほぼありませんでした。
ふつうは1~1.5ヶ月かけて投資する・しないのジャッジを下すところが、2~3週間で決まりました。大きなVCだと3ヶ月近くかけることもあるし、独立系でも1~2ヶ月かけるものなので、かなりスピーディにGOの判断を下しました。
岩田さんも話していたことですが、数年で急激に成長するモデルではありません。派手さはなく堅調なので、腰を据えて取り組まないといけないとはわかっていましたが、きちんと取り組めば着実に成果は出せると考えています。
現時点でのジャンルは「Webと動画の制作」に特化していますが、それ以外に対象を広げていくといった話はしていて、より成長スピードが高まると期待しています。
ちなみにVC目線でいうと、岩田さんはロジカルで堅実な性格。攻めも守りも両方こなせる「ハイブリッド型経営者」ですね。これまでのキャリア背景から考えても、B2CよりもB2B事業がハマっていらっしゃると思います。
失敗する企業の共通点ってありますか?
「ジャンル選定を見誤る」のがまずひとつ。シードステージで多いケースです。加えて「そもそもニーズがない、あっても単価が低くて成立しない」、「参入障壁で苦しみ、顧客が獲得できない」あたりですね。
マーケットの選定とマネジメントチームががちっと組み合えば成功確率は上がります。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、社長が事業の現場で精力的に働いているかどうかは大事な部分。ふつうは没頭しているはずなのに、もし現場に現れないとしたらそれは良くないサインです。
テナントオフィスのグレードは身の丈にあっているか?社員数は適切か?…といった経営者のカネの使い方も見ています。
コロナ禍のなか、資金面で苦労する企業は増えているのでは?
多くの企業が資金繰りで苦しんでいる…という話をよく耳にします。事業を続けるためのお金、売上や見通し、融資、増資について、現実的な判断つかない人が多い印象を受けます。
危機的状況なのに危機感を感じない経営者、コストを頑なに見直さない経営者も少なくありません。現状を正しく&冷静に理解して、ちゃんとした見立てをできる能力は大事です。
BtoBの相談窓口という事業の可能性をどう見ている?
Web制作は大きい市場です。そのぶん、数年であらゆる企業がユーティルを使う…といった状況にはならないかもしれません。でも確実にシェアを増やしていける「ニーズ」はあると考えています。
また、動画はこれから伸びる可能性が大きい。通信規格が5Gになっていくと、通信制限もより少なくなります。ライブ配信もしやすくなるでしょうし、4Kのリッチな動画も気軽に視聴する環境が整います。現段階の市場規模はWeb制作より小さくても、今後爆発的な成長が見込めると考えています。
Web制作や動画以外にも、企業は様々なサービスを比較したり、最適な業者をマッチングしてほしいと思うはず。たとえば「オフィスを移転したい」といったB2B需要は昔からありますが、これといった最適解はまだない状況です。
他にも内装、建築、家具等の備品…等の、Web制作以上に大きな金額が動く市場はあるわけで、そこまでトータルにカバーできると強いでしょう。そういう意味でユーティルは良いポジションにいますので、今後に期待していますよ(笑)。
山口 丈寛さん
basepartners 有限責任事業組合
https://www.base.partners/
https://twitter.com/yamaguchi_bp
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