こんにちは。コーポレートスタッフの中村です。
今回は、ユニキャストとデジタル・フロンティア様が共同開発しているサービス「KSIN(けしん)」について、開発エンジニアの矢葺さんにインタビューを行いました。
KSINはアバターを利用して、店舗の接客や窓口業務を遠隔で行うことができるWebサービスです。2022年7月にベータ版をリリースし、現在様々なお客様からお問い合わせをいただいています。
KSINについて様々な角度からお話を伺ってみましたので、ぜひ最後までご覧ください!
【デジタル・フロンティア様について】
3DCG制作を中心とした日本の映像プロダクション。国内におけるデジタルヒューマン研究開発のパイオニアであり、実在の人間と見間違えるほどの高品質なCGモデル制作技術を保有しています。実写合成のVFX、作画ベースのセルルックアニメーション、フルCGアニメーションなど、幅広いジャンルの制作を手掛けています。主な作品実績に「今際の国のアリス」「竜とそばかすの姫」「GANTZ:O」「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」など。
※株式会社デジタル・フロンティアは円谷・フィールズホールディングス株式会社のグループ会社です
プロジェクトの始まりから、開発に参加・ベータ版リリースまでの流れ
ーー今日はよろしくお願いします。まずKSINを開発することになった経緯を教えてください。
デジタル・フロンティア様がユニキャストのお問い合わせフォームからご連絡をくださったのが始まりです。
デジタル・フロンティア様はデジタルヒューマン(実写と見分けがつかない人間をCGで作る技術)の研究開発をされており、その技術をエンターテイメントコンテンツだけでなく、サービスとして様々な業界の仕事に活かしたいと考えていたそうです。それを実現するための開発パートナー企業として、ユニキャストにお声がけいただきました。
ユニキャストがロボットによる企業受付サービスを展開しているところに着目してくださったようですね。「人ではないものを使って、楽しいコミュニケーションを提供しながら業務効率化を図る」という点が、デジタル・フロンティア様の考えていたものにうまくマッチしたのだと思います。
ーーKSINは、ユニキャストでは矢葺さんが中心になって開発していますよね。開発を担当することが決まった時、どう思いましたか?
実は、KSINの開発には自分から手を挙げました。リアルなアバターを使って接客をするサービスというのが面白そうだと思って。こんなに面白そうな仕事の枠が空いているなら自分がやりたいなと。
プロジェクト自体は私が入る前から始まっていて、もともとは別のエンジニアの方が関わっていたのですがさらに人手を増やしたいということで、本開発が始まるタイミングで名乗り出ました(笑)。
ーー自ら立候補したのは知りませんでした。すごいです!KSINは現在ベータ版が出ているとのことですが、ベータ版ではどのようなことができるのでしょうか。
そうですね、今年の7月にベータ版をリリースしました。KSINのベータ版では、接客に必要な機能は一通りお使いいただけます。遠隔でお客様とオペレーターが会話したり、オペレーターの表情をリアルタイムにアバターに連動させたり、この機能があれば実際に店頭に置いていただけるという部分ですね。
設計・企画段階ではどんな機能を付けるかのアイデアがたくさん出ましたが、全部を実装するとかなりの時間がかかってしまうので…。機能を特に大事な部分に絞ってベータ版としてリリースし、ユーザー様の反応を見させていただいています。
ーーなるほど。もう導入していただける状態なんですね。
はい。KSINはサブスクリプション契約になります。サブスクリプション契約では最初にまとめて大きな金額を払う必要がなく、導入時のリスクを軽減することができます。契約期間も状況に応じて決められるため、まずは試しに使ってみたいというお客様にも導入していただきやすいのではないでしょうか。
また、KSINはクラウドサービスであり、お客様が所持しているPC、モニター、iPhoneでお使いいただけます。これらの機器があればKSIN用に新しくハードを買わなくてもよいので、手軽に始めやすいサービスになっています。
初めての仕事の連続。KSINの開発で得た気づきとは
ーー矢葺さんはもともとWebサイトなどの開発を得意とされていたと聞きました。Webサイトの開発とKSINの開発ではまた違いがあったのではないかと思いますが、KSINならではの難しさはありましたか?
そうですね。私は前職でWeb制作をしていましたが、KSINが大きく違ったのはリアルタイム性が重視されることです。
Webサイトは主に運用者からユーザーに向けて事前に準備した情報を発信するものであるのに対して、KSINは相互に会話するコミュニケーションツールなので、実際に足を運んでくだった方とリアルタイムでやりとりができるようにするための機能の開発が必要でした。そこが今までになかった難しさですね。
ーー特に大変だったことはなんでしょうか。
今回のKSINのように、リリース後もメンテナンスをしてご提供していくといった自社サービス型の開発に携わるのは初めてだったので、どんな仕事が必要かという全体像を把握するまで苦戦しました。
例えば予算の見極めやサーバーの手配にかかる時間の計算、あとは作るだけではなく宣伝が必要とか。今まで想像できていなかったような仕事の連続だったのが面白くもあり、大変でもありました。
ーー初めての仕事にもたくさんチャレンジされたんですね。では次に、うまくいったと思うことを教えてください。
そうですね…。新サービスの立ち上げということで、サーバーサイドからフロントエンドまで全体を通してゼロから設計・実装できたことですね。
今後新しい要望が出てきたときに、開発前よりも高い精度で見積ができそうとか、どのやり方が効率がよいかわかるとか。そういう立場になることができたのはとてもよかったと思います。
ーー今回の開発の経験を、今後どのように活かしたいですか?
今後は大規模な開発をチームで効率的に進めていくことに挑戦したいです。
今回のような規模の大きい開発では、沢山の方に協力を依頼してチームとしてサービスを作り上げていくことが重要だとあらためて実感しました。自分でできることもまだまだ増やしていきたいと思うと同時に、タスクの切り分け方・スムーズな情報共有といったチームで仕事を進めるスキルも磨いていきたいです。
よりよいサービスを目指したい。開発エンジニアが思うKISNの展望
ーーKSINはアバターを用いて遠隔接客をするサービスですが、リアルな人間に近いアバターの良さというのはどういうところだと思いますか?
リアル寄りのアバターのため、落ち着いた雰囲気の場にも馴染みやすいのはKSINの特長です。類似するサービスにはアニメ調のアバターを使用しているものもありますが、それらのサービスとの差別化にもなっています。
たまにZoomなどの実写映像ではいけないのかと聞かれることがあるのですが、アバターにはアバターの良さがあると思うんです。例えばアバターを用いた接客ではユーザー様が見た目のコンプレックスを気にせず、お客様とフラットな関係性でコミュニケーションをとることができますよね。
ーー素顔を出さなくてよいので防犯にもなりそうですね。ちなみに、マスコットキャラのようなアバターも作ることができるのでしょうか。
技術的には可能だと思います。ただ、表情や動きを人ではないアバターにどう反映するかというのは考える必要があります。
KSINの開発コンセプトの一つに、「性別や年齢にとらわれず、色々な人が色々な仕事をやりたいように実現するためのツール」というのがありまして。お客様が一番楽しいと思える見た目で利用できるようにしたいです。
ー矢葺さんが思う、KSINに関する展望を教えてください。どんなシーンにニーズがありそうとか、こういうことをしていきたいなど、何でもいいのでお聞きしてみたいです。
私が今一番気になっているのは、勉強や研修での利用です。「知人や家族に言われても素直に話を聞きづらいけど、外部の先生に言われたら素直に聞ける」といった経験はありませんか?この外部の先生役として自由に見た目をカスタマイズ可能なアバターが活きると考えています。そういった使い方もアバターの良さが出て面白いのではと思います。
あとは、とにかくもっと色々なところにKSINを置かせていただきたいですね。KSINがよい効果を生むものになっているかを見たいですし、現場の声を集めてサービスに反映していきたいんです。私は現場で働いているわけでもなく接客のプロでもないので、実際に利用した方から多くのフィードバックを得て、よりよいものにしたいと考えています。
ーー矢葺さん、ありがとうございました!