「自分にとって仕事は単なる金稼ぎのツールではなくて、関わる案件すべてが自分の成果物なのかなと思っています。なので、納品できればいいのではなく、生涯をかけてどれだけ良いものを世の中に届けていけるかが、自分の人生が良かったかどうかを判断する軸になるのかなと。だから一つひとつのプロダクトをちゃんと作りたいという思いがあるんです」
学生時代のインターンシップをきっかけに、ユニキャストに入社した田中大揮はこう語ります。当社は、茨城県でクライアントワーク(受託開発)とロボティクス、ITインフラ事業を展開。Webやモバイル、ロボットアプリケーションなどの開発をおこなっています。
入社当時は、人とのコミュニケーションが苦痛で仕方なかったと話す田中。7年がたち、インターンの教育や熱い同僚との出会いを経て、クライアントの目線に立った開発に臨むため積極的に関係性を構築し、社内ではマネジメント職としてメンバーの育成にも携わるようになりました。仕事観が大きく変化した背景には、どのような道のりがあったのでしょうか。
趣味の世界から一歩出て、責任感を持って仕事をする機会に ――今日はありがとうございます。まず田中さんとユニキャストの出会いについて教えてください。創業から数年のタイミングでしたが、どのようなきっかけで知ったのでしょうか。
通っていた大学の授業がきっかけでした。たまたまユニキャストのOBが大学で講師を務められていて、その方の授業を私は受けていました。ある日、与えられた課題を提出したところ、「キモイやつがいる」と内容を評価していただけて(笑)。そこで「こんな会社があるんだけど、興味ない?」と誘われたのが最初です。
当時から私は独学でゲームの開発をしており、卒業後も「今やっていることが仕事になるといいな」と考えていました。趣味の世界から一歩出て、責任感を持って仕事をする良い機会だと考え、インターンとして関わることを決めましたね。
▲新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、取材はオンラインでおこないました
――会社の第一印象はどうでした?
とてもオープンな印象を受けました。エンジニア職に対する私の想像は、個々の社員が区切られた空間で黙々と作業する世界だったんです。でも、ユニキャストはフロアの構造もメンバーの人柄もそれとは真逆だったので、驚いたことを今でも覚えています。
こういった社内の雰囲気は業務にも通じていて、ユニキャストでは、社員の動きを管理するのではなく、ある程度個人の裁量に任せて仕事を進めていくという方針をとっていました。もともと私は、ゲームを思うままに動かせる自由さに惹かれてプログラミングを始めてスキルを高めたかったので、こうしたオープンさはとても魅力的に映りました。
――それから3年間インターンとして働き、そのまま入社しましたよね。他の企業に就職するという選択肢もあったと思いますが、ユニキャストを選んだ理由は何かありますか?
新しい技術も柔軟に取り入れている点、エンジニアの裁量で扱う技術を選べる点の2つが入社の決め手となりました。Webエンジニアはサーバとネット環境さえあればどこでも仕事ができる職種なので、勤務地に対するこだわりはなくて。学びたい技術を学べること、スキルアップできる環境であることを、就職先を選ぶ基準にしていましたね。何社か見学に伺ったなかで、その基準に最もマッチしていたのがユニキャストでした。
とにかく人との会話を避けるような性格だった入社当時 ――社員へと立場が変わり、担当する仕事に変化はありましたか?
そうですね。インターンのころから、基本的に個人でプログラミングしていくという形で仕事をしていたのですが、やがてインターン生の教育を任されるようになりました。
その頃の私は人との会話を極端に避けていて、クライアントとのやりとりも必ずメールを選ぶような人間でした。このあたりは当時を知る同僚からも笑い話にされていて。彼女に言わせると、人と接したくないオーラが体中から出ていたみたいです(笑)。
――こうして話していると、そんな感じがしませんね。
会話って表情から相手の思いを汲み取ったり、間を読んだりするじゃないですか?そういう明確に答えのないやりとりを、合理性のないものだと思っているようなところがあって。当時はすべて無駄に感じていました。質問に対して適切な答えだけを出すプログラムのような存在になりたいと思っていたんです。いま考えると、イタい奴ですよね(笑)。
――コミュニケーション嫌いでは、インターン生の教育も大変だったと想像します。
当時は苦痛でしたね。「自分の業務だけに集中したい」とか「最初から自分でやった方が早い」とか、そんなことばかり考えていました。でも、そんな気持ちとは裏腹に、私のもとには彼らからの質問やコードの修正がひっきりなしに集まってきました。
最初はフラストレーションを抱えていたのですが、1人では回せない案件の規模になってきたのと、任せ方を工夫するうちに自分にも学びがあることに気づきました。インターン生がスムーズに業務を進められないのは、私の要件定義や設計に不十分な箇所があるからだと。
それ以降は彼らに任せることを前提に、自分の担当箇所をしっかり詰めることを心がけました。すると、以前は頼りなかったメンバーが少しずつ成長し、私の指示なしでも動けるようになり、企業としてできることの幅が広がっていった。インターン生の教育を通して、コミュニケーションの大切さや、後輩を育成する喜びを知ることができたんです。
――必要に迫られたからとは言え、苦痛だったことを前向きに取り組んでいくことは、精神的なハードルが高いようにも感じます。考え方を変えるきっかけがあったんでしょうか?
今は退職してしまったのですが、私の1年後に入社した仲間がいまして。彼は文系出身で、当時はプログラミング初心者だったんですが、そこからどっぷりこの世界にハマり、メキメキと上達していったんです。最初は私も彼のことを「後輩」のように扱っていたんですが、成長するにつれて仕事の話を対等にできる「仲間」のような関係になっていって。彼と仕事終わりに居酒屋でエンジニアリングについて熱い話をするのが、当時の楽しみでした。
今振り返ると、彼の成長を間近で感じたことが、考え方を変えるきっかけになっていたと思います。こういうメンバーを増やしていけたら、仕事が楽しくなるだろうなと。メンバーの育成に前向きに取り組めるようになったのはそれからでした。
開発への意識を変えてくれた、あるクライアントの存在 ――この7年の変化の中で、田中さんのクライアントワークに対する意識も変わったように感じています。どのような点を今は大切にされていますか。
そうですね。入社当時はスキルアップにしか興味がなかったのですが、クライアントのビジネスを自分ごととして捉えるようになりました。私たちの仕事の先には、必ずクライアントにとってのユーザーがいます。作ったサービスを通して、クライアントがどのように利益を上げるかまで考えられなければ、本当に価値のあるサービスは作れないはずなんですよね。
単純に依頼されたものを納品すればいい、という考え方もあるかもしれません。しかし、一歩踏み込んで、どのようなアプローチが適切かをヒアリングし、プロとしてユーザーのことまで考えた提案をしなければ、クライアントの信頼獲得はできないと考えています。
――そうした考えにいたった背景には、何かきっかけがあったのでしょうか?
あるクライアント様のアプリケーション開発に携わった経験が大きいですね。このクライアント様の社長は、一代で会社を築き上げたほど強力なリーダーシップのある方で、プロ意識が高く、私たちとのプロジェクトにも強いこだわりを持って臨んでいました。
そのため、私たちにも要件定義から設計、プログラミング、品質担保に至るまで、これまで以上に高いレベルでのアウトプットが求められたんです。この経験を通して、よりクライアントやユーザーの目線に立ってプロダクトを振り返るという習慣が生まれました。
――プロとして仕事に臨むということをより強く意識するようになったんですね。
はい。自社サービスの「企業受付 for Sota」の開発を担当したことも良い経験になりました。開発当初、このサービスはまったく売れなかったんですよね。なぜ社会から求められないものを頑張って作らないといけないのかと、いつも悩みながらプログラミングしていました。そんなとき、ふと「お客様がいることってありがたいことなんだな」と感じたんです。
私たちの仕事は、エンドユーザーと直接つながる仕事ではありません。そのため、エンドユーザーに求められる価値がどのようなものなのか、当時はきちんと整理できていなかったんです。クライアントワークなら、私たちとエンドユーザーの間にはクライアント企業の方たちがいます。彼らはその業務領域のプロであり、エンドユーザの持つ課題感を直に受け止めている存在です。そう考えたとき、より良いサービスを作るには、技術だけでなく、クライアントの持つ知識をお借りすることが必要なんだなと思いました。
受託開発だと、クライアントからの要求を「ひたすらこなしていく」と考えている人もいるかもしれません。でも、そうではない。私たちとクライアント企業の方たちは、価値あるサービスを生み出すためのチームだと気付くことができました。そこからは、クライアント企業のビジネスを深く理解するため、相手の会社に入社するつもりでといったら大げさなんですけど(笑)、そのくらいの気持ちでプロジェクトに臨んでいます。クライアントの助けを借り、良いサービスを作るためにときには私たちから提案もする。そんな関係性を大事にしたいです。
「誰かの力を借りるために、ユニキャストで働いている」 ――ユニキャストでの仕事にやりがいを感じるのはどのようなときですか?
メンバーの成長を感じられたときですね。同じ思いを持って会話のできる仲間が増えること、それが1番の喜びです。最近では1月入社の鈴木さんが、大きく成長しました。入社から1年足らずで彼は、プロジェクトリーダーとして案件を受け持つ段階まで来ています。そういう仲間が生まれて一緒に仕事に取り組めることが、マネジメント職としての大きなやりがいですね。
――メンバーの育成において気をつけていることはありますか?
命令的にならないよう注意しています。やらされる仕事って自分ごととして捉えられませんし、モチベーションも維持できないですよね。成長のためには主体性が大事だと考えているので、やってほしいことだけを指示するのではなく、理由や目的も話すようにしています。
鈴木さんの場合は前職で誠実な働き方をされてきて、社会人としての姿勢が彼の中でできあがっていた。だから、自主性や合理性に基づいたやり方が成長につながったと思います。
ユニキャストはまだまだ発展途上の会社なので、「勉強したい」「学びたい」という気持ちだけでなく、「自分で考え、新たな道を実践していく」ことが求められます。そういう意味では、鈴木さんはユニキャストが求める人物像にぴったりの人材でした。
――今後ユニキャストとして、田中さん個人として取り組んでいきたいことはありますか?
クライアント企業にチームで入り込み、より価値の高いサービスを作り込んでいく。そのためには、これまで以上にクライアントと信頼関係を築いていかなければなりませんし、価値観を共有できる仲間がもっと必要です。ユニキャストの技術力と人材の豊かさをお客様に知っていただくには、一つずつ質の高いプロダクトを積み上げていくほかありません。そういう意味ではこれまでと同様、顧客目線での開発を続けていくだけとも言えますね。
――当社は今もキャリア採用でエンジニアの募集をしています。田中さんとしては今後、どのような方と一緒に働きたいと考えていますか?
エンジニアは、個人で食べていくことも可能な職業です。その中で、なぜ企業に所属するのかと考えたとき、私は「誰かの力を借りるため」という答えにたどり着きました。
1人で対応できない規模の案件には、チームで立ち向かわなければなりません。そのとき、メンバーの価値観や思いがそろっていれば、よりレベルの高い開発ができます。メンバーと協力し、クライアントの課題解決に取り組んでいける方が応募してくれると嬉しいですね。