どうもはじめまして。
3DVisualizationチーフマネージャーの玉那覇(たまなは)です。普段は、建築ビジュアライゼーションをメインとしたクオリティコントロールやチームのマネジメントをしています。
ブログも書いたことがなく、文章苦手な僕が初noteということで、かなり緊張していますが、これまでの経験や建築CGに対する思いをホンネで書いていきますので、どうか温かい目で最後まで読んで頂ければうれしいです。
建築CGとの出会い
僕が初めて建築CGに出会ったのは2004年12月でした。
2004年の春、当時留学していたカナダでインテリアデザイナーを目指していた僕は、バンクーバー市街地にある50社近いインテリアデザイン事務所に、レジュメとポートフォリオを抱え、アポなしで自分を売り込みにいくという、かなりアグレッシブな日々を送っていました。
このような就職活動は、海外ではごく当たり前な事ですが、外国人にとってはかなりハードルが高いアプローチで、当然、門前払いか、例え話を聞いてもらえたとしても、上司まで伝わっていなかったり、合否の連絡すらもらえない場合がほとんどでした。
正直、心折れました。。。
始めた頃はメンタル的にかなりしんどかったんですが、20社超えてきたあたりからは徐々に慣れ、まるでティッシュでも配るかのような感覚で市街地を毎日往復するようになっていました。その努力も空しく結果は惨敗でしたが、、、
振り返ってみると、その頃のカナダの失業率は7.2%と非常に高く、それは日本がリーマンショックの翌年2009年7月に記録した5.5%のピーク時をはるかに上回る数字だったので、現地カナダ人も職を失っている状況の中、外国人なんか雇ってもらえるはずがありませんよね。(と、思うようにします!)
半年近く続けていた就職活動に限界を感じ、帰国することを決意した僕はデザイン会社数社に履歴書を送り、本格的に日本での就職活動をはじめました。
返事をもらえた数社のうち、A社と帰国に合わせて面接をする事になりました。恥ずかしい話、実は面接に行くまで気が付かなかったのですが、その会社は社名に「デザイン」と入っていたものの、「デザインを表現する。」という意味が込められたCG制作会社だったのです。要するに僕の希望する、「意匠デザイン」の職種ではありませんでした。
「デザイン」違いの会社に履歴書を送っていた僕でしたが、そこで見せてもらったCG画は、本物と見間違えるくらいにリアルで、どのように創り出しているのか全く想像もつかないほど綺麗で、鮮やかで、眩しいくらいに感動的だったことを覚えています。
勘違いの応募がすべての始まりですが、CGすら知らない僕がなぜ、あの瞬間
「こんな画を描いてみたい!」
と、思ったのか、、、当時を思い返してもよくわかりません。
ですが、CGで創り出す1枚の画には、それだけのインパクトや心が揺さぶられる何か不思議なチカラがあったのでしょう。
それが僕の建築CGパースとの出会いであり、ビジュアライゼーションに魅了されていった原点とも言えるでしょう。
ゼロ知識からCG制作
迷うことなくそのA社に就職した僕は、ゼロからCGを学び始め、モデリング、テクスチャ制作、ライティング、レンダリング、レタッチのやり方、覚える事は多かったものの、1日も早く先輩たちのような感動的な画を描けるようになるために、とにかく技術を真似る事と丁寧な仕事を心がけることに必死でした。
分譲マンションなど広告用パースを多く手掛けていた時期は、ターゲットに合わせた画作りや、ブランドイメージで多少の表現方法の違いはあるものの、直接見えないお客さんに喜んでもらうために、見応えのある画を演出するためのスキルや様々なテクニックを多く学ばせてもらいました。
不動産販売向けの建築パースのお客様のほとんどは、広告代理店や大手デベロッパーなので、繰り返される修正やダメ出しは毎回悲惨でしたが、納得してもらえる最高の画に仕上げたものを、偶然、電車の中吊り広告で発見したり、不動産・住宅情報誌に掲載されたものを見た時には、これまでの苦労が帳消しになるくらいホントに嬉しいものでした。それは、今も変わりません。
その嬉しさが次の制作意欲と楽しさに変わる。その中毒性とも似たこの感覚が、僕が建築CGにどっぷりとハマっていった理由かもしれません。
ここで少しだけ建築CGの歴史について触れておくと、
入社当時、大先輩の方々が時々手書きで描いているのを見たことがありますが、そもそも、1990年代までの建築パースは手書きが当たり前で、マーカーや色鉛筆で設計者自ら書いていたり、高度なテクニックを必要とするエアブラシなどを使用して制作する場合は、パース屋さんなどに依頼するというものだったようです。
ここ20年くらいでPCのスペックやDCCツール、レンダリング機能は驚くほど進化を遂げて、さらにPhotoshopなどを使用して、より細かい色味や明るさの調整が可能となり、魅力的な画を様々な技法で演出できるようになりました。
また、PCやソフトの性能や拡張性の向上により、パースは手書きからPCで制作するようになったことで、短時間での修正が可能になり、何度も修正を重ねたり、検討のためのパターン制作が容易にできるようになりました。
手書きの頃は、修正とかどうしてたんだろ?毎回消して書き直してた!?って思っちゃいますよね。
テクニカルな部分やレンダリングの大幅な時間短縮によって、建築CGはよりフォトリアルを求め、美しさ、見栄えでプランをよりよく見せるためのプレゼンテーションツールとして最大の武器となっていったのでしょう。
ただ、不動産向けの画となると話は別で、フォトリアルというよりは、広告用としての見栄えや購入者に解りやすい印象をストレートに与える画力が重要なのです。
それはそれでとても必要な技術なのですが、CGを長くやっていると「もっとフォトリアルなものを作りたい!」と、知らず知らずのうちにどこかアーティスト気取りで勘違いしてしまうんですよね。(全員がそうだとは言えませんが)恥ずかしい話、僕はそうでした。
脱アーティスト
A社に6年在籍したのち、2年間フリーランスとして活動していましたが、担当者との打ち合わせに始まり、メールのやり取り、修正の回収、納品に至るまですべてを自ら行っていたので、そういった業務に関しては色々学べた貴重な時間だったことには間違いありません。ですが、当時はまだまだアーティスト気取りが抜けず
「僕がこれでいい」と思って描いた画なんだから、「これでよくない!?」
なんて思っていたので、修正も快く受け入れた事がない結構、厄介なヤツだったんじゃないかと自分でも思います。
その後、現在の積木製作に入社するわけですが、
ここで手がけている業務は、広告のように世の中に出回るような画ではなく、基本設計の段階のプレゼンやプロポーザル用途のいわば、ご依頼主への提案資料や地域住民への説明用といった設計者寄りの建築CGが多く、あまり日の目を見る事のない静止画です。これらは短期間での制作が求められたり、パターン制作が多くなることがよくあります。時間が限られているため制作は毎回大変ですが、一番最初に設計者が可視化するというファーストステップとして非常に重要な画なので、最後まで手を抜くことができません。
そんな責任重大なお仕事を設計者やデザイナーと直接やり取りしながら完成させていくプロセスで、これまでの変なプライドも考えも徐々に変わっていきました。
一番気持ちの変化が大きかったのは、当時一緒に制作していた現在常務の赤崎の何気ないこんな一言でした。
「設計者は、たくさんの命を預かってるんよね」
ハッとさせられました!
これまでたくさんの画を描きながら、人の生死の事なんて、正直一度も考えた事がありませんし、もちろん僕の画で直接誰か死んでしまうという事もありません。
一方、建築設計、施工、監理に携わる方々は、「命」「危険」という言葉と常に隣り合わせです。多くの命を預かっているという責任から、決して大袈裟な表現ではないと思います。そのような中で人々の生活が安全で、より快適になるようなデザインを日々考え、検討し、様々なシュミレーションを行い、大勢の人に喜んでもらえるような設計してくれています。
建物ひとつ建てるのに、たくさんの人の想いや努力が詰まっているのです。
ビジュアライザーとして生きる
そんな大切なプロジェクトの一端を担えているのならば、その建物にかける想いをしっかりと汲み取り、設計者やデザイナーのコンセプトや仕上がりのイメージを忠実に可視化することが僕の役割だ、という事に遅ればせながら気が付きました。
好きなものを好きなように描いて気に入ってもらう!じゃダメなんです!
その気付きは、建築をより理解し、専門的な知識を身に着けようという心構えにも繋がっていきました。
依頼者の想いや思考を視えるカタチで表現する。
デザイナーの想いを伝える画を創りあげることこそが、見る者の心を動かし、その先のお客さんにも感動を与える1枚になる と今は思います。
現在、当社ではVR/ARといった技術を駆使し、様々な安全体感VRトレーニングのコンテンツを制作したり、BIM/CIMを活用した現場にXR技術を取り入れた3次元ビジュアライズで建築支援なども行っています。
これまで培ってきた専門の知識と、見た目のクオリティにこだわり続けてきた建築CGパースが根幹にあったからこそ、チームの形を変えても、様々なビジュアライゼーションを可能としています。その建築CGパースがベースとなり、当社のコンテンツにおけるすべてのCGを制作しているビズチームは、原点であり、最高品質のビジュアライゼーションを担保する重要な役割を担っています。建築CGという大きな枠の中で、僕たちにしかできない視覚化・表現・発想を貪欲に追求していき、今後もより見せ方にこだわり進化し続けたいと思っています。
それが積木製作に求められている建築CGであり、それをカタチにして感動を創り続けていくのがビジュアライザーの役割だと考えています。