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Tajimaのインダストリアルデザイナー職:具体的な仕事内容と経験できること

創業1909年のTJMデザインは、建築用ハンドツール「Tajima」をはじめとして幅広い事業で自社ブランド展開をおこなっているメーカーです。長年にわたり「高品質・高性能・高デザイン」を重視したこだわりのものづくりを続けてきました。
当社のインダストリアルデザイナーは、Tajimaブランドを表現するデザイン性とユーザービリティを向上させる機能性を満たすために日々製品と向き合っています。

今回、私たちはユーザーの負担を軽減する「セフボックス」という新たな製品を開発しました。工具市場を調査する中で、海外を中心にツールボックスと言われる”丈夫で運びやすい”工具箱の人気が高まっていることが判明。国内ではまだ大々的に開発しているメーカーが無かったため、当社が先陣を切るべくセフ付きのツールボックスをつくることにしました。
※セフ:工具同士をワンタッチで楽に着脱させることができるTajima独自に開発した機構

この製品にまつわるエピソードを紹介しながら、インダストリアルデザインの仕事内容と経験できることをお伝えします。

タジマツール事業本部 開発本部 インダストリアルデザイナー 海老原
総合技術高校の工業デザイン科を卒業。在学中にTajima製品の設計図面をトレースするアルバイトをしたことをきっかけにTJMデザインへ入社。設計職として10年以上のキャリアを積んだのち、プロダクトデザイン専門部署を新設するタイミングで指名を受けデザイナーへ転向。以来、約20年にわたって数多くのTajima製品のインダストリアルデザインを担当。

目次

  1. 【具体的な業務内容と経験できること】
  2. 企画から生産のすべてに関われる
  3. ストレスなく働ける環境
  4. ワンチームで進める開発
  5. 自分のデザインがユーザーへ届く

 【具体的な業務内容と経験できること】

■企画から生産のすべてに関われる

 インダストリアルデザイナーの仕事は製品開発においてデザインの提案をおこなうことです。デザイン提案は、企画がまだふわっとしている段階から入る場合と企画がある程度固まってから入る場合があり、今回のセフボックスは後者の流れでした。商品企画者から企画を受け取ったのち、インダストリアルデザイナー自身でイメージを膨らませるためにラフスケッチを描きつつ、商品企画者と具体的な仕様やコンセプトをすり合わせたり開発技術者と筐体や機構について話し合いながら、3DCADや2D描画ソフトでデザイン案を作成していきます。

デザイン案を固めたら、開発技術者が設計図を作成し細かい構造や寸法・パーツの配置など詳細をつめていきます。その際にも開発技術者から「筐体の角を丸くしたらどうか」「パーツの形状は変えられるか」といったデザインに関する相談が入ります。インダストリアルデザイナーは開発技術者と密にやり取りしながら「Tajimaらしい」重厚感を表現しつつ、ボタンひとつのディティールにまでこだわりを持ち、ユーザーにとって使いやすいデザインを提案していきます。

元々取り付け予定のなかった四隅に、本体を保護するゴム材を提案し採用された。Tajima製品の「頑丈さ」がユーザーに伝わるよう、製品の要所要所に「強さ」を象徴するゴツゴツとしたデザインを入れていく。すべては「ユーザーが見たとき、使ったときにどう思うか」という考えをもとに思考を巡らせている。

セフボックスはTajimaではあまり取り扱いのない大型サイズのもので、取っ手や開閉用のボタン、工具をかけるフックなどパーツ数も多ければ、ボックス型、バスケット型、引き出し型といった形状展開数も多く、それぞれの形状やサイズ展開に合わせたデザイン考案・各パーツの微修正などとにかく仕事の量が多い製品でした。3Dプリンターで試作品を作ったのち、見た目や機能性、質感に至るまでをチェック、違和感や不具合があれば修正してまた試作・・・これを納期や予算が許す限り納得いくまで繰り返しました。

インダストリアルデザイナーは常時2~3ジャンルの製品を並行しながら進めています。セフボックスのようなボリュームの大きい案件だとしても、成果を出すには「良いモノをつくる」ことを最優先に、焦らず目の前の仕事と真摯に向き合うこと、トラブル無くきちんと生産できるところまでの責任感を持つことが大切です。

■ストレスなく働ける環境

私たちインダストリアルデザイナーは商品企画者や開発技術者と同じ社屋内で働いているので、スピーディーに打ち合わせをしたりふらっと相談に行ったりなどストレスなくコミュニケーションを取ることが可能です。出来上がってきた試作品や金型の確認も一緒におこないますし、密にやり取りしながら一丸となって製品を開発しています。 

東京本社に設置されている3Dプリンター。使いたい時に堅苦しい申請は不要で気軽に使えるので、開発技術者やインダストリアルデザイナーたちはいつでも思い立ったときに操作し、自分の案をスピーディーに形にしている。

それから当社は基本的に残業は少なくONOFFがしっかりと切り替えられる会社です。退勤後に実務を持ち帰ることは一切なくプライベートと両立しやすい環境になっています。 

ただ私に限って言うと、もはやデザインについて考え続けることが生活の一部になっているので、休日でもよくホームセンターに行きTajima製品をはじめ様々な製品を観察しています。Tajimaのデザインテイストは世の中の流行りというより割と特殊なので、少しは時流のエッセンスを取り入れるなど工夫していかなければ、あまりにも世の中とかけ離れすぎたものを作ることとなり置いていかれてしまいます。デザインするうえでは何がヒントになるか分からないので、新しいものをチェックすることが習慣になっているんです。これはもう、半分自分の趣味ですね。

■ワンチームで進める開発

製品を開発するうえでは、商品企画者や開発技術者と意見がぶつかることも多々あります。形状や構造についてのこともあれば、その機能・デザインはユーザーにとって適切なのか、「Tajimaらしさ」とは何なのかといったコンセプトに関することなど・・・。例えば今回のセフボックスでは企画の初期段階で意見がぶつかりました。開発技術者はコスト面や金型の作りやすさなどから底がすぼまったデザインを提案してきたのですが、これに私が大反対。多少コストが増加しても金型の構造を工夫することでより使い勝手が良く見た目のかっこいいデザインにしようと説得し、ユーザーにとって一番良いものが何かを議論したうえで変更してもらいました。設計をやり直したことで当初の発売計画よりスケジュールが押してしまったものの、よりクオリティの高い仕上がりとなりました。

特定の部署が強い決定権を持って開発を進める企業もありますが、当社では様々な社員が意見を交わすことでより良いものを生み出すことを良しとしています。

初期(左)と最終(右)のデザイン案。金型の性質上、セオリー通りの型で作成した場合コストはおさえられるものの箱の下部に向かって勾配がつくことは避けられない。機能面・見た目ともに質を高めるため、金型の構造を試行錯誤し何度も開発技術者と話し合いを重ねた

■自分のデザインがユーザーへ届く

開発中の製品についてフィードバックを貰うために建築現場へ訪問しユーザ
ーの反応を見ることがあります。「こんな製品を作ろうと思っているのですが」と伝えたのに対して「いいね!」と言ってもらえたときが、1番やる気が出る瞬間です。発売後に売れ行きが良いときはそれだけユーザーが喜んでいるということだと思いますので、一層やりがいを感じます。
自分のデザインしたものが製品となり、それが販売されて店頭に並び、購入したユーザーが喜んでくれる。それが私は一番嬉しいですね。

様々な製品の開発に関わってきたことで、見た目が良く使いやすいデザインを生み出すスキルはかなりレベルアップできたと思います。今後は、ユーザーが商品を手に取るまでの動線や販売店での陳列方法など、いわゆる販売戦略も意識しながらデザインに落とし込めるようにしていきたいです。

関連サイト
株式会社TJMデザイン
Tajima(ブランドサイト

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