10月04日(木)にtechain主催のイベントを開催しました。
スピーカーには、ブロックチェーン関連の法律研究や中国の一次情報のリサーチなどを専門としているMeika Miyamoto氏とBitBearsの鈴木皓大氏にご登壇いただきました。
今回は「~ETHEREUM INDUSTRY SUMMIT~報告会」と称して、9/8に香港で開催されたETHISの報告会を開催しました。
報告会は、
①「Polymath Networkによるセキュリティトークンの概要と規制、eWASM最新動向」-Meika Miyamoto氏
②「Ethereumコアリサーチャーが語るスケーラビリティ解決策の最新動向、Casper最新動向」-鈴木皓大氏
③Q&A
④懇親会
という流れで進行しました。
以下、上記の4つを時系列でまとめていきます。
ETHISとは?
ETHISとは、中国のEthereumコミュニティの一つであるLinkTimeが主催した大規模イベントです。
9/8に香港で開催され、日本からは宮本氏や鈴木氏の他に約10名程度が参加されていました。
当日は、Ethereumコアリサーチャーによるスケーリングに関する現状の他、Polymath(ポリマス)によるセキュリティトークンの最新動向、さらにVitalikからは今後のロードマップなどが発表されました。
Ethereum Industry Summit STOの実現とeWASM
まずは、宮本氏よりSTOを中心としたセキュリティトークンとeWASMに関する報告です。
今回もお二人よりスライド共有していただいたので、connpassのtechiainグループにて共有しております。※画像は各スライドからそのまま抜粋
報告内容に入る前にセキュリティトークンの概要やPolymath、STO(Security Token Offering)についての説明です。
セキュリティトークンとは?
Security:発行者に対して権利を有していること
→株、社債のような法的に金融商品とされているものの裏付けをもつトークン
Polymatとは?
PolymathはSTOを行うためのプラットフォームで、「ST-20 STANDARD」という独自のトークン規格を整備しています。
Ethereumのように、Polymath上でトークンを発行することができるだけでなく、KYC(本人確認)サービスも提供しているため、ICOと比べて規制の厳しいSTOを全面的にサポートする機能を提供しています。
※宮本氏のスライドより
STOとは?
ICOとは異なり、事前に規制当局(SEC)に対して各プロジェクトが資金調達の許可を求める
STOにより発行するトークンは全て現実資産と結びついているため、投資家の保護に資する
宮本氏によると、セキュリティトークンによって株や社債、債権のような金融商品を全てトークン化(トークナイズといいます)することができ、より容易に早く、安く取引を行うことができるようになるといいます。
一方で、STOは規制当局の定めた規定をクリアできる法人・個人のみ実施することができるため、排他的かつ分散性に欠ける、と宮本氏は課題をあげていました。
また、ICOは国境関係なくグローバルで行うことができますが、STOの場合は実施する各国のレギュレーションに則る必要があるため、実施コストが高騰してしまう点も課題となっています。
eWASM- 次世代型EVM
続いてeWASMに関する内容です。
eWASMとは?
eWASMとは、既存のEVM(Ethereum Virtual Machine)にWebAssembly(WASM)の仕組みを組み込んだ、新しい仮想マシンです。
WebAssemblyを組み込むことで、スマートコントラクトの処理速度を向上させつつ開発に汎用性を生み出すことができます。
特に開発に汎用性を生み出す部分が非常に重要で、既存のEVMだけでは、あくまでEthereumコミュニティから外に出ていくことができませんが、WASMにはGoogleやMozillaといったTechGiantによる開発コミュニティが存在しています。
さらに、コントラクト開発にCやgo、rustといった言語を使用することができるようになります。
eWASMの現状
eWASMは現在、既にプライベートなテストネットでの動作確認を完了しており、10/30~11/2にかけて開催されるEthereumデベロッパーの祭典devcon4に合わせてパブリックなテストネットにリリース予定とのことです。
※宮本氏のスライドより
Casper & Sharding
続いて、鈴木氏よりEthereumのスケーリングに関する最新動向の報告です。
今回はPlasmaに関する内容はあまり目立ったものがなく、鈴木氏からはCasperとShardingについて触れていただきました。
Casperとは?
Ethereumは、4段階ハードフォークの最後に予定しているSerenityでコンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに移行しようとしています。このPoSのことをEthereum独自の名称でCasperと呼んでいます。
Shardingとは?
Shardingは、トランザクションの検証作業をいくつかのノードグループに分割し、かつ並列処理にすることで効率性を高める仕組みです。
要するに、Shardingは従来よりも少ないノードでトランザクションを処理することになるため、悪意のあるノードに攻撃されやすくなります。
イーサリアムは現時点ではPoWを採用しているため、このままShardingを導入すると、各shard(Sharding導入後にはブロック内に複数の状態(shard)が存在することになります)でハッシュパワーが異なるという状況が発生してしまい、特定のshardに対して容易に攻撃することができてしまいます。
この問題はPoSであれば解決することができるため、ShardingはPoSすなわちCasperが完了してから導入されることになります。
(具体的には、Validatorを各shardの規模に合わせて最適に割り当てるアルゴリズムを導入します。PoWの場合は、マイナーが自身でどのshardを検証するか決めることができてしまいますが、PoSであればアルゴリズムに従うしかないため、恣意性を排除することができるということです。)
Shasper最新動向
ShardingがCasperを前提とすることから、合わせてShasperと呼ばれるようになりました。
※鈴木氏のスライドより
ETHISでは、先述した"Validatorを各shardの規模に合わせて最適に割り当てるアルゴリズム"に関する説明がありました。
アルゴリズムとはいえ、いかにランダム性(恣意性を排除)を実現するかが重要であり、そのためにRANDAO(Random Decentralized Autonomous Organization)という新たな構想が上がっているとのことでした。
※鈴木氏のスライドより
最後に、10/8にVitalikがアナウンスしたEthereumのスケーリングソリューション最新情報で締め括ります。
①Shasperの仕様は大まかだが完成し、現在は改善フェーズに入っている
②全ての仕様のうち、4つ以上を実装中である
③Plasmaは、多くの仕様を実装中である
④ZK-SNARK(プライバシー保護の仕組み)を元にしたセカンドレイヤーのスケーリングソリューションを実装中である
それでは、また次回のイベントでお会いしましょう。
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