『YAMA HACK』では様々なバックグラウンドを持つ編集メンバーが活躍中です。しかし、ただ登山が好きであればいいという訳ではありません。ユーザーによりよい情報を届けるために、どのようなスキルを持った人材を求めているのか。編集長に聞きました。
大迫 倫太郎 『YAMA HACK』3代目編集長
健康食品企業にて販促企画・広告出稿(テレビ、新聞、チラシ)、DMなどのマーケティング全般を担当。2018年にスペースキーに入社。2020年1月に3代目編集長に就任。登山とプロレス観戦が趣味。
編集長大迫が語る『YAMA HACK』とは
-本日は編集長として、『YAMA HACK』について思っていることを洗いざらい話してください。まずは『YAMA HACK』について、編集長大迫の言葉でおしえてもらえますか?
『YAMA HACK』はコンテンツを使って、登山を愉しむ人を増やすことを目的に運営しています。
具体的には、
①既に登山をしている『YAMA HACK』読者にコンテンツを届ける
②コンテンツによって、読者がいろいろな愉しみ方を見つけたり、知識がアップして登山をより好きになる
③そして、登山をしたことがない自分の友達や家族を誘って登山に行く
という循環を生み出すための運営をしています。
そのために、登山のもつ《さまざまな愉しみ方》と《厳しい面》の2つの軸で情報発信を行っています。
《さまざまな愉しみ方》を伝えるということは、山ごはんでもピークハントでも縦走でも低山ハイクでも、各々が楽しみたいスタイルが肯定されて愉しめる環境をつくりたい。そうすることで、いろいろな人が登山をもっと自由に愉しめるようになるのではと考えています。
-そもそも、『YAMA HACK』が登山を愉しむ人を増やすのはなぜでしょう?
純粋に登山は愉しいからです。山登りを通じて自分たちが愉しいと感じたことを、他の人にも体験してもらいたいというのがひとつ。もうひとつは、登山をする人が増えることで、山が好きな人たちが好きなことだけで生活していける環境をもっと拡げたいという狙いもあります。現状まだそこが十分でない部分があると思います。登山を愉しむ人が増えて、ずっと関われるような世界が実現できれば、ユーザーも業界もどちらもハッピーになるのではないかと考えています。
-《さまざまな愉しみ方》を伝えたいと考えたきっかけは?
盲目的に「登山はこうあるべきだ」という“何か”を信じている雰囲気を感じたからです。もちろん昔から培われてきた技術や歴史が素晴らしいことは前提ですが、登山という言葉が意味するものってもっと広くていいんじゃないかな?と思ったんです。
「登山者はこうあるべきだ」と主張してしまうと、どうしても“見えない圧力”を感じてしまいます。それが初心者にとっては高いハードルとなってしまう。究極、何も準備しないで近所の裏山に遊びにいくレベルでも山に登っているから登山と言えてしまいます。実態を見ずに自分の持っている「登山」という言葉のイメージだけで考えてしまっているのかなと。
ただ、「登山はこうあるべき」と声をあげている人も悪意があるわけではありません。相手の安全を思うがゆえ、コミュニケーションのズレが発生していると思います。これってお互いの価値観の違いも原因だと思うので、『YAMA HACK』としては《さまざまな愉しみ方》を伝えていきたいと思っています。
-その考えには共感ですね。ただ、登山人口が増えすぎてしまうことで発生する問題もありますが、そこはどのように考えていますか?
実際に混雑問題などは発生しているので、気持ちはわかります。でも例えば、登山者がいろいろなところに分散するようになったらどうでしょうか?
地方の山の魅力を伝えることで、人の行動を促す方法もあると思います。
気付いていないことに、いかに気付いてもらうかが大事だと思っていて、そのスイッチのような存在になりたいですね。僕は昔中国地方に住んでたんですけど、1日10人くらいしかすれ違わない山もたくさんありましたよ(笑)。魅力があるけど、知られていない山はたくさんありますから。
-たしかに、すべての山が混雑しているわけではないですからね。
制限をかけることも大事だけど、本当にそれだけでいいのか。制限をかける以外にも、もっと他の解決方法がないかを考えたいです。100人の人がひとつの山に行くより、1000人が各地の山に行くことの方が市場にとってはいいはず。その方法をみんなで考えようよと。
-ラテラルシンキングに近いですね。登山業界に対する『YAMA HACK』の考えもこれに近いですか?(※ラテラルシンキングとは、ロジカルシンキングの対極にある考えであり、水平思考とも言われています。)
ラテラルなんとかを意識したわけではないですが(笑)。いつも「一番やりたいことは何か」を考えるようにしていますね。最初は条件ベースでは考えず目的に対し、手段をルール無用でいろいろ考え、その中で全部出し切って、現実的にできそうかどうかを判断していきます。ルールに合わせて一番ベストなものを考える。場合によってはルールを変えることも含め、考えていきたいですね。
『YAMA HACK』の強み・課題感
-目指す世界観に対して、どのような動きをしているかおしえてください。
アウトドアの楽しさをまだ知らない人もいるので、その人たちにも届くように。自然に興味を持ってもらえるようにコンテンツを作り、情報発信をしています。また、月間アクティブユーザー数を「今まで触れたことがない人が触れる」の評価軸の1つにしています。
-“アウトドアの楽しさをまだ知らない人”をターゲットにする理由は?
ひとつめは、登山人口を増やすため。ふたつめは、現代の登山のイメージをその人たちとつくるためです。まだ知らない人たちが登山をやってみて、「難しそうだと思っていたけど、これなら愉しそう!」という新たな魅力を発信することで、登山にある形骸化してしまっている固定概念を内側から変えていきたいなと。現代の登山というものが表すさまざまな登山スタイルを知ってもらうことで新しい人が増え、業界も時代にあったカタチになっていく流れが起きてほしいと考えています。
-新たな価値観を、これから始めたいという人たちとつくっていくのも大事な活動ですね。
アクティブユーザー数についても、評価基準のひとつとして置いていますが、測定できる数値としての指標であって、これがすべてとは思っていません。仮にどれだけアクティブユーザー数が増えても、登山の愉しさを全然伝えていないメディアであれば、価値がないと。
また、ここで情報発信のふたつめの軸《厳しい面》が関わってきます。《厳しい面》とはつまり、安全登山に関すること。安全登山を伝える上で、下記を考えました。
新しい人は安全に対する意識や興味があまりない
↓
だから、安全登山の情報は読まない
↓
じゃあ最初から自然と身につけられるような状況をつくればいいんじゃない?
↓
そのために、安全の記事と思っていないけど、しらずしらずのうちにその知識が身についているみたいなコンテンツを作ろう!
安全意識がまだない人に「安全は大切だから」の正論一辺倒では伝わらないので、別の切り口でメリットを感じさせることが大切。安全登山に関する知識を伝えるためにも、まだ登山の愉しさを知らない人をターゲットにすることが有効だと考えています。
-なるほど。そのような動きの中で『YAMA HACK』の強みって何でしょう?
そうですね、いくつかありますが……。まずメディアの場合、マネタイズをどうするかという部分を考えないといけないですが、『YAMA HACK』はある程度そこは基盤ができているフェーズ。そのため、自分たちがやりたいことにチャレンジできる環境があるのは強みではないでしょうか。
-やりたいことにチャレンジした具体例はありますか?
『POLE POLE』がそうです。『POLE POLE』は登山女子に特化した特設ページなのですが、ユーザーの課題解決を最優先にチャレンジしたプロジェクトでした。ユーザーを広げる動きももちろん重要なのですが、実際に山へ行っているユーザーの課題を解決しファン化を促す(=深堀りする)ことも同じくらい重要。また、アウトドア全般に言えることですが、広げるには今やっている人が誘うという手段がやはり強い。そのためにも、今登山をしている人が継続的に愉しめる状態をつくりたいと考えたことがきっかけとなっています。
一見遠回りに思えますが、利益等も含めて先を見越したチャレンジができる。その基盤ができているのは、魅力的なフェーズだと思います。
-たしかに。余裕がなければチャレンジできないですからね。
メディアで最もやってはいけないことがあって、それは「メディアを見てくれる人たちに、情報を発信できなくなること」。これは、僕の前任である2代目編集長が言っていた言葉。読者が求めていることは「自分にとって有益な情報」。それを届けられなくなることが一番の裏切りと考えています。
その点で、自分達の収益基盤をつくっていることは非常に重要です『YAMA HACK』はそのフェーズは越えてある程度の安定性は見えてきました。長い目で見たチャレンジができる環境があるのは『YAMA HACK』の魅力であり強みです。
-なるほど。そのほかにもありますか?
少しずつ業界で協力してくださる人が増えているので、いろいろな人を巻き込んだ動きが取れることもおもしろいかと思います。『YAMA HACK』と一緒にやるメリットが徐々に伝わってきて、仲間が増えてきたという感覚がありますね。
具体的には下記の記事などです。
これは「自社ブランド以外」のメーカーや道具をアピールするという、メーカーサイドからの信頼があるからこそ作れる記事だと思っています。自分たちと同じ思いの方が社外にいて一緒にチャレンジしてくれるというのは本当にありがたいことです。結果、ユーザーにも伝わり、ユーザーからの信頼にもつながるという好循環につながっているのではと。
この記事は、検証記事を見たメーカーさんから「開発者インタビューをやりませんか?」との依頼からスタート。他のどの媒体にも出していない情報を『YAMA HACK』で話してくれました。有益なコンテンツを作る。単純なことですが、難しいことの積み重ねが信頼につながったのかなと思います。
-メーカーさん側からそういった働きかけがあるのは、メディアとしての価値が表れている証拠ですね。
他にも、コンテンツ企画やWebマーケティングについて学び実践できる場があったり、やりたいことがあれば基本的にはGOが出る環境も魅力的なのではと考えています。だたし、後者に関しては単に自分がやりたいのではなく、ビジョンに沿っているか、『YAMA HACK』として実現したいことに紐ついているか、やる意味は本当にあるのか、は満たしている必要はあります。
-「やる意味が本当にあるのか」については、やってみることに価値があると考えれば何でもOKとなってしまいそうですが。
編集部的/会社的見解はあっているか、整合性がとれているか、『YAMA HACK』として本当にやる意味はあるのか、それらを踏まえて最終的に判断しています。
『POLE POLE』を例にして説明すると、
NG例:ファッション記事をやりたい。
OK例:登山でもファッションを楽しむという価値観を定着させたい。ファッションから登山に興味を持ってもらう、など。
のように考えて提案できるといいですね。
-そこまで見通して、周りを納得させることも大事なんですね。逆に課題と感じていることは何でしょうか。
新メディアの立ち上げなどによる人事異動で人手が足りておらず、やりたいこととやらねばならぬことに時間を使えていないことが現状の最も大きな課題です。SNSなどの運用分析をしたり、過去の記事の情報や内容の精度をあげたり、安全登山とかもっといろいろな種類の記事を常に動かせる状態にしたい。目の前に山積している課題に着手できていないため、とてももやもやしています。
また、編集部内の登山レベルやスタイルが少し偏ってきたように感じるので、そのバランスは保ちたいですね。いろいろな登山スタイルを肯定するという考えなので、それぞれを受け入れながら仕事をすることが大切だと考えています。
『YAMA HACK』新メンバーに求めるもの
-では最後に、どのような人と一緒に働きたいですか?
まずは会社のビジョンに共感を持ってくれる人です。そこを目指して仕事をするので、そこに共感いただけないと多分楽しくないかと。共感するのはもちろんですが、何のためにやるか、どうやるかという部分でとても大事になってきます。
働き方で言うと「言われたからやります」という受け身タイプではなく、ビジョンを達成するために自分なりの考えを持って動ける人がいいですね。そういう考えがあるからこそ、何を解決すべきか?などを考えて行動できる。指示がないと動けないと、正直難しいと思います。また、困難もポジティブに捉えて、ぐいぐいと進んでいける推進力にも期待したいですね。
『YAMA HACK』ではチャレンジができる基盤があるので、「自分がやりたい!」という熱量は重要です。主観の熱量ももちろん大切ですが、編集者としてはそれを客観的に見て読者だったらどう思うかを冷静に考えられるといいですね。
いろいろ言いましたが、やはり登山やアウトドアが好きな人がいい!それだけでは難しいですが、逆にそこが原動力に。この原動力があれば、これまで挙げた3つの要素も自然と付いてくるのではないかと思います。
※スペースキーのメディア部門が大事にしていることはこちら!
-なるほど、どれも欠かせないですね。ではこれから『YAMA HACK』で働く人は、どのようなメリットを得られると考えていますか?
2つあると思っていて、「WEBメディアに関わる仕事が幅広くできること」と「好きな登山に仕事で関われること」だと思います。
1つ目は、記事の企画を考えるところからそれをどうやって届けるか。また、企画の振り返りを行なう環境があるのでノウハウを蓄積していけます。
特に、オーガニックにおいては社内の専門メンバーと密にコミュニケーションを取って仕事ができるので、最新の考え方も身につけることができます。
考えるだけでなく、それを実践できる環境があるのでPDCAをガンガン回して知見を蓄積してほしいですね。
ふたつめは、登山に関わるので自ずと登山知識はついていきます。専門家から直接情報を教えてもらうこともできるので、どんどん登山の愉しみ方も広がってくる。入社前よりも確実に登山が愉しくなったと思います。
-編集者として、Webのスキルが高められるイメージがつきました。より多くの人に、『YAMA HACK』の魅力が伝わるといいですね。今日はありがとうございました!
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