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【インタビュー#12】滑りやすい月面も、衛星の軌道も。仮想空間であらゆるものを再現したい | 矢田 裕紀さん

みなさん、こんにちは。スペースデータ採用担当です。

スペースデータで一緒に働くメンバーが、どんな経験を持ち、日々どのような仕事に取り組んでいるのか、その一端をお伝えするために、社員インタビューや対談インタビューをお届けしています。

本日は、宇宙デジタルツイン開発の統括として、メンバー間の調整などプロジェクトマネジメントだけでなく、自らもプレーヤーとして、仮想空間上におけるビジュアルと物理情報の構築まで手がけている矢田裕紀さんのインタビューです。

JAXAで月面宇宙ステーションの生命維持装置を開発されている矢田さんに、これまでの経歴やスペースデータで成し遂げたいビジョンなどについて伺いました。


【プロフィール】
宇宙デジタルツイン開発リード
矢田 裕紀(やだ ひろのり)さん
大学卒業後2007年にキヤノン株式会社に入社。ディスプレイ事業部にて機械部品設計 、空調シミュレーション 、製品の海外生産体制の確立やその他関連技術の開発に従事。2021年より宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて、Artemis計画の一環として整備が進む月周回居住拠点(Gateway)プロジェクトにて、宇宙環境の生命維持装置(ECLS)の開発に従事し、開発マネジメント及び海外機関との技術調整を主導。
合わせて、2022年よりThe sand boxのクリエーター活動を行い、UEFNを用いたFortniteマップを制作、受託。2024年に当社に参画し、宇宙デジタルツインの開発を統括。


プレイングマネージャーとして第一線に立つ“統括”。

── 本日はよろしくお願いします。早速ですが自己紹介をお願いいたします。

矢田裕紀と申します。スペースデータでは、宇宙デジタルツイン開発の統括を行っています。

── 統括とは、具体的に日々どのような業務を担当されているんですか?

今、急激に人が増えてきてやることが増えているので、技術調整などマネジメント業務と、並行してデジタルツインの構築も担当しています。
月に一人くらいのペースで増えている気がしますね。

── 『デジタルツインの構築』とは、具体的にどんな作業が発生するんですか?

契約周りは坂本さんたちが担当してくれているんですけど、私は技術的な中身の部分を担当しています。たとえば、あるものを作り上げる時に、「これはAという技術で実現して、あれはBという技術を用いよう」と人も含めて割り振を考えて実現させるて実現させることがメインですね。私自身の作業もその中に組み込んでいます(笑)。

── 矢田さんも実際に手を動かすことがあるんですか?

はい。技術的な話になるんですけど、ISSデジタルツインの気流モデルの構築を元さん(石川さん)チームのメンバーと行いました。ISS(国際宇宙ステーション)内は重力がないので、外からモノの位置に対して影響を及ぼすのが、ISS内のエアコンの風になるんですよ。

ISS内にあるモノは、エアコンの風によってゆっくり動くんですね。その現象をデジタルツインに盛り込む作業を担当していました。


── 普段は他のメンバーと連携してプロジェクトを進められているんですか?

そうですね。ちょうど今はデジタルツインの中でロボットを動かそうとしているんですけど、そこをどうやって入れ込むか?を、ゲンさん(石川さん)・池田さん・クリスさん・加藤さんたちと連携して進めています。

池田さんと加藤さんはロボットそのものを作っているんですけど、それを宇宙に持って行く前に、私たちが作ったデジタルツインで実験をして、問題がないことを確認してから宇宙で動かしたいと考えています。
つまり、私たちが作ったISSの中で、仮想空間上にロボットを配置して、現実と同じように動かして、まず仮想空間上で検証する……。今は、実物のロボットをどうやって仮想空間上で再現するか?を詰めているところです。


── ちなみに、そのロボットとは具体的にどんなもので、この検証はどんな目的で行われているんですか?

池田さんが作っているロボットは、形はInt-Ball(JAXAが開発したロボット)に似ているのですが、マニピュレーターといって、モノを掴む機能などが付いています。

元々Int-Ballには、宇宙飛行士を撮影する機能が付いているんですけど、その昔、元々の想定通りに動かなかったことがあります。そういった状況を避けるために、デジタルツイン上でシミュレーション環境を構築して、開発したものが思った通りに動くのかを事前に確認することに取り組んでいます。

それが実現できたら次のステップとして、指定の場所に移動できるか?モノを掴んだ時に(ロボット自身が)バランスを崩さないとか?などを確認するデジタルツイン環境を構築していく予定です。

── マニピュレーターには、宇宙飛行士のサポートを行う機能が搭載される、という認識で合っていますか?

そうですね。宇宙飛行士はすごく時間が限られているので、時間的なコストが高いんですよ。宇宙空間で実験するときの準備も、少しでもロボットが担えたら良いなと思っています。


── ありがとうございます。石川さんが担当している業務との違いを教えてもらえますか?

ゲンさん(石川さん)は『Unreal Engine』というツールを使ってビジュアライゼーションを担当しているんですけど、私は主に『Unreal Engine』や『Isaac Sim』というツールを使って「物理現象をどう入れ込むか?」という部分を担当しました……。先ほどの例を挙げるなら、「風の影響をどう入れ込むか?」「そもそも、風はどれくらいの影響があるのか?」などを計算しています。

── なるほど。統括という肩書から、マネジメント業務が中心かと思ったら、決してそうではないんですね。

はい。人が沢山いればマネジメントに専念できるかもしれないですけど、現在はそういうわけにもいかないので、自分で動いているところはありますね(笑)



JAXAで月面宇宙ステーションの生命維持装置を開発。

── スペースデータにジョインされる前はどんなお仕事をされていたんですか?

元々、キヤノン株式会社で半導体関係の仕事をしていました。機械設計とかモノの設計とか、あとは温度制御とか……シミュレーションもやっていましたし、マネジメントを含めて研究開発も経験しました。その後、JAXAに転職して、『Gateway』という月面宇宙ステーション内における生命維持装置の開発を担当しています。

あとは、趣味といいますか、趣味が仕事になったといいますか、メタバースも作っていますね。スペースデータには、2023年の夏頃から参画させてもらいました。

── 生命維持装置とは、具体的にどんなものなんでしょうか?

酸素を供給して二酸化炭素を除去する、空気を整える装置ですね。宇宙空間は重力がないので、何か起きないと気体が動かないんですよね。つまり、宇宙飛行士も動かないと、そのまま(自分で吐いた)二酸化炭素を吸って苦しくなってしまうんですよ。なので、強制的に換気をしてあげる必要があります。酸素を供給し二酸化炭素を除去しつつ、強制的に空気を回してあげる機械が、Gatewayにおける生命維持装置です。

酸素供給と二酸化炭素除去にはいくつか段階と方法があるんですけど、目指しているのは【二酸化炭素を分解・結合などして酸素に戻す】形になります。この段階までいけば、理論上は酸素の供給が宇宙船内で完結するので、地上から酸素を持っていく必要がなくなります。今の技術が発展すれば、ゆくゆくは酸素の完全循環が実現されることになります。



人類の可能性をテクノロジーで強引にこじ開けたい。

── JAXAにはどのような経緯でジョインされたんですか?

キヤノンで大きなプロジェクトが終わって一区切りしたことが大きかったですかね。あとは、ずっと精密機械を担当していたので、「もっと大きいことができたら面白そう」と思っていました。ちょうどその時に、たまたまJAXAの採用情報を見つけたんですよ(笑)。幼少期の頃から宇宙が好きだった、というのもあるんですけど。

── とはいえ、『生命維持装置の開発』は、一般の方ではなかなか辿り着けない仕事だと思います。何か矢田さんを突き動かす原動力みたいなものがあるのでしょうか?

技術を使って、新しいことをやりたい・無理なことを可能にしたいという想いがあるのかもしれないですね。キヤノン時代も、0.0001mmレベルの精密な仕事をしていたので。ちょっとマニアックというか、普通の生活では必要ないというか。技術で強引にねじ伏せるというか、人類の可能性をテクノロジーで強引にこじ開けるというか(笑)、フロンティア・スピリットのある仕事だと思っています。そういう括りでは、宇宙も一緒なのかなという気がちょっとしていて。そういう思考が好きだし、そういう人たちと一緒に挑戦していくのが好きですね。

── スペースデータの印象はいかがですか?

スペースデータは、私から見ると本当に尖ってるように思います(笑)。スペースデータが目指している『宇宙の民主化』は、宇宙業界にいると、新しい企業がなかなか入ってこれないということを実感します。宇宙機に採用されるために実績は必要なんですけど、実績を積むためにはそもそも採用されないといけないので……その時点で結構矛盾してるんですよ。

そう考えた時に、スペースデータがやってることって、宇宙業界そのものを変える可能性を秘めていると思っていて。それを見たいし、力になりたいって思ったんですよね。「実績をデジタルツイン上で積むことができれば、初めて参入する企業にとってハードルが低くなる」という宇宙業界の新しい考え方を実現したいと感じました。

宇宙業界とメタバースって、もともと私の中で離れているものだと思っていたんですけど、スペースデータでそれが繋がったような気がしていています。

── どのようなきっかけで【宇宙×メタバース】が繋がったんですか?

採用面談で佐藤さんとお話させていただいた時に、繋がったように感じましたね。基本的にはスペースデータのコンセプトを詳しく話してもらったり、佐藤さんの想いを聞かせてもらったりしました。
その時に面白いなと思ったのが、『宇宙をインターネットのように』というモノの見方をされていたことです。元々ハードウェアのキャリアを積んできた私からは、まったく思いもよらなかった非常に面白い視点だなと。私がこれまでやっていた宇宙と仮想空間(メタバース)は、組み合わせることで、宇宙産業を変える可能性があると感じましたね。


物理情報まで仮想空間上に再現したい。

── スペースデータにおける活動を通じて成し遂げたいことはありますか?

宇宙空間そのものをデジタル空間上で再現したいですね。そもそもスペースデータがやろうとしていることなのかもしれないですが、そこは私も共感しています。

具体的には、物理現象も再現したいんですよね。様々な産業で、それぞれの専門家がいて、物理現象のシミュレーションが存在するんですよ。ただそれはある特定の現象に注目して行われています。一方で宇宙を舞台にしたゲームとか、映画とかは映像美や迫力をいかに伝えるかということに注力しています。物理現象も再現しつつ、見た目の迫力や映像美も突き詰めた、上記の2つが一緒になったものって今まで世の中にないので、それを最終的にはやっぱり作りたいんですよね。

たとえば、月の表面って滑るんですよ。月面を走るローバーの開発でシミュレーションを行なう際に、砂が舞う様子や、表面を滑る状況を再現したいですね。見た目上の月だけじゃなくて、月面で起こる物理現象を一緒に再現する技術は、まだ世の中にないので。

また、月や火星もそうですが、人工衛星軌道にも興味があります。ISS含め人工衛星などをデジタルツイン上で再現し、人工衛星の開発や検討ができる環境を作りたいんですよね。

加えて、これらの宇宙デジタルツインをゲームなどを始めとしたエンタメ領域で活用してもらうことも視野に入れて、開発を進めたいと思っています


── ありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

スペースデータはメンバー個々人の力がめちゃくちゃすごいので、このメンバーだからこそ作れるものがある気がしています。兵頭さん、ゲンさん、加藤さん……技術的に優れた人たちが集まっていることはもちろん、薮下さんなどロビー活動で色々な企業や団体と結びつけている方が集まっている組織です。

良い意味で技術的に尖っている人で、世界レベルの仕事をやりたい人がいたら、スペースデータできっと面白い世界が見えるような気がします。

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↓加藤さんのインタビュー記事

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最後までお読みいただきありがとうございました!次回のインタビューもぜひ楽しみにお待ちください。

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「宇宙をインターネットのように身近に。」 スペースデータは、衛星データとAIを使って地球や宇宙の環境をデジタルで再現する「デジタルツイン」と、宇宙ロボットや宇宙ステーション用のOS(オペレーティングシステム)の開発に取り組んでおります。具体的には、衛星データとAIを使って地球をデジタルで再現する技術、月面や国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙環境をデジタルで再現する技術、汎用的な宇宙ロボットのソフトウェア、次世代の宇宙ステーションのソフトウェアなどの開発に取り組んでいます。 宇宙と地球をつなぐ「スペース・トランスフォーメーション」を推進することで、誰もが宇宙開発に参入でき、宇宙を活用できる世界を目指しています。また、JAXA・政府・国際機関等と連携し、宇宙技術を通じて持続可能な社会をつくる活動にも積極的に取り組んでいます。
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