スカイマティクスが提供するドローン測量・現地管理DXクラウドサービス『くみき』は、2017年のリリース以来、様々な場面でより利用しやすいツールへと進化を続けています。
進化の背景にあるのは、お客様からのご要望になんとしても応えたいというメンバーの熱意です。2022年6月にリリースされた「GCPインポート機能」は、まさにその熱意が形になった事例といえるでしょう。リリース後には「この機能を待っていた!」とお客様からの喜びの声が次々に届きました。
今回は、この新機能開発プロジェクト秘話をお届けします。『くみき』のサービス開発・提供に携わる4名のメンバーに、機能追加でこだわった部分や、どのように協力していったのかを詳しく聞きました。
プロフィール
日笠 和人/Kazuto Higasaインダストリー事業グループ・フィールドセールスマネージャー。測量・ICT建機関連企業で16年勤務、測量士補の資格も保有。現場経験を活かし『くみき』導入検討中のお客様への提案活動を行いつつ、建設業界向けの機能追加検討にも積極的に携わる。2019年9月入社。木場 悠太/Yuta Kibaカスタマーサクセスグループ・CSチームリーダー。アパレル業界でキャリアを重ねた後、ITメガベンチャーでCS組織立ち上げを経験。現在は新規ユーザーのオンボーディングから課題解決、ユーザーヒアリングの取りまとめまでを担いながら、マーケティング担当も兼務。2021年8月入社。藤田 裕司/Yuji FujitaR&Dグループ。大学院の土木研究科を修了し、大手通信事業会社を経てシステム開発会社へ転職。シンガポールの現地法人設立に携わり、在籍中に2019年カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の研究員として渡米も経験。現在は、主に画像処理・三次元計算などの要素技術の開発と実用化に向けた取り組みに従事。2021年3月入社。尾川 慎介 /Shinsuke Ogawaプロダクト開発グループ。前職はシミュレーションソフトウェアの提供企業にて、受託開発をメインに担当してきた。現在は『くみき』のPO(プロダクトオーナー)として機能開発とフロントエンドの実装に携わっている。2021年8月入社。
お客様に自信を持ってお届けできた大型アップデート
——2022年6月にリリースされた「GCPインポート機能」の概要を教えてください。
日笠:今回『くみき』に追加された「GCPインポート機能」によって、取り込んだ画像(オルソ画像/3D点群データ)の高精度な位置補正が可能になりました。
『くみき』には、異なる時期に生成された同一エリアの地形データを画像の特徴点で位置合わせできる「位置補正機能」があります。これまでは相対的に異なる時期のデータの位置を合わせる事はできたのですが、特に建設業(土木)のお客様から「絶対座標での位置補正ができるようにならないか」というご相談をよく受けていたんです。
そこで今回の機能追加では、絶対座標で位置が合わせられるように、自動位置補正の精度を大幅に改善。ユーザー側で補正ポイントを自由に設定いただけるようになりました。操作性にもこだわり、UIもアップデートしています。
——プロダクト開発においては、複数ある要望の中から着手の優先順位を考える必要があると思います。今回の機能追加を優先したのは、どういった背景があったのでしょうか?
日笠:やはり、お客様からの強い期待を感じたからです。建設現場の測量や設計は、精度が命。サービス上に取り込んだ画像の位置補正ができるかどうかは、お客様にとってクリティカルな課題であると、日ごろのヒアリングを通じて痛感したんです。
プロダクトに対する機能追加や改修などの要望は他にもたくさんある中ですが、この機能の重要性は間違いなくて。そこでR&Dグループの藤田さん、プロダクト開発グループの尾川さんに掛け合い、優先度を上げてもらった経緯があります。
——機能追加のリリース後、お客様からの反応はどうでしたか?
木場:CSチームでは、開発段階からお客様に「今この機能を準備中です」と事前アナウンスをしていましたが、そのときから反応が良く手ごたえを感じていました。実際、リリースされると「こんな機能がほしかった」と喜びの声が次々に届いて、非常に嬉しかったですね。
自信をもって「ぜひこの機能を使ってください」とアピールできていますし、マーケティング視点で新規顧客獲得を考えたときにも、効果が高いと感じています。
開発とフィードバックの高速サイクルを回し、メンバーの技術と知見を集約
——プロダクト開発本部のお二人にお聞きします。今回の機能開発において、技術面でどのような難しさや工夫があったのか教えてください。
藤田:AIによる画像処理・三次元計算などの要素技術を研究し、プロダクトに組み込む解析プログラムを開発するのが私たちR&Dグループの役割です。
「位置補正」は今回の機能追加以前からプロダクトに実装していたのですが、初期にリリースした機能が一番難易度が高いです。異なる時期に撮影した画像から画像内の特徴を合わせるようにして補正するのですが、時期が違うと画像に変化があり、うまく特徴を合わせることがなかなかできないのです。
既存のアルゴリズムや論文を調査しながら試行錯誤を重ねても、なかなか安定した結果を出すことができなくて。当時は本当に苦労しましたが、何とか初期の位置補正機能をリリースすることができました。
そのアップデート版となるのが今回のリリースとなる、基準点を画面から指定するのではなくデータとして取り込むGCPインポート機能です。
ただ、要素技術の開発はできても、サービスに落とし込む部分はR&Dグループだけでは実現できません。今回の機能追加は、お客様にとっての使いやすさを追求するため「生の声」を集めたセールス・CS、ヒアリングにも同行して機能を実装したプロダクト開発グループの努力のたまものだと思います。
尾川:そういってもらえると嬉しいです。「部署横断型のプロダクトづくり」はスカイマティクスの特徴で、機能の作りこみにはビジネス部門/開発部門の垣根を越えた連携が欠かせませんよね。
GCPインポート機能は、お客様が画像を取り込んでから、いかに負担なくスムーズに位置補正ができるかどうかが最大のポイントです。機能の設計も当然重要なのですが、プロダクト開発グループとしては、特にUIには工夫を重ねました。
測量において数センチや数ミリの調整を行うことは当たり前なので、座標点のマーカーの形や色などのデザインも、使いやすさにおいて大切です。その点は、セールスの日笠さんがもともと業界出身者で測量知識も豊富なので、いろいろと意見をいただき助かりました。
日笠:私としても経験が役立てられてよかったです。マーカーのデザインには、かなりこだわりましたよね!
——セールス・CSとして開発部門と連携していく上で心がけていたことはありますか?
日笠:プロダクトに対するお客様からのご要望は専門的な要素も多いので、そのままの言葉で社内に伝えるとわかりにくい場合も少なくありません。そこで、お客様のニーズを噛み砕いて図に落とし込んだ社内用の資料を作成し、情報を補足していました。
セールスとして、常にお客様と開発現場の橋渡し役になれるように心がけています。
木場:CSチームでも、とにかくお客様の声を地道に集めていきました。プロダクトへの期待や、具体的な要望など、根掘り葉掘り聞かせていただいたことが、よい機能追加につながったと思います。
尾川:開発に入ったら任せっぱなしではなく、途中段階でもセールスやCSが積極的に反応や意見をくれる環境は本当にありがたく、助かっています。
今回の機能追加にあたっては、お客様の声を集約し、機能のアウトラインが決まったらすぐに開発に着手しました。その際に、まずは簡易的な試作版を1週間程度で作って『くみき』に関わるメンバーにすぐ見てもらったんです。
その場でもらったフィードバックを反映して、翌週のプロダクト会議で再度共有して「この方向でいこう」と決定。そこから本格的な開発をスタートし、調整を重ねて最終リリースに至っています。
藤田:フィードバックはよいプロダクト作りに欠かせないですよね。
『くみき』は、点の集まりによって表現される三次元での画像データ処理解析を行っています。プロダクトの開発初期段階ではその点の集計や計測の精度を高めることに注力していましたが、お客様のお話から「解析結果がサービス上でわかりやすく表示されているか」も同じくらい重要であると改めて気づかされました。
研究開発の方向性も、そういった現場の声を受けて柔軟に調整することを心がけています。
自分たちの行動が、お客様の満足にダイレクトにつながる
——スカイマティクスで『くみき』というプロダクトに携わる中で、どのようなスキルや経験が得られていると感じますか?
日笠:お客様の意見を正しく効果的にプロダクトへ反映させるための「ヒアリング力」です。過去の職場では既製品の提供が多かったので、ここまでお客様の意見を取り込んで改良のPDCAサイクルを回すような経験はありませんでした。
ヒアリングをもとに、自分たちで考えてサービスを世の中に提供できる。それによってお客様に喜んでもらえることが、私たちにとってもこれ以上ない喜びなんです。
木場:私は前職でもCSを担当していましたが、当時は自分の役割を「会社代表」としてお客様にサービスの魅力を伝える立場だと捉えていました。
ですが、今はそれだけではありません。反対に「お客様代表」として、会社に現場のリアルな声を届けることも重要な仕事だと思うようになりました。CSとして提供できる価値が拡張したと感じます。
藤田:日本では、三次元の技術を取り入れた難易度の高いプロダクトを内製で開発・提供している会社はかなり少ない状況です。その中でスカイマティクスは、非常に良質な純国産のプロダクトを作り上げているという独自性があります。
そういった環境で、自分たちが開発したプロダクトをお客様にお届けできるのは嬉しいですね。今後は海外展開も視野に入れ、ますますプロダクトを磨いていきたいです。
尾川:前職ではシステムの受託開発をメインに手がけてきたので、他に類がない自社のWebサービスを磨き上げていく面白さを実感しています。藤田さんと同様に「自分たちがこれを作りました」と、胸を張って言えるサービスを生み出せている喜びを日々実感中です。
部署の垣根やポジションを超えて、全員が新しい挑戦を楽しみながら、力を合わせて大きな価値を生み出せるのがスカイマティクスらしさだと思います。学ぶ姿勢や好奇心を胸に「いいプロダクトを作りたい!」という人と一緒に働けることを、今後も楽しみにしています。