どこか息苦しい。出口が見えない。窮屈で仕方がない。
こういった声が止む日は来るのだろうか。社会は豊かになっているはず。なのに、なぜ人間は豊かになっていないのだろうか。我々はどのように暮らせばよいのだろうか。
そんな問いに対して、ひとつの答えを示している会社がある。それが、株式会社スカイベイビーズ。
僕たちは、“自然体であること”を目指している。その結果、メンバー全員が個人事業主としての顔も持ち、出社義務もないという、変わった会社ができ上がった。
いったいどのようにして、そんな会社が生まれたのか。僕たちはどこを目指しているのか。今回は、スカイベイビーズの代表である安井さんに語ってもらった。
前編では、安井さんのキャリアやスカイベイビーズの現在地をお届けする。
想いと興味から始まった代表取締役
―― 安井さんが代表になった経緯を教えてください。創業者ではないんですよね?
そうですね、2015年6月に前の代表から引き継ぎました。もともとは取引先だったんですよ。今も在籍しているアソブロックという会社で、スカイベイビーズにウェブ制作の仕事を発注する立場でした。
前の代表とはずっと知り合いで、近い位置にいたんですけど、会社をたたむことにしたって聞いて。「それはもったいない!」と、アソブロックの代表が僕に話を持ってきてくれた形です。
―― 「安井さん、継いでみない?」って。
そうそう。最初はびっくりしたけど、個人的にやりたいこともあったから。それをやる場所として引き継ぐのもいいか、と思って決断しました。
―― 明確にやりたいことがあったんですか?
うん。今でも変わっていないけど、都心から地方に人を流す活動をしたかった。
スカイベイビーズを引き継いだのが2015年6月だけど、2013年11月に子供が生まれていて。2015年1月には子育て環境を考えて、山梨との二拠点生活を始めていたから。子供が生まれて、自分も自然豊かな場所で暮らしていたら、気がつくと視点が地方に向くようになったんですよね。
僕自身が兵庫県の田舎出身ってのもあって、もともと地方の生き方や暮らしは好きでした。以前から、地方に恩返ししたいとも考えていたんですよね。なんでみんなこぞって都会にでてくるんやろう、地方の暮らしも誇るところはあるのにって。そこでちょうど引き継ぎの話が来たから、「地方に人を流す活動を始めてみよう」と思って、スカイベイビーズを引き継いだのが始まりです。
―― 代表になるって、かなり大きな決断ですよね。悩まなかったんですか?
悩まなかった、って言ったら嘘やけど、それよりも興味が勝ったというか。会社の役員という立場になったことはあったけど、代表にはなったことがなくて。
代表と役員では、かなり大きな差があると感じていたから。
―― そんなに差があるんですか?
背負っているものが違うからね。会社を背負っている、つまりは従業員の生活を背負っているということ。その事実と実感が違う。小さな会社だと給料の振り込みとかも、代表自らやったりするんやけど、その感動ったら何にも変えられない。今月もなんとか乗り切れた、今月もみんなを路頭に迷わせずに済んだ、って。
そのヒリヒリ感を感じてみることで、自身がどのように成長できるのかという興味があったのも、スカイベイビーズを継いだ理由のひとつかもしれないね。
ようやく、自己表現できる組織に成長した
―― 会社を引き継いでみて、最初はいかがでした?
いや、もう大変やった。会社を存続させるためには、お金を稼がないといけないから。社員も4人しかいなかったし、みんなで必死に稼いでなんとか食いつないでいた。
とはいえ、ずっとそんな状況で自転車操業的な経営をするつもりもなかったから、最初から種まきも始めていたんです。
―― 種まき?
エンジニアやデザイナー、ライターって労働集約型の働き方だよね。受託業務だけを増やしていくと、ひたすらに量をこなさないと売上があがらない。売上をあげようとすると、社員が疲弊するだけになってしまう。
そうはならないために、自分たちの事業を持たないといけないなって。小さくてもいいから自分たちで価値を生み出そう、それを世の中に問うていこう。そうしないと何も変わらないよなって。
そう考えて立ち上げたのが「空と緑のくらし店」(ソラミド)。これを大きくすることで、いつか自分たちの事業だけで食っていける状態を創ろうぜと。
―― ソラミドは、そんな想いが託された事業だったんですね。
当初は会社の存続が第一だったから、そこまでドライブはかけられずに今まで来ちゃったけどね。それでも、みんなの心の拠り所としてソラミドは手放さなかった。
スカイベイビーズの向かうべきビジネスのあり方として、みんなの働き方や生き方の自由を得るためのツールとして、ソラミドを育てていきたい。その想いは変わっていません。
―― 種まきを経て、いまのスカイベイビーズはどのようなフェーズなんでしょう?
徐々に人が増えてきて、ようやく「自分たちが何者なのか」を世の中に発信できるようになったんじゃないかな。ただ働いて日銭を稼ぐのではなく、自分たちの存在意義を世の中に問いかけるフェーズ。
組織として、ようやく自己表現できる段階にきた、と思います。
人の縁が繋がって、今がある
―― 自分の手で事業をやりたいって、若い頃から思っていたんですか?
いや、もう全然。若い頃は何もやりたいことがなくて、残念な若者だった。唯一やってもいいかなと思えたのが、高校の頃にやっていた演劇に関わること。それが理由で劇団ひまわりに入社したけど、それ以上ではなかった。
―― そこから「代表やってみない?」と誘われるまで、どう過ごしていたんですか?
新卒で劇団ひまわりに入社して、2年目でたまたま事業所を増やすためのプロジェクトリーダーを任せてもらって。そこが僕にとっての転機だったかな。プロジェクトをなんとかやり切ったことで、社内での見られ方が変わった。そこから、ありとあらゆる仕事を任せてもらえるようになりました。
―― 社内で信頼されたんですね。
しかも、関西エリアの責任者も任せてもらって、20代のうちにマネジメントや会社経営について経験することができた。それは今に活きていると思います。
でも、いろんな仕事を経験したことで「あれ、50歳になったとき俺は何の仕事をするんやろう」って迷うようになっちゃって。
―― やり尽くしてしまった、と。
そのタイミングで、たまたま知り合いから「一緒に会社をやらないか」って誘われたのが転職のきっかけです。それが今も在籍しているアソブロックっていう会社。ずっと関西にいたけど、東京に出てきたのもこのタイミングでした。
きっと、新しいことやったら何でも良かったんだと思う。新しい刺激が欲しかったんです。
―― そこでアソブロックさんに転職したから、スカイベイビーズの話もあったわけですし、ご縁が繋がってますね。
そうね。普通の転職活動もしたことあるけど、どうも向いてなくって。職務経歴書とか、仕事の成果を全部自分がやったかのように書かないといけないでしょ。それに抵抗があって。
物事を、実際より大きく言えないのよ。見栄を張ることができない。僕にとってはあの作業そのものが自然体じゃなかったなぁ。
―― 安井さんらしいですね(笑)。
等身大の自分しか表現できない。そんな人間くささがある安井さんだからこそ、メンバーは付いて行きたくなるのだろう。
そして、ようやく出てきた“自然体”というキーワード。
“自然体”とはいったいどのような状態なのだろう。イメージしやすいのは、開放的で牧歌的なもの。悠々と過ごしている状態を想像するかもしれない。
しかし、僕たちは甘いだけの状態を目指しているわけではない。後編では、スカイベイビーズが掲げる“自然体”について、そして、そこから導かれる組織観についてお届けする。
後編
https://www.wantedly.com/companies/skybabies/post_articles/335373
(執筆:安久都智史)