カオスに秩序を与えるのも、ゼロベースで基盤から戦略まで構築していくのも、何でもあり。長きにわたり人事畑を歩む藤田 裕子は無理難題とも思える命題にも真っ向から挑んできました。藤田の採用や人事への情熱が、今、SHOWROOMに“人”という観点の新たな価値を育みつつあります。
想いの軸は“人”にかかわる仕事。人材サービス会社の営業から人事へ
企業は、人が集って構成する組織体。
いわゆるオフィスワークかどうかは、関係ありません。
経営者や理念、ビジョン、事業の魅力に共感があれば、そこに人は惹かれ、集まってくる。
人の力を集積して企業は動き、前進し続けていくのです。
人事は、採用や育成、組織の在り方などを司る仕事。藤田 裕子は長きにわたり人事畑を歩んできました。
藤田 「私が就職活動をしていたのは、リーマンショックが起こる直前の頃。当時、人材業界がホットな時代で、人材ビジネスの企業に就職した先輩も多かったんです。もともと組織変革や仕組みづくりといった領域に興味があったので、人事の仕事にも興味がありました。 一方で、自分の適性や志向を知るためにも、最初から事業会社に進むのは違うかな、と思ってもいました。まずは色んな業界や企業を知り、人事の人たちの働きぶりなどを知ったうえで、自分の選ぶ道を考えたかったんです。それで、新卒ではパソナグループのパソナテックに入社し、最初の3年間は法人営業を担当しました」
藤田が在籍していたパソナテックは、エンジニアの派遣や人材紹介、業務委託に特化して事業を展開していた会社です。新規開拓を中心に、飛び込み営業も含めて業種問わず取引先を広げていくという地道な営業活動を経験するのです。
藤田 「リーマンショックは、企業側にもエンジニア側にも大きな影響をもたらしました。率直に言うと、採用難から就職活動がうまくいかず、それで派遣会社に登録されているという方も少なくなかったと思います。とはいえ、パソナテックのエンジニアの皆さんは能力もモチベーションも高い方が多かったですね。エンジニアを必要とする企業と、意欲の高い優秀なエンジニアの方を結びつけるという意味では、意義深い仕事だと感じていました」
特に入社時のエンジニア研修は、藤田に大きな感銘を与えるきっかけになりました。
藤田 「いわゆる文系出身だったので、情報処理の基礎知識を学ぶことやプログラミングなどは自分の理解の範疇を超えていて……知識習得において沢山苦労した分、純粋に、エンジニアの皆さんに対する尊敬の念が強まりました。研修に加えて、仕事を通してエンジニアの皆さんと近しく働けたことで得た学びもたくさんあります」
入社から3年、人事メンバー募集の社内告知を知り、自ら手を挙げて異動。その後3年間は新卒と中途採用を担当します。
藤田 「法人営業、そして念願叶って人事と経験した6年間で、自分自身の志向もだんだんとわかってきました。私は、業務の幅を規定されるよりも幅広く挑戦したいタイプ。そして、スピード感のある働き方が合っているな、と」
そして見えてきた方向性が、ベンチャー企業への転職だったのです。
現場を巻き込み、魅力発信に奔走。人事から会社を変えていく挑戦
藤田が次のフィールドに選んだのは、クラウド名刺管理サービスのSansan。
ときは2015年、同社が急成長を遂げているさなかでした。
藤田 「私に課されたのが『1年でエンジニアとクリエイターを50人採用したい』という目標。高い目標ではありましたが、何とかできるだろうという謎の自信もありました(笑)。営業として、そして人事としてエンジニアの方々と長くふれあってきた経験は、自分の強みとして大いに生かせるはずだと思ったからです。結果的に自信を裏打ちしてくれる実績を出すことができました」
採用成功の裏でもちろん苦労した側面もたくさんありました。それは現場メンバーの人事(採用)に対する意識改革と巻き込みだった、と藤田は振り返ります。
藤田 「急成長期だったこともあり、採用活動をしてはいたものの、その仕組みはバラバラで、きちんと整理できていない状態でした。特に『採用=人事のやること』というイメージがあると、面接などもやらされ感が生まれてしまいかねません。そこで、現場社員と信頼を築き、協働するためのコミュニケーションには注力しました。 また、人材が採用できれば、現場が活性化し事業を伸ばす力になるのだと繰り返し発信しました。半期に1回のペースで面接官研修も実施。組織活性化に重要な採用活動のために面接官に選抜されたからこそ、自発的に臨んで良い人材を採りましょう……と、言い続けましたね。研修を取り入れて1年ほど経つと、現場から意見が出てくるようになって。双方向でコミュニケーションを取れるようになった変化は、私にとって大きな手ごたえでしたね」
また、社外に向けても大胆な企業の魅力発信に努めました。自社の技術勉強会の企画~運営や、外部のテックカンファレンスに参加して現場のエンジニアを登壇させたり、企業ブースを設置してノベルティやチラシ等も作ってPRするなど、技術ブランディング活動も並行して進めていったのです。まずは、企業の良さをきちんと発信し、興味をもってもらうこと。その導線づくりも含め、単なる採用活動の枠を飛び越えて積極的に活動していました。
次の転機が訪れたのは、2019年の秋がはじまった頃のこと。学生時代の知人が、意外な企業で働いていることを知ったのです。大手広告代理店を離れて選んだベンチャー企業……
藤田は「なぜ彼はそこを選んだんだろう?」と強く興味を惹かれます。調べてみると、それは日本の動画配信サービスの先駆者的な存在で、しかも人事担当を募集している……たった2週間程度で話が進み、気づくと2019年11月には藤田はSHOWROOMのメンバーになっていました。
カオスだったSHOWROOMの採用基盤。だからこそ、ワクワクした
SHOWROOMに入社を決めた一番の理由は?という問いに対し返ってきたのは、意外な、ある意味で藤田らしさにあふれた答えでした。
藤田 「面接で『ウチ何にも整っていないんですよ』って言われたんです。『すごいカオスな環境なんだけど、やれますか?』と言われて……非常にワクワクしましたね。当時のSHOWROOMは、採用の仕組みという意味では、ほぼ何も手が付けられていない状態でした。他の人がどう感じるかはわかりません。でも、私は『だったら、ゼロから自分でつくれる!』と、受け止めました。 ただ、11月入社にもかかわらず、いきなり『3月末までにエンジニアを30人採用』という会社としての主要目標を掲げられたことには、なかなかしびれましたけどね(笑)」
最初の大仕事、そしてゼロからの基盤づくりを、藤田はスピーディに進めていきます。
藤田 「できることはすぐにやる、ということで、まずは一気に紹介エージェント約30社との打ち合わせを行い、当社に魅力を感じて優先度を上げていただけるようなコミュニケーションを積極的に取ったり、エンジニアmeetupの企画、SNSを使った採用ブランディング形成やスカウト活動などで、大々的に採用をスタート。同時に、マネージャークラスのエンジニアとは個別面談を行ない、求めるペルソナを明確にしていきました。課題や人物像もすべて洗い出し、採用の確度を高めていきました」
さまざまな社員とコミュニケーションをとるなかで、藤田はあることを確信します。それは、SHOWROOMのメンバーは、事業に対する愛情が非常に深く、自分たちのサービスに高い誇りを持っているということ。本気でサービスをより良くし、世の中にきちんと浸透させていきたいと思っている、とても優秀で素晴らしい人たちが働いている会社なんだ、と。
藤田 「こんなに事業愛が深いのに、対外的に発信されていないことが本当に惜しいと痛感しました。働く人の想いと魅力は、採用活動においてもSHOWROOMの大きな強みになると思ったんです。確かに、組織や仕組みの点では整備が必要だったものの、コアの強みが確立していたからこそ、初速から走りだせたという実感があります。既に存在している魅力を、きちんと採用活動の文脈に乗せて伝えれば良かったので」
エンジニア同士の連携と信頼が深く、尊敬し合う雰囲気と絆があること。CTOの佐々木やマネージャークラスのエンジニアに対しても、絶対的な信頼関係が構築できていること。ビジネスにおいては代表前田や本部長に対する信頼と尊敬が、良い意味でのプレッシャーにもなり、士気高く働く力になっていること。SHOWROOMの魅力を整理し、発信する土壌を整えながら、藤田は無理難題とも思えた、大きな目標を見事に達成したのでした。
大変さを楽しめれば、その先の成長が見えてくるのがSHOWROOM
2020年現在、新卒採用は3月1日に採用情報公開・エントリー受付開始という規定があります。
藤田 「なのに、前田からその5日前に突然『新卒採用をやろう!』と言われて。大慌てで新卒採用のための情報整備や仕組みを全部つくりました。相当驚きましたが、こういういきなり起きるサプライズがSHOWROOMらしいというか(笑)。とても忙しかったですが準備している間は痺れるくらいワクワクしましたね(笑)」
何とか間に合わせ、2021年卒の新卒採用も実施。その結果、改めてSHOWROOMが取り組むべき課題が見えてきた、と藤田は言います。
藤田 「これまでは中途採用しか実施していなかったので、人を育てることに対する比重を組織としてあまり置いていなかったんです。即戦力採用なので、置く必要がなかったと言う方が正確かもしれませんね」
ここで新卒向けに取り入れたのは、自身も体験した内定者へのエンジニア入社前研修制度でした。
藤田 「SHOWROOMはITの事業会社なので、エンジニア以外の職種でもある程度の知識は持つべきだと考えました。まずは、サービスを構築しているエンジニアの気持ちや開発の苦労を知ってほしい。技術の理解は営業でも大きな強みになりますし、顧客へサービス説明する際の説得力の度合いが大きく変わると思っています。また、高い自走性を養うことも大事。会社から与えられて何かをするのではなく、自発的に物事を進めていけるというのは、職種を問わずSHOWROOMの一員として持ってほしい資質です。21卒の内定者の皆さんは、苦労しながらも頑張って乗り越えようとしてくれています」
そして藤田自身も、大きな変化と新たな挑戦への一歩を踏み出しています。
藤田 「DeNAグループの連結を外れたタイミングで、制度設計や労務関連業務も担当することになりました。ずっと採用畑を歩いてきたので、今まさに勉強中。独立企業として、SHOWROOMならではの制度や仕組みを一からつくっていきたいと考えています。 入社以来、優秀で魅力的な仲間をたくさん採用できました。彼ら・彼女らにさらに成果を出してもらうための人事制度、評価制度、労務の仕組みなどを考え、構築していくフェーズに入ったと思っています」
またしても、ゼロから新たに整えるというチャレンジをはじめた藤田。一方で、失いたくないSHOWROOMの良さもあると考えています。
藤田 「経営が描くビジョンが大きいので、ついていくためにメンバーはみんな必死(笑)。日々、状況がガラッと変化しますから。大変なのですが、乗り越えられたときに、経験やスキルがぐいっと伸びるのも事実なんです。 特にSHOWROOMは、入社1~2カ月のメンバーが新サービスの開発を率いることもめずらしくありません。「カオス」だからこそ、成長の幅が広がる会社なんです」
単なる安定企業ではなく、カラーを守りながら会社をより良くしていきたい。
藤田の決意にこそ、カオスさえも楽しめるSHOWROOMらしさが満ちているのでした。
2020.10.16