「デザイン」という言葉を聞いて、あなたはなにを思い浮かべますか?ロゴやDTP、Webなどビジュアルデザインをイメージする人が多いと思います。
本来「デザイン」という言葉に含まれた意味はそれだけではありません。デザインの本質は総合的に「正しく情報を伝えること」だとSEESAWは考えます。いくら見栄えが良くても、情報が正確に伝わらなければデザインはその役割を遂げていません。
今回はSEESAWがどのように「正しく情報を伝えるため」デザインに取り組んでいるか、ひとつのプロモーション事例からご紹介します。
胸のサイズから洋服を選ぶアパレルブランド「HEART CLOSET」のプロモーションデザイン秘話
デザイナーの花形の仕事のひとつに「ブランディング」があります。SEESAWでは、ベンチャー企業や新規プロジェクトの立ち上げに、クリエイティブ面で携わることが多くあります。
立ち上げから携わったプロジェクトのひとつが「HEART CLOSET(ハートクローゼット)」です。HEART CLOSETは、胸のサイズが大きい女性のためのアパレルブランドです。SNSやWebメディア等で見たことがある方も多いのではないでしょうか。
クラウドファンディングから始めたワケ
元々、クライアントであるHEART CLOSETの創立者は「胸のサイズにより市販の洋服では野暮ったく見えたり、胸が異常に目立って見えたりする支障が発生する」という理由で、このブランドを立ち上げました。市場を調べてみると日本女性の約25%はEカップ以上で、同様の悩みを持っている方はたくさんいることがわかりました。その事実は衝撃的であり、少なからずニーズがあるということを意味しました。
珍しいコンセプトとは言え競合は多数いますし、いくら商品やデザインが良くても、アピールすべき消費者に上手くリーチできないと、この商品を広めることは困難です。オンライン広告を出そうにも「胸のサイズ」によってオーディエンスをセグメントするということは、現時点では不可能に近いことです。反対に大衆に向けた広告を打ち出しても、トレンドの巡りが早いアパレル業界ではすぐに流れていってしまいます。初動で上手くアプローチできないと、ただただもったいない結果に終わってしまうのです。
元々の発注はロゴを含むグラフィックによるブランディングでしたが、情報を広めるため「キレイなクリエイティブを作ること」よりもまずは「認知度を上げること」を優先し、プロモーション企画から携わることになりました。
話題性とニーズを兼ね備えたこの商品を広くPRするために、SEESAWが提案したのがクラウドファンディングです。
・インパクトがある=拡散されやすい
・需要がある(特定の人の悩みを解決する)=支援されやすい
こういった要素が揃っているので、クラウドファンディング向けであると判断したのです。
ニッチなターゲットに最大限にリーチするためのこだわり
本企画に携わったSEESAWスタッフは実は全員男性。
女性に向けたブランドを作るのに苦労したのでは?と筆者は思ってしまいましたが、このブランドは訴求ポイントが明確な機能性重視のアパレルなので、趣味趣向によって選ばれる他のブランドよりデザインしやすかったそうです。商品について感覚的なイメージではなく、機能性をしっかり伝えることを最重視しました。
ブランドのクリエイティブも色を付けすぎないように注意しています。
かわいらしいフェミニン系、オフィスウェアのようなコンサバ系、どちらかの趣向に寄せたほうが消費者には印象づけやすいですが、「胸のサイズ+趣向」になるとターゲットが狭まってしまいます。ただでさえマーケットはニッチなので、出来る限り多くの人に手に取ってもらいやすい、偏りのないニュートラルなデザインを心がけました。
また、価格相応に見せるということにも気をつけています。
商品は素材や縫製にこだわった質の高いプロダクトです。現在ではネット販売のみですが本来であれば百貨店に並ぶようなクオリティなので、グラフィックでもそれが伝わるようにロゴのタイプフェイスやイメージカラーなどに高級感を持たせました。
デザイナーだからこそできる 繊細な「言葉選び」
実はこのプロジェクトを発信した際に一番気を使ったことは「言葉(メッセージ)」でした。
ざっくばらんに一言でこのブランドを言い表すと「巨乳向けの洋服」と言えてしまいます。ただ「巨乳」と呼ばれて喜ぶ女性は多くありませんし、服を買う時に「巨乳」という言葉で検索をしません。身体的なことは大変センシティブな問題で、悩みを抱える女性は多いです。特にHEART CLOSETはそんな女性のお悩みを解決するためのブランドなので、そのような言葉を使ってしまえば、それだけでブランドのイメージは崩れてしまいます。
ただ、他の言葉でこのブランドの特徴を伝えることは思ったよりも難しく、SEESAWでも頭を捻らせました。ここでも「正しい情報を伝える」ため、言葉をデザインすることが必要になったのです。
そこでデザイナーが考えたキャッチフレーズが「胸のサイズから洋服を選ぶ、新感覚のアパレルブランド」。
この言葉が意味する通り、胸囲に基づいたサイズ展開も新たに開発しました。例えば、Dカップでアンダーバストが65〜70cmの人は、HEART CLOSETの基準ではSサイズになります。
商品を正しく伝えるワードチョイスをした結果、お客様にも好意的に捉えてもらえたと感じています。キャッチフレーズは小さな部分ですが、大きくブランドイメージに関わる重要な要素です。
これらの施策は成功し、発表してすぐに話題を呼びました。WEBニュースに300回以上掲載され、広告費を使う以上に世に広めることができ、お客様となるターゲット層にもリーチすることに成功。結果1100%を超える当時最高の達成率でクラウドファンディングプロジェクトは大成功を収めました。
あなたが考える「デザイン」とはなんですか?
デザイナーのお仕事は情報整理し伝達をすること。それはビジュアルのクリエイティブに限らないはずです。デザイナーだからこそ工夫して生み出せるアイディアは、面白くて伝わりやすいものではないでしょうか。
今回はSEESAWが考えるビジュアルのクリエイティブだけに留まらない、総合的なデザインの役割についてご紹介しました。
「紙面やWEBのデザインだけじゃ物足りない!もっと上流工程から作り上げたい!」という思いを持ったデザイナーはぜひSEESAWに遊びに来てください。
SEESAWならやりたいことがきっとできるはずです。