1
/
5

scoutyがビジネスサイドでもスクラムを採用する理由

こんにちは。プロダクトマーケティングマネージャーの染谷です。今回は、scoutyのビジネスサイドのスクラムでの組織運営についてご紹介します。通常スクラムは開発手法の一つとして認識されているので、ビジネスサイドでスクラムと聞くと不思議に思われるかもしれませんが、実はなかなか合理的な仕組みと考えています。

以前、弊社の伊藤が書いた記事で開発組織のスクラム運営について紹介しておりますが、scoutyではビジネスサイドもスクラムを採用しています。僕はビジネスサイドのスクラムマスターというスクラムの理解の浸透やスムーズな運営に責任を持つ役割を務めています。そして、実際にスクラムを活用、推進している中で、スクラムがビジネスサイドの運営にも適していると実感しています。そこで、この記事では、スクラムをビジネス組織でも採用している理由、そしてどのように運営しているのかについてお伝えしていきます。

(なお、より詳しく理解したい方は「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術(著:ジェフ・サザーランド)」を読んでいただくのがおすすめです)

ちなみに、僕は前職(リクルートの事業会社で複数の新規事業におけるPMやBtoBマーケなどをやっていました)での経験から、多くのビジネスサイドの組織はウォーターフォール型で運営されていると考えております。そして、そのために多くの会社が似たような問題を抱えていると考えています。(僕も前職でよくその問題に直面していました)これがスクラム型の組織運営だと、格段に回避しやすくなります。こちらについても以下でご説明します。

なぜ、scoutyのビジネスサイドでスクラムを導入しているのか?

そもそもスクラムとはどのようなものでしょうか?詳細な説明はここでは割愛しますが、開発を例にとって、大まかに言えば従来のウォーターフォール型開発が、開発完了までの綿密な計画を作成し、その計画通りに開発を進めて計画通りのものを完成させてリリースするという開発スタイルであるのに対して、スクラムでは定期的なサイクルを組み(scoutyでは開発サイドは2週間、ビジネスサイドは1週間)、優先順位が高く、期間内で完了できる単位のものをサイクルごとにリリースしていくという考え方の仕組みです。こまめなリリースによって顧客のフィードバック等も得ていきながら、優先順位も状況に応じて変えていけるという点が特徴となっています。

※ウォーターフォール型開発とスクラム型開発のイメージ図


スクラムは特に数人単位のチームのアウトプットを最大化するための理想的な仕組みだと僕は思っています。scoutyのビジネスサイドは少数精鋭を志向しているチーム(人数は、2018年7月時点で4人)です。各自がマーケティング、カスタマーサクセス、PRと自分がオーナー(責任者)となる領域を持ち、その領域の実行(オペレーション)も担っています。そのため、各自が日々オペレーションを実施しながらも、優先順位の高い課題を、しかも迅速に解決していくことが求められます。社内では、これらをルーチンとカイゼンと呼んで区別しています。このうちのカイゼン業務を円滑に進めていくためにスクラムを導入しています。

※ビジネスサイドの業務を2つに分類し、カイゼン業務をスクラムで運営しています。


また、scoutyのビジネスサイドでは、上記のように各自が専門となる領域を持っている一方で、各自が関連性の高い業務を執り行っているため、他の人間が進めている業務についても一定以上の理解をしていることが重要です。
このようなscoutyのビジネスサイドにおいて、スクラムを取り入れる大きなメリットは以下の3点です。

1.常に優先順位の高い課題にリソースが割り当てられる

日々、状況が変化する中で、スクラムでは課題の優先順位を毎サイクルごとに都度判断することができます。そして、その中で最も優先順位の高い課題に着手する仕組みとなっているので、チームのリソースを常に優先順位の高い検討や作業に割り当てることができます。これによって、重要な検討をしないといけないのに、商談やメール対応などのオペレーションで1週間が終わってしまったというようなことは、ほとんどなくなります。

2.チームとしてのアウトプットスピードを高められる

スクラムでは、毎サイクルに振り返りの場が設定されています。毎サイクルにて振り返りを行い、次のサイクルで着手する課題を決めていくのですが、その振り返りの場にて、チームとしてのアウトプットスピードを阻害するものを改善対象となる課題に設定されていきます。また、現行のスクラムのサイクルやルール等に改善事項があれば、その改善も提案できます。つまり、振り返りを回せば回すほどチームのアウトプットスピードが早くなっていきます。

3.チーム内の透明性が担保される

スクラムでは、チームの進捗が一つのボード上で表現されます。そのため、他のメンバーが今何に取り組んでいるかがわかります。また、次のサイクルで取り組む課題や、前のサイクルで完了させた課題については内容をチームに共有する時間が設けられているので、実際のアウトプットも含めて他メンバーの業務のアウトプットを理解することができます。

他にも様々なメリットを享受しておりますが、特にこの3点は非常に重要だと考えています。では、次に具体的にどのようにこれらのメリットを享受しているかをご説明します。

scoutyビジネスサイドの実際のスクラム運営方法

scoutyのビジネスサイドでは、1つのサイクル(スプリントと呼んでいます。)を1週間としてスクラムを運用しています。1週間の終わりの金曜日にスクラム運営のためのMtgを行います。このMtgにて振り返りと次週の計画決定を行い、その内容に従って次の金曜日まで走るということを繰り返しています。

※スクラム運営にあたり、金曜の午後に上記の各目的に応じたMtgを実施しています。


上記の図の特に振り返りMtgと計画Mtgが、スクラムの運用に関わるMtgです。それぞれ具体的にどのような内容をやっているかをご説明します。

振り返りMtg

振り返りMtgは2部に分かれています。
前半はスプリントレトロスペクティブと呼ばれるもので、scoutyのビジネスサイドではこの時間を主に完了した課題の内容共有に当てています。これを成果物なども見せながら、具体的な内容で伝えることによって「チーム内の透明性が担保される」という先述のメリットを得ています。

また、このスプリントレトロスペクティブの時間では、実際にこの1週間でどれくらいの作業量をこなせたのかという消化作業量(ストーリーポイントとかポイントと呼んでいます)も測定しています。これは各課題に対して何時間分の作業になりそうかということを、後ほどご説明する計画Mtgの際に見積もっていて、1サイクルの間に消化できた課題全ての見積り時間を合計することで、1サイクル内に消化した作業量を計測しています。

これをやるとサイクルごとに消化できた作業量の増減もモニタリングできます。
さらに、1サイクル内に消化した作業量を元に、この場で次のサイクルでどのくらいの作業量を目指すのかを決めます。(これを予算ポイントと呼んでいます)

※サイクルごとの作業量のモニタリング(ZenHubというツールのレポート機能を使っています)


振り返りMtgの後半では、KPT法を使って振り返りを行っています。KPT法についてはスクラムから逸れるので詳しくは語りません。こちらの記事などをご覧頂ければと思います。

ただ、大事なのはこの場で、チームとしてのアウトプットのスピードを阻害しているものがあれば、それを問題として共有することができ、それを解決するためのアクションを設定することができます。また、現行のスクラムのサイクルやルール等がそのような問題の起因になっていたり、やりづらさを感じる点があれば、その改善やルール改訂も提案できます。

先述のメリットの1つである「チームとしてのアウトプットスピードを高められる」は、まさにこの場を有効に活用することによって得られるようになっております。

計画Mtg

続いて、計画Mtgで何をやっているかをご説明します。計画Mtgでは次サイクルに消化する課題を決定します。計画と言っても、何か手間のかかる作業が発生するわけではありません。まずは、下の図をご覧ください。

※全課題がカードになっていて、この画面上に並んでいる。上下は優先順位の高低を表している。次のサイクルで消化する課題は「Sprint Backlog」に入っていて、着手すれば「In Progress」、完了すれば「Done」に移行していく。


このように全課題がカードとなって画面上に並んでいます。計画Mtgでやることは非常にシンプルで、振り返りMtgで定めた次のサイクルでの作業量(予算ポイント)に応じた範囲で、優先順位の高いものから順に消化する課題を選択していくだけです。これをやるだけで次のサイクルに消化する課題が定まります。消化する課題が定まったら、その課題の次のサイクル内での消化を目指してアクションをするという流れになります。

このように自動的に優先順位の高いものから順に着手していく流れなのですが、大事なポイントはこの優先順位は柔軟に変更できるという点です。事業を取り巻く状況の変化や顧客理解の深まりや勉強等による認識の変化によって、メンバー各自の裁量で変えることができます。なので、前週の計画Mtg時点での優先順位と、当週の計画Mtg時点での優先順位は異なります。この仕組みがあるために「常に優先順位の高い課題にリソースが割り当てられる」というメリットを得られるのです。

まとめと通常のビジネス組織の課題

このようにscoutyのビジネスサイドでは、スクラムを採用しておりますが、それは以下の3つのメリットが大きいからです。

1.常に優先順位の高い課題にリソースが割り当てられる

2.チームとしてのアウトプットスピードを高められる

3.チーム内の透明性が担保される

これらのメリットはスクラムを円滑に運営できると得られるメリットです。

しかし、前職での経験も踏まえて、一般的なビジネス組織の運営ではなかなかこのような状態が作れていないように、僕は感じています。場合によっては、上記のメリットとは真逆の状況になっていることもあるかと思います。つまり、以下のような状況です。

1.優先順位の低い課題にリソースが割り当てられている

2.個人のスピードに注目が集まり、チームのスピードが注目されない

3.別のメンバーがやっている業務が見えない

これにはもちろん、様々な複合的な要因がありますが、その一つにウォーターフォール型の組織運営があると僕は考えています。ウォーターフォールか、スクラム(アジャイル)か、という問題系は決して開発組織だけの問題ではなく、ビジネスサイドでも起きている問題なのです。少なくとも僕はそう考えています。
もう少し、詳しくご説明します。

こちらの図はウォーターフォール型ビジネス組織で起こる問題を簡単にまとめた図です。一番の問題の根源は、ビジネスを進めて行くにあたり役員会などの上席の並ぶ場で計画に対する決裁を得る必要があるため、この場に起案するための綿密な計画を作成する必要があることです。この綿密に作られた計画は、非常にもっともらしいのですが、それが悪影響を及ぼします。その後、計画について決裁を得られれば、その計画に沿って事業を推進していくこととなります。ビジネスを推進していくためのタスク管理表や課題管理表なども概ね、このタイミングで作成されることが多いかと思います。

しかし、実際にビジネスを推進していけばいくほど、計画とのギャップが生じます。とはいえ、計画を修正することは、再度の起案、再度の綿密な計画作成というコストの掛かる活動が必要な為、極力選択をしたくないものです。なので、先送りになります。また、先送りせずに計画変更を繰り返すと今度は逆に担当者の計画作成能力にも疑いが掛かります。

このギャップに一番苦しめられるのは現場です。現場はまず計画どおりのタスクを遂行するのか、新たに見えた現実から生じる重要なタスクを遂行するかに迷います。場合によっては両方を当初のスケジュールに影響がでないように消化することも求められます。このように何をやるべきか難しい選択を迫られ、場合によっては計画上消化しないといけないのだが、その時点では事業上の優先順位が低いものにリソースを割くこととなり、「優先順位の低い課題にリソースが割り当てられている」状態が生じます。

また、うまくいかなくなればなるほど個人に対する風当たりも強くなりがちです。特にタスク管理表等のツールはチームのアウトプットを可視化するものではなく、個人がちゃんと働くことを管理するという性悪説に則ったものですので、チームのアウトプットとは関わりなく進捗の悪い人間個人が改善の対象となっていきます。つまり、「個人のスピードに注目が集まり、チームのスピードが注目されない」状態になります。

また、このような状況になると、完成したアウトプットの共有は疎かになる上、場合によっては担当間での対立も生じます。つまり、俺はちゃんとやっているのに、あいつはちゃんとできていないという状態です。こうなると、共有もうまく回らないので「別のメンバーがやっている業務が見えない」状態に陥ります。

結局、半期や1年というタイミングで再度計画を引き直して、膿を一回出し切る作業を行いますが、その計画作成に多大なコストが掛かりますし、計画の引き直しの効果はまた時が経てば経つほど薄れていき、同じ状態に近づいていくのです。

もちろん、上記の例はとても悪い例を想定したものですが、僕の経験では多かれ少なかれ部分的に同じような問題を抱えている組織が多いのではないかと思います。そして、それは実は組織運営の方法を変えることによって解決できる問題なのです。

スクラムでビジネスサイドを運営すると、そのような問題とは多くの場合、無縁となります。なぜなら、振り返りや計画策定がサイクルごと(scoutyは毎週)あるので、膿が溜まらないうちに方向修正していくことができます。また、活用するツールもそれに合わせて動的なツールを使うので、実際の「現実」とツール上の「現実」も乖離が生じにくいのです。

長くはなりましたが、このようにビジネス組織でスクラムを採用することには大きなメリットがあります。特に新規事業やスタートアップなど、変化が激しいビジネスではおおいにその力を発揮する仕組みだと実感しています。

最後に

この記事ではscoutyのビジネスサイドで行っているスクラム運営をご説明しました。この記事に書いた通り、本当に良い仕組みですので、僕は胸を張っておすすめします。

とは言え、scoutyのこのスクラム運営もまだまだ改善の余地があると考えています。個人的には、さらに事業P/Lとこのスクラムボードの関連性をさらに強くできると良いなと思っていますが、今後も、もっと良いやり方になるようにやり方をさらに改善していこうと考えています。

scoutyのビジネスサイドは、8月に新たに1名のジョインが決まり計5人となっていきます。少数精鋭を掲げているものの、今後もまだ採用を続けていきます。このように新しいやり方を積極的に採用し、色々とリーンに試してみながらより良いものを探求していくチームです。少しでも興味ある方は、ぜひオフィスに遊びにきてください。

LAPRAS株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
11 いいね!
11 いいね!

同じタグの記事

今週のランキング

染谷 健太郎さんにいいねを伝えよう
染谷 健太郎さんや会社があなたに興味を持つかも