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第三回:さくら事務所に向いている人財は?長嶋と大西が考えるこれからの働き方

さくら事務所の20年を振り返り、創業者であり取締役会長の長嶋修と、取締役社長の大西倫加による対談。
第三回は長嶋と大西の経営や組織への考え方をあますことなく語りました。これからの社会で充実して働くため、生きるための処方箋をお届けします。

Q.長嶋さんと大西さんは社会に出てすぐ、仕事への主体的な感覚が身についていらっしゃったのでしょうか?

大西:
私は大学も学費を自分で稼いでいたのですが、学生時代のバイトもそんな感じでしたね。自分の働きで誰かに「ありがとう」と言ってもらえて誰かの役に立てる実感…。仕事の幅が広がる度に増えていきました。信頼関係を積み重ねる人々も周りに増えていって、それが楽しくてしょうがなくて。学生バイトの頃からから「仕事って何て楽しいんだろう」って。これで報酬を頂けるなんて幸せなことって思ってたんです。
もちろんできなくて失敗することもトラブルも、悔しい思いをすることもあるんですよ。それ自体は苦しくても全体として仕事はすごく楽しかったですね。だからどこかにターニングポイントがあったとか、そう思う努力をしたのではなく自然にですね。

長嶋:
俺はもともと中学生くらいからニヒリストで「世の中くだらねえな」「何で生きてるんだろう」みたいな 笑。こういう価値観になったのは、仕事し始めてからですね。たまたま広告会社に入ったんだけど、たぶんそれは何屋でもよかったんじゃないかな。最初は自分で仕事を面白くする努力をしたけれど…この会社の中でできる枠、業界の中でできる枠って決まっちゃうじゃない。5年で限界を感じて転職を決意。もっとダイナミックな業界って何かなとそれがたまたま不動産だったんです。

大西:
仕事を切り離して考えるんじゃなく、自分と一体化させて仕事自体を愛して誇りに思うとか、何か美学と哲学をもって夢中で取り組むから成果が上がる…と思いません?

長嶋:
うん。そうだね。

大西:
成果が上がるから楽しくなり、さらにやりたいことが増えていく。その時には力がついているので、また面白い循環に入るっていう。

長嶋:
よっぽど人に迷惑かけるような事は別だけど…そうじゃなければ、仕事を楽しめないって非常にさみしいと思うんだよね。ブツブツ文句言いながら仕事するか、逆境でも改善する喜びを見出しながら面白がって仕事するのか。それが当たり前のようにできる組織、業界で仕事がしたい。もっと進化すると「この会社、この業界を自分がそういう風にしたい」と思うようになる。このように考え方、やり方を進化させてきたつもりでいます。


Q.長嶋さんと大西さんは経営上どんな役割分担になっていますか?意見が分かれることもあるのでしょうか?

長嶋:
価値観が共有できているので意見が分かれることはないですね。手段に関しては口出すことは基本ないです。聞かれた時だけ答えるくらい。よっぽど変なことをするなら別だけどね…笑。そういう話にはならないね。

大西:
役割分担で言うと、得意なことや性格がまったく違うので。長嶋さんは大きなビジョンを描くのが得意。私はどちらかと言うと大きなビジョンを描くのは苦手で「広げられた大風呂敷をいかに現実的にたたむか」っていう…笑。そういうのが得意なんです。

長嶋:
俺が広げて、大西さんがたたむ…笑

大西:
そう。あと私は丁寧に愉快に伝えることが好きで、マーケティングやPRが得意。長嶋さんは戦略を超えて強く広く発信をしていくのが得意なんです。もともとが「広報する側、される側」という立場で、今も何となく分担ができています。昔からそういう意味では一緒にやっているように見えて、ちょっと違う領域で役割分担をしているので、お互いの領域に口を出さないっていうのはありますね。長嶋さんは具体的な戦術とか、何をどう効果的に進めていくか、まわりの人をどうチーム編成していくかみたいなことはあまり…。

長嶋:
大西さんの言ってることがすごく細かいことにしか思えない笑。はい。よきにはからってっていうね。俺が言ってるのは「大体これぐらいの感じで」っていうね。

大西:
「大体」って投げられたのが、わけがわからないこともしょっちゅうで…。私が戦略を立てるために突っ込んで聞くと、長嶋さんは「どうでもいいんだよ、そんな細かいことは」って…笑。

長嶋:
組織のひな形みたいなもので、会社の中にいる人たちもお互いの性格・価値観で微妙にできることが違っている。どう最適に組み合わせるかにフォーカスすればいいわけで「何ができない」「ここができない」とかは見ない。そういうのはどうでもいい話で。お互いにできるところを積み重ねていけばいいんじゃないですかね。

大西:
ただ…少しはできないことをしてくれる仲間への配慮もね 笑。

Q.「経営者は孤独」とよく言われますが、お二人なので孤独ではないですね。

大西:
それはありがたいことにそう思います。他社の社長さんと話をしていると孤独だっていう話をよく聞くんですけど、おかげさまでそれはないですね。具体的にかえってはこないんですけど壁打ち相手がいて…。

長嶋:
あんまり聞いてないんだけどね。笑

大西:
ほんとそれ!案山子が立ってるくらいの気持ちでひとり壁打ちしてるんですけどね 笑 でもそのプロセス自体に自分で納得できるんです。

Q.今までに大きな経営危機はありましたか?

長嶋:
大きな危機はないけれど、一人で始めたさくら事務所から第二創業期の時に5人の役員で再スタートしました。結局いろんな理由で全員いなくなった。価値観が合わなかったとか。主にそれだね。最初はワッショイワッショイお祭りみたいにやってたんだけど、それがある程度うまくいくと次は「この前提で何やろう」って、次々行きたいんだけど「いやそこまで行きたくない」っていう人も出てきて。あるいはスキル的に追いつけない人もいる。

大西:
たった今はすごくいい組織ですけど対外的な状況も変わっていくので、フレキシブルに変わり続けないといけないですよね。

長嶋:
一般的な企業で起業して10年続くのは大体10%くらい。20年30年50年…もっと長く続くためには、理由やコツみたいなものがあって、それはたぶん変化し続けることなんだよね。だから「変化をする」ということを変えない。その上で理念とか価値観をかっちり作っておけば持続可能な組織になる。

大西:
変わり続けることは私もかなり意識していて、去年、一昨年と同じ状態だと危機感を覚えます。3年くらいのタームで抜本的に変えることもあるし。たった今は確かにいい人に恵まれていい社風で、ある種とても居心地よくやってるんですけど、だからこそあえて違うタイプを入れたり。組織として進化の痛みを伴って変えていかないと…とも考えます。


Q.さくら事務所の事業部はどんな経緯で増えていったんでしょうか。

大西:
さくら事務所の新事業は社員からの声で始まることも多いんです。例えば、マンション管理事業は、不動産のベテラン社員から「マンション管理の世界では、第三者としてのコンサルティング機能が必要」という提案があって「じゃあ作ろうよ」と誕生。手づくりで事業へと育ててきた経緯があります。

ちょうどその頃、さくら事務所のマンション内覧会サービスのご依頼者が増えて、さくら事務所を知ってくださってる方も増え始めたタイミングだったんです。担当一人で少しずつ始めたのが15年ほど前。社会を変革するかけがえのない事業になるので「組織として伸ばしていこう」と方針を立てて、事業の柱となるべく整えてきたのがちょうど私が役員になった今から7年ほど前です。そこから規模を拡大して成長したのがマンション管理事業部ですね。

長嶋:
不動産事業部は、また違う経緯だったね。

大西:
不動産コンサルティングは長嶋さんがおひとりで創業から始めていたけれど、インスペクションの普及にずっとがむしゃらにやってきたんですね。中古の世界では仲介業者にインスペクションへの理解が得られないという壁にぶつかっているとき…だったら自分たちが先頭を切って、仲介の段階でインスペクションをすすめる「理想の仲介の在り方を体現してみたらどうよ?」から始まったんです。

長嶋:
うちでやりやすいのは「今はないけれど5年後10年後には当たり前になるサービス」。あとは「既存のものだけど価値観を変えちゃうようなサービス」とか、新しいことを生み出していきたいんだよね。新しい商品やサービスって全部がうまくいくわけじゃなくて、何が求められて何がうまくいくかはわからないし。とりあえず思いつき、見切り発車で面白そうなことを常にやるように心がけています。

大西:
どちらかというと残らないサービスや事業の方が多いくらいですよね。ちょっと早かったっていうのもあったし、やり方がうまくなかったのもあるし、そもそもの見立てが間違っていたのもある。でも結局その時々の自分たちでできるリソースでやってみないと何事もわからない。さくら事務所は「いいと思うならまずはやってみよう、話はそれから」っていうスタイルです。やる前からリスクを並べたり、メリットは?デメリットは?って議論や検証を長い時間かけてすることはないですね。だから失敗も多いんだけど、それも失敗というよりは「今このタイミングで、このリソースで、このやり方でもうまくいかないんだね」っていうことがわかったから次に進めばよしっていうだけの話。

長嶋:
大抵の世の中の新しい商品とかサービスとか成功してるのはたまたまだよ。事前にマーケティングばっちりやって「これなら絶対いける!」ってiPhoneが生まれたわけじゃない。「いけるかどうかわからないけど、とりあえずこれで!」でたまたまうまくいっちゃったみたいなさ。その事実の背後にはたくさんのダメなやつがあって。その一個としてiPhoneがうまくいったっていうね。だから小さい失敗っていうか…致命的な失敗はしない範囲でチャレンジをたくさんする。経営的なコツとしてはそうだよね。

Q.ズバリ!さくら事務所で求める人財は?

大西:
自分の持てる可能性や自分自身の才能やクリエイティビティをフルに使って、世の中をよくしたい、誰かの生活をちょっとよくしたい、役に立ちたい…そういう熱い熱い、優しい想いを持った人と一緒に仕事をしたいなって思ってるんですね。自分が何のためにその仕事をするのか、何のために生きてるのか、何かに突き動かされる情熱を持っている人と仕事をしたいですね。その思いがあれば知識とか経験みたいなものって補っていけると思うんですよ。

あと具体的には…コンサルティングって属人性がすごく強い世界なんですけど、属人性は「五方よし」にならないと思ってるんです。ご依頼者様とさらに関わるご家族の未来に続く生活をずっとサポートをしていける…その方が困った時にはいつも「かかりつけ」の窓口になれることが私たちの存在意義でありたい。そのためにコンサルティングは属人的なスキルや個性をかけ合わせて適切なチームを組んだ方がご依頼者にとって安心できる。ともに働くチーム仲間へのリスペクトや思いやりをもってくれる人が、うちで長く仕事していけると思います。

長嶋:
これからAI化、ロボット化がどんどん進展していく。仕事の在り方はどの業界も変わっていくでしょうね。必要なくなっちゃう仕事もたくさん出てくる。それでも人間が必要な仕事にフォーカスしていきます。たった今やっている仕事が5年後、10年後、30年後続くのか?その時必要な仕事は何か?…そういうことを考えて実行できる人ですね。

大西:
組織と同じく個人も「変わり続ける人」って大事ですよね。今自分が発揮している仕事や専門性がすぐに陳腐化する時代です。どれだけテクノロジーが進んでも…というより進めば進むほど、いゆわるソーシャルスキルですね。人との関わり方、向き合い方。高い共感力と思いやり。絆を作りコミュニケーション広げる。こうしたソーシャルスキルの価値は増す一方だと思います。それから新しいものをインストールして自分自身が変わっていく柔軟性や、いつでも0から学び続ける力はさくら事務所だけじゃなく、これから社会で必要になっていくんじゃないでしょうか。

長嶋:
昔の電話交換手みたいなことを必死でやってても、いつか仕事自体がなくなっちゃうよね。一生やってても厳しいよねって話になっちゃうし。あるいはAI化、ロボット化が進んで人が働かなくていい時代になり、毎日「余暇ばっかり」になった時。生活のためではなく「人の役に立ちたい」とか無償の仕事をする世の中になるとするじゃん。最終的には一致するんだよ。きっとね。


Q.今後のさくら事務所の展望は?

大西:
さくら事務所が100年200年と「人と不動産のより幸せな関係」を追求して、やっていること自体は変わるかもしれないけれど、この思想自体が長く受け継がれていく会社になっているといいなと思っているんです。

具体的にこの10年20年でやりたいのは、さくら事務所っていう組織…というより思想「ネットワーク」が、世の中に必要な「誰かを少し幸せにする事業」を常に生み出すエコシステムとして育っていく環境を作りたい。このネットワークから多くのリーダーが出てまた新しい事業を生み育てていく…そんなふかふか豊かな土壌を作っていきたいと考えています。

長嶋:
一般的な会社には経営理念ってあると思うんだけど、それは大体お飾りになっちゃってて、誰も理念を言えなかったり、言えたとしても「そうは言っても…」みたいな仕事をしていたりする。だけど、さくら事務所はここを大事にしています。

もしうちに入って「経営理念とやってることが違うじゃないですか」という疑問があれば言ってほしい。あとは「五方よし」。自分もご依頼者様も会社も業界も、ひいては世の中全体がバランスよく良くなっていく「五方よし」を大事にしているので、これも「ここがダメじゃないですか」という疑問をどんどんぶつけてほしい。

そういう健全なクラッシュが常に起きているのがいい組織だと思うんだよね。時代や局面で価値観は変わっていくので。入った皆さんとすり合わせしながら、よりいい組織にしていかないといけない。そういう考え方の人は、さくら事務所に向いていますね。

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長嶋 修

1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、
不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。
“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”
第一人者としての地位を築く。
国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。
2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。
『100年マンション 資産になる住まいの育て方』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

大西 倫加

広告・マーケティング会社などを経て、2004年さくら事務所参画。
同社で 広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。
2011年取締役に就任し、 経営企画を担当。
2013年1月に代表取締役就任。
2008年にはNPO法人 日本ホームインスペクターズ協会の設立から携わり、同協会理事に就任。
2019年らくだ不動産設立。

不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティング、書籍企画・ライティングなども行っており、 執筆協力・出版や講演多数。

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