前回の座談会記事で最もギリギリの発言をしていた人物、さくら事務所が誇るカリスマホームインスペクター田村啓さん。YouTubeでもメディアでもその知識を存分に発揮されている、田村さんの仕事への考え方やプライベートについて、またもや入社2カ月の新人広報・堤が聞いてきました!
(編集・望月)
ヤバい人がいることを知った
―さくら事務所を知ったきっかけはなんですか?
大前提として、もともとさくら事務所は知ってました。知ったきっかけの背景があって、大学生のときに、ちょっと課外活動をやっていて、大学のあった長野には善光寺があるんですけど、その門前町で楽しいスモールビジネスを手がけている集団がいて、その集団の方たちと一緒に街に出て、余っている家をもう一度使う話や、使われていない土蔵を片付け、いらないものを整理したり。専攻していた研究も建築の歴史だったので、古い建物って好きだった。これが背景です。
―元々建築がお好きだったんですね。そこからどうやって不動産に興味を持つようになったんですか?
スモールビジネスの活動で出会った瓦職人が、善光寺の門前にある、めちゃくちゃでかい空き家をほぼタダで買った話を聞いて、「すごいっすね」と言ってたんですけど、当時バリバリの建築脳の僕としては、こんな素晴らしい家がなんで空き家でタダで買えたのだろうとすごく疑問を覚えました。
一緒に活動をやっていた仲間も住宅の資産価値にすごく興味ある子が多かったんですね。資産価値の疑問が芽生えているとき、ヤフーニュースでイギリスのすごく古いお城が何十億円で売買された記事を目にして、「あ、海外はそういう感じなんだ!」ってことに衝撃を受けました。なぜだろうと自分なりに調べていった結果、僕ら建築側が考えている価値と不動産取引は全然違うことに気づきはじめ、調べていった先に長嶋さん(現・会長)の書いていた記事に出会ったんです。
―そこで長嶋さんに出会うんですね!
はい。まだ業界の誰も言ってなかったんですけど、長嶋さんは記事のなかで、なんで日本の家に価値が付かないのか、「間違いなくそうだよね」って思うようなことを言ってたんですよ。そこで初めて長嶋さんを知ったんですね。ヤバい人がいるなと思って(笑)。でもそのときの僕の感情は、単純にめちゃめちゃ悔しかった。
―それはどういう意味でですか?
自分なりに考えて調べ、ある程度結論を見つけて、建築側にこの視点は全然足りないと思っていた先に、それをさらに洗練してはっきりと言ってる人がいて、めちゃめちゃ悔しかったんですよ。そこから調べて、さくら事務所の長嶋さんは過去にどういう発信をしてきたのか、今は何をしているのかを知ったのが、さくら事務所と出会ったきっかけですね。
子どもが生まれることが分かって転職を決意
―実際にさくら事務所に入社された経緯を教えてください。
さくら事務所のことは好きだったんですけど、大学卒業後は新卒採用がなかったので、さくら事務所に新卒で入ることは叶わず、古民家再生が好きだったので、新卒では前職の住友林業関連の会社に入社して楽しくやっていました。
転機があったのは、すごく尊敬していた同じ店舗の支店長と先輩が異動でいなくなり、次の支店長と、ちょっとウマが合わなかったんですね。そこで精神的にきてしまって、ちょうど同じ時期に子どもが出来たんですよ。子どもの存在がわかったときに、子どもが生まれたあと転職するのは絶対しづらくなると思って、先に転職をしようと思ったのが、さくら事務所へ転職する直接のきっかけとなりました。
―転職しようと思ったタイミングで最初に思い浮かんだのがさくら事務所だったんですね。
転職サイトでさくら事務所を見つけて、さくら事務所の採用ページにも応募条件は書いてあったと思うんですけど、見てもよくわかんなかったんですよ(笑)。正社員やパートナーってことも書いてあったので、「よくわかんない」と思って。
大西さん(現・社長)と採用面談で話したことも楽しい体験だったので、その面談で長嶋さんじゃなくて「大西さんが現場を見てるんだ!」と感銘を受けました。会社のトップの人がすごいバイタリティがあって、とても熱く経営をやっているのは、個人的にすごく良かったけど、それ以前にさくら事務所に入りたい気持ちがすごく強かった。
―大西さんとの面談はどんな感じでしたか?
大西さんとの採用面談も面談らしくない面談だったんですよ。ほかの何社も受けていたんですけど、他とは全然違ってました。他社はみなさん履歴書を紙で印刷したり、僕自身建築をやってきてたので、自分が作った建築事例だったり、社内のプレゼンテーションのコンペに出したものを出すような面談でした。でも大西さんは髪をガァーっとくくり上げて、上はTシャツだったと思うんですけど、ボロボロのジーンズを履いて、「ごめんごめん遅れた~!」と部屋に入ってきて、スマホをバァーって見だして。僕は「いま履歴書見てんだこの人」と思いながら、「うん!だいたいわかった!」みたいな感じだったんですよね(笑)。「最初ヤバいなこの人!」と思って(笑)。
―2人目の「ヤバい人」が登場したんですね(笑)
でも話をしてるときは、いわゆる面談ではなく、田村の人となりを真剣に聞こうとしてくれているとわかったり、会話のキャッチボールを楽しんでる感じがすごくしたのが新鮮だったんですよね。だから会話のキャッチボールで社員と向き合っているのはすごくいいなぁと思いました。
そもそもやりたいことが全然なかった高校時代
―そもそもなんで建築的なことをしようと思ったんですか?
まず、建築を学ぶかどうかを選ぶ前に、高3になるときに理系か文系かクラスを選ばなきゃいけなかったんですよ。それで理系にしたんです。でも理系が好きかではなく、男子は理系が多いから理系に行ったんですよ。逆に文系に行くと女子ばっかりのクラスなので、それもいいかなとちょっと思っていたんですけど(笑)。
―結構テキトーに選ばれたんですね(笑)
特に理系に思い入れもなく、受験になっても、別にやりたいことが全然なかったんですよね。無理やり先生に志望を書けと言われたら「土木かな?」ぐらいのノリで、その辺にいる高校生と同じだったんです。親からは親元を離れなさいってすごく言われていたので、当時は岡山に住んでいたので、関西は近いから東京の私立も受験してたんですけど、国公立の大学だとお金がかからないので、国公立を受験すると言ったとき、母親が信州に大学があるって話を振ってきたんですよ。母親の信州への策略が功を奏し、僕は信州大学を受けました。
理系の学部のなかで理学や化学はあまり興味がなく、じゃあ工学系?となったときに、機械システム科と情報工学科は興味なかったんですよ。でもそんな中で土木には惹かれ、「じゃあそれでいっか」と思って土木を選んだんですよ。
受験にも合格して、現在は1年目からコースも分かれてるんですけど、僕らは2年目から選択制のコースで、建築か土木かって分かれるんですけど、大学1年の夏に建築学科を専攻した高校時代の友人と一緒に、アートで有名な香川の直島に行ったんです。直島には安藤忠雄が設計したベネッセの地中美術館があるんですけど、むちゃくちゃかっこよかったんですよ。「建築すげぇ!」と地中美術館で思って。そこから建築を意識し始めたんですが、建築コースは結構いい成績じゃないと進めなかったので、ほんのちょっとひるみました。
でも建築いいなぁって思ってたし、自分も建築にしようと思って建築に行ったんですね。でも本当に勉強してなかったんで、下から2番目ってギリギリで滑り込んだらしいです(笑)。
―意外と明確にやりたいことはなかったんですね。
そうですね。無理やり美しいストーリーにしようとすれば、いくらでもできるんですけど、本心ではこんな感じでした。当時は全然やりたいことがなかったです。
―今の田村さんしか知らないので、今の田村さん見てるとやりたいことがバリバリありそうに見えますよね。
そうですねぇ。
―どこかでスイッチが入ったんですか?
入ったんでしょうね。僕は人生で5回くらい性格が変わってるんですけど(あくまで個人の見解です)、マインドセットを思い切ってガラッと変えたことが5回くらいあるんですよね。そのうちの1回は最近だったと思います。僕は引っ越しを何回もしてるんですけど、その度にモノと人をかなり断捨離してたんですよ。SNSで繋がってる人はいるんですけどね。友人関係をリセット…ってわけじゃないんですけど、大事な人と太く繋がることはすごい大事だと今になるとすごく思いますね。
後悔しない判断をしたい
―仕事で大失敗したこと、その後どう活かしたかを教えてください。
仕事では失敗しかしてないんですけど…(笑)。そもそも個人的には失敗と成功ってあまりないと思っているんですね。たとえ失敗しても、それが失敗かどうか10年後わかんなかったりするじゃないですか。あの経験がすごく活きたとか、「あー失敗しちゃった」って思っているのが無駄じゃないかって。
―大西さんも同じようなことをおっしゃってました。
自分が何か失敗したり、上手くいかなくて失敗することはあると思います。でもそのときどきでベストだと思えることをとりあえずやるしかなくて、何が正解かなんてわからないし、そもそも正解なんかないと思っていて。だから後悔しない判断をしたいと常々思っていますけどね。「やっておけばよかったなぁ」とは思うんですけど、そうするのが、きっと一番合理的なんですよ。
僕はそう思えるメンタルでいるマインドセットが大事だと思っているので、そのときどきで決断することを後悔のないようにしておく。そのためにいつも当たり前のことなんですけど体調を整えたり、ちゃんと寝ることが大事です。
―でも田村さんはいつもかなり忙しそうにされてるイメージがあります。
僕は徹夜をするたちなんですけど、のめり込んじゃって徹夜を繰り返すと、すごくおなかが弱く日々の生活で荒んでいくんですよね。だから体調が悪かったり、よくないコンディションにならないように、普段から体調管理に努めることが大事。これが僕の今の結論です。
―今の田村さんだからこそ辿り着いた結論という感じがしますね。長嶋さんについてなにか感じることはありますか?
YouTuberだと思います(笑)。真面目に答えれば、本当に旗を立てるのがすごく上手い。ピンポイントでここだよねって刺すのがすごく上手い。みんな世の中はここに行ったらいいっていう方向を「あっち」って指し示す人だと思ってます。今の世の中にある言葉に当てはめるんだったら、いわゆるオピニオンリーダーになると思います。羅針盤の向け方が、ズバッと核心をついて、ここだ!っていうそぎ落とし方が極められてると思います。感動するし、すごく悔しくもあるんですよね。僕は長嶋さんにはなれないとすごく思います。
※ちなみに、さくら事務所の公式youtubeチャンネルでは田村さんがメインの演者として大活躍中。チャンネル総再生回数は86万回を超えるなど、すでに立派なyoutuber?
趣味の話を聞いたら、妻との馴れ初めがはじまった
―趣味はなんですか?
個人的にはサッカーをずっとやっていたり、大学ではフットサルをやってました。球技全般が好きですね。大学は長野だったので山を登ったり、スノーボードもかなりやっていたので、ウィンタースポーツ、登山も好きですね。特に大学の研究室に入ってからは、3000m級に建ってる山小屋の研究をしていたので、山小屋の知識は相当詳しい。全国でベスト50くらいに入ると思います!(笑)。
―サッカーとかお子さんにやらせようとかはないんですか?
全然ないですね。僕、子どもにマジで興味ないんですよ(笑)
―意外ですね。
興味…ないですね。僕はなんで子育てをやってるのか自問自答しました。突き詰めてみたんですけど、最終的には、「僕しかいないから」って結論になるんですよね(笑)。そこにはいろんな社会問題が潜んでると思ってはいるんですけど。「親が教育をするもの」って価値観は少しおかしいと思っていたりはします。
極端な話、誰かほかに子育てをしてくれる人がいれば、僕は任せても構わないと本当に思ってます。何でそう思っているか考えたとき、突き詰めると最終的には妻と結婚した理由なんです。僕は妻に一目惚れして口説いて結婚したんですが、妻はすごく僕に持っていないものをものすごく持っている人なんです。
具体的なことを言うと、彼女はすごく体が強く、精神的にもタフで安定してます。反対に僕は波があるタイプなんですが、妻はすごく元気だし、仕事もむちゃくちゃ出来るので、一人の生物学的な人間の意味も含めて「すごい、この人!」と思っているんです。
妻と結婚の選択をしたとき、僕一人だと行けないような世界に、妻と二人だったら行けるなって思い、二人三脚でどういう世界に行けるんだろうとすごく楽しみにしてるんですね。これが僕の家族観の根幹にあります。少しドライな言い方をすると、そこには子どもも一要素であり、子どもがいると、二人の世界はどんな感じになるんだろうって。子どもはすごく可愛いですよ。彼らにはとても良い人生を送ってもらいたいと思っているので、親としてできる支援はもちろんします。
でも僕の中では、妻と二人で行けるところまで行ってみたい、楽しい人生を送るのが根幹にあるので、休みの日は子育てしていると以前言いましたが、子育てはわりとその中の一個でしかなく、そこまで育てている意識もないんですよね。…これ大丈夫かな?(笑)。
日常に違和感を感じることが出来るか
―どういうマインドを持った人がこの会社に向いていると思いますか?
これから入社を考えている人に絞った話をすると…何かに違和感を感じる人ですかね。僕の妻を見ていると、日常生活の中であまり違和感を感じずに生きているタイプなんですよ。世の中や子育てはこういうもんだよねって。世の中にあるルールをあまり疑わないというか、どっちかというと「それに乗っちゃった方が楽じゃん」も彼女は持っていて、そこは僕と全然違うところだと思っていて。
―そこは逆なんですね。
僕はいろんなことにすごく違和感を感じたり「それってほんと?」と思ったり。「こっちの方が良くね?」とすごく思うタイプなんですよ。それが良いか悪いかはわからないんですけど、いろんなことに自分なりのアンテナを張って、「これはこっちの方が良くない?」「こういう方が良いよね?」と、日常に対して違和感を胸の内にたくさん秘めている人が合うんじゃないかと思います。日常生活の中で自分の感情が動いた瞬間を大事にしていて、それを世の中の人に対して「こういう方がいいじゃん」ってことをサービスとして提供できる人がいいと思うので、自分の中で違和感がある人だなって気はします。そういう人が多い集団になるといいなぁとは考えてますけどね。
―さくら事務所のサービスもそういう違和感から生まれたものですもんね!
ちょっとおこがましい言い方かもしれないんですけど、日常に違和感を持つ人たちを応援できるような会社でありたいとは思ってるんですよ。マンション管理組合もそうじゃないですか。一人立ち上がって「これちゃんとやろうぜ!」って人がいたときに、僕らはそばに寄れるわけだし、インスペクションも言ってみれば既存の仲介の現場の中で心配や不安だと思った人に対して、僕らが寄り添う存在ですよね。
街づくりや自治体の経営の話も、「こうあった方がいいじゃん」と思った人たちをサポートできるような会社であろうとはすごく思っていますね。
田村さんは私が思っていた以上に純粋な人でした。このインタビューもとても等身大の自分を語ってくれたのだと感じました。自分を大きく見せたりしないし、人によって態度を変えない、違うと思ったことはきちんと言う。情熱的だけどどこか冷静で、こういう本気で世の中を良くするために頑張っている人が先輩にいるってありそうだけど意外と珍しかったりして。田村さんは弊社YouTubeを始め、色々なメディアでも情報発信しておりますので、このインタビューを読んで気になった方はぜひチェックしてみてください♪