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社会事業コーディネーターが見つめる、半歩先のミライ。(1)RCFをスタートしたきっかけ、政策づくりを支えること(藤沢烈)

こんにちは。一般社団法人RCF 代表理事の藤沢烈です。

RCFは「社会事業コーディネーター」という仕事に取り組む集団です。この連載ではこのRCFを立ち上げるまでの私の取り組みや経緯、そして社会問題を解決するための最近の仕事について、ぜひ、みなさんに知っていただきたいと思います。

「固い」と信じていた社会が、なんともろいのかと知った阪神大震災

私は、高校生までは理系でした。宇宙とか地球のことを研究する学者になりたかったんですね。中学、高校とも、ずっと地学の部活動に所属していたほどです。ですが、社会のことをもっと知りたいと思い、高校3年生の時に理系から文系に転換しました。

大学では社会学部に入ったんですが、社会学部は社会のことを勉強する学問だから大学に行かなくていいと勝手に考え(笑)、半分以上アルバイトなど「社会勉強」をしながら、同時に社会のことを勉強し続けてだんだん、社会の問題について考えるサークルや活動をするようになっていきました。

大学卒業の前に、社会問題について考える場所をつくりたくて、飲食店をはじめました。けれど結局、経済的に回らなくて店を閉じざるを得なかったんです。

そういう経験を踏まえて、長くビジネスを続けるためにはビジネスのことを知らないといけない、そしてその先、いつか社会問題解決に関わるために、2年だけ外資系コンサルティングファームに入社しました。2年後に辞め、社会問題解決の現場に入るようになりました。

ご記憶の方も多いと思いますが、今から22年前、阪神大震災では、強い揺れで神戸にあった高速道路が倒れてしまったんですね。この時私は20歳でした。テレビを見て、とても強いショックを受けました。「固い」と思っていた社会が、実はなんともろいものなんだと。

そして2011年3月11日、東日本大震災が起きました。

今こそ、社会を支える仕事がしたい。そう思い、私は独立してやっていた仕事をすべて止め、東北復興にフルコミットすることに決め、調査団体として、RCFの前身であるRCF復興支援チームを立上げました。

東北の真の復興には、外の力が不可欠。だから外と現場をプロとしてつなぐ、コーディネーターが必要

(2017年2月、「いわて三陸 復興のかけ橋 ネットワーク会議」にて。セクターを超えた多様な連携を取り持つ団体なので、ファシリテーターやモデレーターといった仕事が多いのも特徴のひとつ。)

RCFを始めて、すぐに気づきましたのは、「行政(役所)だけでは復興はできない」ということです。

被災された方がどんなことを一番希望されているか、みなさんご存知でしょうか。

それは、津波などで失われた住まいを取り戻すことです。

津波で壊れた家は30万件にもなっています。これまでに6年かかりましたけども、役所もがんばって、確かに多くの人には、住まいを用意できるようになっています。

ですが、住まいが手に入っても寂しい思いをする方は減っていません。被災された方の心を癒やすためには行政だけではなく、住民同士で支え合ったり、専門のNPOの支援が必要になったんです。

そうした心の復興というのは何年も何年もかかります。役所だけですと、2年ごとに担当者が変わってしまい、なかなか持続的に仕事を続けることができません。ですから、行政と民間の連携が必要だと気づいたのです。

こと東北被災地で大切な生業は何か。それは水産業です。津波によって2万隻あった船、また港や加工工場などが大変な被害を受けました。国もがんばって支援していましたが、今でも、7割以上の会社の売り上げが元に戻ってはいません。

これはどういうことか。2つの理由があります。

1つ目の理由は、人手が不足していること。2つ目の理由は、取引先がなかなか戻っていないことです。

一方で、売り上げが戻った企業を見てみると、新しい商品を開発したり、新しい売り方を工夫したりしています。その多くは、地域外の企業からの支援や、あるいはクラウドファンディングやプロボノなど、地域外の個人の力を借りています。

こうした、NPOや企業の力をお借りした、行政だけではできない復興。ここに必要なのが、間を取り持ち、共に働いて成果を出すためにプロジェクトを推進する、私たち「社会事業コーディネーター」です。RCFでは、約50人のコーディネーターが、東北をはじめ、全国で活動しています。

若い国会議員の政策づくりを、黒子として支援

さて、社会事業コーディネーターとして組んでいる、最近の取り組みのひとつを紹介します。

「こども保険」という政策のことは聞いたことはありますでしょうか。

国民の皆さんから広くお金を集めて小さなお子さんがいる家族のために使っていくことを、小泉進次郎氏をはじめとする若い国会議員が進めている政策のことです。

実は私は、社会事業コーディネーターとして、この若い議員たちの政策づくりを支援しています。

(「2020年以降の経済財政構想小委員会」にて。 小泉進次郎議員が委員長代行を務め、社会保障改革を念頭に労働、教育、保育、医療福祉といった分野で横断的に議論を進めており、RCFは2016年2月より、提言作成等で貢献しており、オブザーバーとして出席しました(左から2番めが藤沢))

関わるまで私もあまりよく知らなかったんですが、実は国会議員には、政策づくりを手伝うスタッフがあまり多くない、という実情があります。

選挙は忙しいですし、何か新しい政策を作ろうとしてもスタッフの手が足りない状況があります。

これまでは官僚が、そういった政策づくりを手伝っていたそうなのですが、それだとなかなか国を大きく変革する政策が出にくい、という課題感があるそうなのです。

部下でもなく、官僚でもない、中立的な立場で政策にかかわること。これがとても大事なことだと考え、社会事業コーディネーターとして政策づくりに関わっています。

具体的には、関わり方が2つあります。1つは政策をつくるお手伝いです。過去の政策について分析を行ったり、詳しい専門家をおつなぎしたり、あるいは政策の文章をつくったりもしています。もう1つは、一般の皆さんに政策を紹介したり、新聞やテレビにも取材いただいたり。最近では、インターネットでも政策を紹介したりしています。

そもそも、若い議員たちをなぜ応援しようと思ったか。それは「しがらみがない」ということです。

これまでいろんな代議士の方とお会いしていますが、代議士の皆さんは、特定の業界団体などの強力な後押しを受けている方が非常に多いです。自分の考えを仰るというよりは「代弁者」として活動しておられる。もちろん、それも国会議員の非常に大事な機能であることは言うまでもありませんが、いわゆる「しがらみ」になることも多々あります。

一方で、若い国会議員のなかにはこういった「しがらみ」が無い方も意外といるんですね。ただ、じゃあ「しがらみ」が無ければ良いのかというと、そういうものでもなく、若いゆえに現場のことを必ずしも十分知らなかったり、経験が少なかったりという部分も確かにあります。

とはいえ、そういった若い議員でも、国民を代表している方々ですよね。ですから彼らに、もっと現場のことを知ってもらうことは、社会を変えていく上で、とても大事なことだと思うのです。ですので、若い議員の皆さんと関わるようになったという経緯があります。

これからも、私は社会事業コーディネーターとしてたくさんの社会問題に関わっていきたいと思っています。社会事業コーディネーターの、藤沢烈でした。


*本記事は、6月11日放送「サンデーエッセー」(NHKラジオ第1)出演時内容をもとに構成しています。サンデーエッセーには3ヶ月に1度登場予定。次回は9月OAですので、どうぞお楽しみに!

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