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NPO(非営利団体、ソーシャルセクター)は、優秀な人がどんどん「普通に」集まる場になってほしい
こんにちは。RCF代表理事 社会事業コーディネーターの藤沢烈です。
私は社会事業コーディネーターとして、社会がより良くなるための活動に日々取り組んでいます。こういう仕事でよく聞かれるのが「生活できているんですか?」「お金は稼げているんですか?』ということ。
私たちRCFは一般社団法人、非営利事業。NPO(Non-Profit Organization)とも呼ばれます。(NPOは狭義では「特定非営利活動法人」の略としても使われます)
NPOとは一体、どのような仕事で、どういうビジネスモデルで、どのくらい残業しているのか?といった、組織の一端を知ってもらいたいと思い、仲間たちと最近、調査をしました。
私は、「NPOで社会のために働くこと」は、もっともっと世の中的に「普通」になってほしいと考えています。日本ではどうも、NPOで働くことは”聖人君主”じゃないとできないんじゃないか、というイメージを持たれがちなんですが、普通の人が当然のように、仕事の1つとしてNPOを選択できるような世の中にしていきたいのです。
今回行ったのは、「新公益連盟」というNPOのネットワーク組織による調査です。新公益連盟は、年間売上規模が平均3億円、従業員数平均が30人、日本のNPOの中では比較的大規模とされる非営利組織が多く入っているネットワーク。現在90団体以上が加盟しており、このうち44の団体が調査に応じてくれました。(ですので、日本全体のNPOの実態ではないことはご留意ください)
調査データはこちらから入手できます。
新公益連盟、「ソーシャルセクター組織実態調査2017」を発表〜平均年収は383万円、独り立ち時期は「2.7年」。NPOは「慈善活動の場」から「一般企業と遜色のない、キャリアアップの場」へ〜
一般企業と比べて年収面で見劣りせず、残業はむしろ少ない
この調査では、調査対象団体と事業規模や従業員数がほぼ同等になる、一般的な中小企業と、待遇や組織環境などを比較しています。
まず、多くの方が一番気になるであろう「年収」について。
一般企業の非役職社員の場合「292万円」に対し、調査対象団体では「339万円」。管理職を含めると「383万円」であることがわかりました。どうでしょう?大きく見劣りはしないのではないでしょうか。
一方で「いや〜それだけの金額をもらっているのなら、残業時間や土日出勤がすごいんじゃない?」という声も出そうなので、1ヶ月の平均残業時間も調べたところ「13時間」という結果となりました。一般企業では「22.4時間」です。1ヶ月で13時間ですから、1日1時間未満で収まっていることになります。
これには理由があります。NPOはもともと、女性が多い仕事場です。しかも新公益連盟のNPOは、子育て世代がとても増えています。そうすると日中に集中して仕事をこなし、夜はあまり残業せず早く帰宅したい、という方が少なくないと考えられます。
もう1つ。新卒でNPOに入った方が、独り立ちする時期についても調べてみました。こちらも一般の中小企業の場合「4.8年」に対し、NPOだと「2.7年」つまり3年弱で独り立ちする、というデータになりました。
これは、NPOが人が少なく、若くても早く活躍してもらわないといけない、という背景があるんですけれども、これは裏を返せば「NPOに就職すると、一般企業に就職した同年代よりも早く活躍できる」ともいえるでしょう。
離職率や人材育成など課題も
もちろん、全てにおいてNPOが優れているわけではありません。課題もたくさんあります。
たとえば離職率。一般企業では「11%」だったのに対し、NPOでは「34%」と高い数字になりました。優秀な人に入ってきていただけるのですが、離れる方も多い、ということです。見方によっては「NPOで活動したあとも、次のキャリアはちゃんと見つかる」ともいえますので、個人的には必ずしもネガティブな面だけではないと思いますが。また、人材に関する育成制度や研修などはまだまだ不十分です。そういう意味では、NPOに飛び込むにはそれなりの覚悟も必要だと思います。
しかしながら、この調査を通じ「NPOで働くこと」はもはや特別なことではないこと、NPOによっては、ある程度待遇面が整いつつあり、実は残業時間が少なく、独り立ちもしやすい、という側面もあるということを、知ってもらえれば幸いです。
非営利だから社会を良くすることにスッキリ集中できる
「なぜNPOで仕事を続けているのか?」と聞かれることもあります。
私は、以前は営利事業もやっていました。ただ、営利事業だと、最終目標はやはり売上利益を出さないといけない。社会のために良いことをやりたいのに、お金を優先させないといけない局面も少なからずあって、そこに自分はどうしても違和感がぬぐえなかったんです。スッキリと、社会を良くする仕事だけをしたいと思い、非営利団体で事業を続けています。
ただ、私がNPOの世界で仕事を始めた約10年前は、非営利団体はまだまだ給与水準が低く、自転車操業や自己犠牲の上に成り立つのが現実でした。ですが「給料低くても頑張れる」という人だけではなく、もっと多様な「NPOでも働いてみたい」と思った人が気軽に入れる場にしないと、社会のための仕事は持続しない、広がらないと思うのです。
自己犠牲の場、ではなくて「実力をつける」「キャリアアップする」場として、NPOを選ぶ。そんな人がもっと増えたら良いな、と思っています。
社会事業コーディネーターの藤沢烈でした。
*本記事は、12月3日放送「サンデーエッセー」(NHKラジオ第1)出演時内容をもとに構成しています。サンデーエッセーには3ヶ月に1度登場予定。次回は18年3月OAですので、どうぞお楽しみに!
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