領域を問わず、これまでに存在しなかった新しいサービスやプロダクトの開発に取り組むquantumには、非常に多様な専門性と経験を持ったメンバーが在籍しています。 "あらゆる才能を重ね合わせ、まだ世界に存在しないプロダクトをBuildする" このミッションを達成するため奮闘する、quantumメンバーのひとりひとりがそれぞれどんな思いを持ってこの場所に集い、日々を過ごしているのか取材するシリーズがこの1/q(キューブンノイチ)です。
第5回目に登場するのは、Design Engineerの竹腰美夏です。
竹腰 美夏 Design Engineer
●たけこし・みなつ コンピューテーショナルデザイン、クリエイティブコーディングを得意分野として、複雑なパターンやアルゴリズムに基づいた3Dデータや映像の制作、webアプリ開発などを手掛ける。ハード/ソフトウェア共にパラメトリックに可変する動的なデザインを実現することで、ニーズや要件の変化に柔軟に対応可能なプロダクト開発を心掛けている。
東京都立大学大学院修了(芸術工学修士)。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科博士課程中退。修士在学時から開始したフリーランスでのデザイン業を続けつつ、デザインコンサルティング、AIシステム開発ベンチャー勤務を経験し、2022年よりquantumに参画。
quantum入社まで、どんな道を歩んできた?
大学の学部時代は、プロダクトデザイン系の研究室にいたのですが、そこではプロダクトのデザインというよりも、良いプロダクトを流通させるシステムのデザインのようなことを行っていました。その後修士過程に進んでインタラクションデザインの研究室に入り、人とマシンの関係性の研究に取り組みました。
このころ、“実際に人が使うもの”を作りたいと思って(試作ではなく実用物として)、大学院を1年休学して、上肢障害者の方がいらっしゃるNPOのコミュニティで3Dプリンターで義手を作るプロジェクトに参加しました。このプロジェクトはすごく様々な気づきがあって、自分が作ったものがその人の身体の一部として受け入れられたとき、そのことにものすごく感動したのを覚えています。同時に、「これが私の身体だ」と思うことってどういうことか?身体を自在に動かせるとはどういうことか?といったことに興味を持って、認知心理学などにも触れるようになりました。
博士過程にも進んだのですが、そこで自分は、理論を考えるよりは何かを作る中で見つかる現象を集めることに満足できると思い、世の中に出ることを決めました。というよりも、何かものを作っていないと多分「死んでしまう」性質なので(笑)、「死なない」ためにずっと何かを作っているように思います。
quantumを知ったのは大学生の頃です。当時のwebサイトに載っていた工房の写真が印象に残っていて、博報堂系列の会社でありながらハードウェアの取り組みが多いということに興味を持っていました。
芝浦オフィス時代のquantumの工房とマシンルーム。現在の赤坂オフィスにも同様の設備がある。
2018年くらいまで大学院に在籍した後、デザインコンサルティング会社でデザインエンジニアのインターンとして働き始めました。そこでの仕事を通して、自分にはエンジニアリングの技術が足りないと感じるようになり、たまたま見つけたAI系のベンチャー企業に「この領域は未経験なのですが入れてください」と頼んで、入社させてもらいました。人工知能の開発を通して人間の知能について理解を深めたいという欲望もひそかに抱いていました。
もちろん人間の知能は複雑すぎるのでその欲望が簡単に叶うはずがありませんでしたが、そのAI系ベンチャーで働く中で、それまで独学でなかなか身につかなかったソフトウェア開発に関する知識が「理解できるスイッチ」が入ったみたいにどんどん理解できるようになっていきました。
その後しばらくフリーランスで活動していたのですが、そこで改めてwantedlyにquantumの求人が出ているのを見つけて、コンタクトを取りました。mitateという、AIを使ったデザインリサーチプロジェクトに業務委託でジョインする形で入ったのですが、プロジェクトが終盤にかかったころ、ほかのプロジェクトでも一緒にやらないかというお声がけをいただいて、段階的に入社することになりました。
quantumの第一印象は?
入社前に強くイメージしていたquantum像があったわけではないのですが、私の所属しているデザインチームをはじめquantumは全体的に「いいものをつくりたい」という想いが強い人が多くて、そこが素敵だなと感じました。
仕事だから、と、つい割り切ってしまうことってあると思うのですが、そこで諦めず、「いいもの」を作ることにこだわろうとしている感じです。皆さん、専門領域はバラバラですがそこは共通しているなと思います。
働く環境、普段の仕事の様子。ワークスタイルについて聞かせてください。
デザインチームでは週2回出社日が決められていますが、そのほかにも必要があれば出社することもあります。3Dプリンターなどの機材を使いたいとき、モニターでちゃんと色を見たいときなどはオフィスへ。黙々と作業するには家という感じで使い分けています。働く環境、普段の仕事の様子。ワークスタイルについて聞かせてください。
作業に没頭できる自宅のデスク周り
出社した時は、周囲とコミュニケーションをなるべく取るようにしています。デザインや仕様上の微妙なニュアンスなど、遠隔だとわざわざ言うことじゃないかも、ということを言えるのは対面コミュニケーションの良さだと思うので、そういうことを出社日に解決できるようにしています。
放っておくと集中、というか没頭してしまうタイプなので、自宅作業の日の方がいつのまにか遅くまで仕事してしまったりすることが多いです。
アフターワーク、オフの日。どんな風に過ごしていますか?
休日は、メディアアートなどの展示や、学生時代の同級生の展覧会を見に行ったりすることも多いですね。「この人にこの展示を解説してもらったら面白そう」と思った知人に声をかけて、一緒に見に行ったりします。特に出かける予定がない日は、趣味でアプリの開発をしたりしています。
quantumは学習も歓迎される環境で、いろいろトライさせてくれますが、業務の中で自分が触ったことがないソフトや技術をいきなり使ってみましょうというのはやはり結構難しいことだと思っています。なので、例えばこの技術は面白そうでちょっと使ってみたいな、と思ったものを触ることは趣味の時間でやるようにしています。いろいろいじってみる中で、表現できるものやできることが見えてくるんですよね。それであれこれ試したい、とやっているうちにいつの間にか時間が溶けていってしまうのですが。(笑)
友人と開発中の、ナマケモノがコップをたたくARアプリ
こちらも自主開発中の、mitateのバーチャル展示アプリ
サービスやプロダクトを通して作りたい未来の姿とは?
未来…そうですね。
今、明確に変えたいと思うようなこと、世の中に対して申したいようなこと、あまりないかもしれないです。私にとって今は肥しの時期、吸収の時期なのかもしれません。
これを作りたい、という明確な対象物があるというよりも、様々にアウトプットされたデザインがどのような試行錯誤を経てこうなったのか、そのプロセスに興味があります。どうすればできるかわからないものを、解法を探しながら取り組んでいくこと、それ自体が今のモチベーションですね。
吸収の時期を越えたら、何か作りたいもの、申したいことが出てくるかもしれませんが、いずれにしても私自身表に立つのが得意な方ではないので、作ったものを通して何かを伝えていくことができたらと思っています。権力や言葉で主張するのではなくて、デザインしたものや作品を通して人々に何かを伝えていくことができたらそれは私にとって理想的な世の中との関わり方です。
改めて、quantumってどんな会社ですか?
先ほども話しましたが、ものづくりへの情熱、いいもの/事業を作ることへのこだわりをデザイナーも、ビジネスサイドのメンバーもみんなが持っているのはとても好きなquantumのカルチャーです。
一緒に仕事をしていて面白いと思うのは、ちょっとハードル高めの無理難題を要求してくれるデザイナーですね。
特に構想段階においてはあまり自分のセンスを信用していないので、「こういうものを作りたい」「ここはこうしたい」「でもやり方がわからない」というデザイナーの構想に対して、それをなんとか実現しようと自分が実装していく方が、良いものを作れると最近感じています。
私がquantumに関わるきっかけになったmitateのプロジェクトでも、「ここはこうしたほうがいいと思う」とチーフデザイナーの門田がはっきりとデザイン上の目指す道を示してくれたので、「それをするにはどうすればいいか」を探しながら解いていくことで、最終的に良いアウトプットにたどり着けたと思っています。