職業、事業作家。(毎週月曜日更新予定)|KAZUHIKO KAWASHITA | 川下和彦|note
スタートアップスタジオquantum(クオンタム)のクリエイティブ担当役員であり、事業作家である川下和彦が、日々新規事業開発に取り組むなかで考えていることをまとめたマガジンです。
https://note.com/kazukawashita/m/mf634b5615c93
スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
新規事業開発を成功へと導くために、「未来の物語」を書く事業作家として働く中で考えていることを書き留めています。
前回は、プロジェクトの意思決定をする際、遠慮と忖度に流されて後悔するような決断をしないためにも、日頃から重要な意思決定を成功させる鍵となる勘とセンスを培っておくことが大切だと書きました。
今回は、その勘とセンスを磨くために、わたしが普段から実践している方法を紹介したいと思います。
勘とセンスは、物理的に目に見えるものではありません。ゲームのパラメーターのように、この人にはこれぐらい、あの人にはこれぐらい勘とセンスがあるというのが見えれば、人を説得するときにどれほど楽になるだろうかと思うことがあります。ましてや、その目に見えない能力を鍛える方法となると、さらに言語化するのが難しく、持って生まれた才能のように片づけられがちです。
しかし、確実に勘とセンスの磨き方は存在します。それは、「絵」で考えるクセをつけることです。別の言い方をするならば、判断後の未来のイメージトレーニング(以下、イメトレ)を繰り返すことです。
そんなこと当たり前にできるじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、本当にそうでしょうか。わたしが知る限り、自分が選択したことによって変わる未来を事細かに想像して判断している、という人はそれほど多くなく、「過去こうだったから、未来はこうなるだろう」というように、言葉で意思決定をしている人も多いように思います。
例えば、自身がプロジェクト責任者としてアプリを開発していて、ある時盛り込みたい機能に迷ったとします。そんなときは、すぐにユーザー調査をするのではなく、まず具体的に想定ユーザーが使っているシーンをイメージしてみます。そして、細部までイメージがわき、ユーザーが心底喜んでいる姿をイメージすることができれば、その機能にはチャレンジしてみる価値があると思います。
ところが、いまいちしっくりこない。イメージがピンボケにしか浮かんでこない。そんなときは、別の選択肢を取り上げて、また未来がどう変わるかをイメージしてみます。その未来のイメトレの繰り返しによってこそ、勘とセンスが磨かれていく、というのがわたしの考えです。
ただし、ここで1つだけ注意があります。それは、やりっぱなしにしない、ということです。未来のイメトレをした後、時が経ち、確実にその未来が現実になる瞬間が訪れます。
そのとき、その未来が過去に自分がイメージした通りになったかどうか、答え合わせしてみましょう。イメトレした未来が下絵だったとすれば、そこに現実となった未来を重ね合わせてみることで、どれだけ自分のイメージが的外れだったか、あるいは的を射ていたかがはっきりします。
それが外れていたとするならば、次回はその重なり合う部分がもっと増えるように、何度もイメトレを重ねます。そうすることによって、アーチェリーの選手が的当ての精度を高めていくように、ビジネスにおける決断の精度を高めていくことができると、わたしは考えています。
未来を絵で考えるクセをつける。ピンボケではなく、鮮明にイメージがわくまで考える。来るべき未来がきたとき、答え合わせを怠らない。そのようなイメトレと現実の答え合わせの場数を踏むことによって、勘とセンスが磨かれていくのではないでしょうか。
次回は、磨いた勘とセンスを使って、「ディレクションする」ということについて考えたいと思います。