スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
「事業作家」として未来の物語を書く中で得た気付きをまとめています。
前回は、新規事業のアイデアを出すにあたっては、「みんなのブレスト」ではなく、「ひとりの沈潜」に取り組むことが重要であると書きました。
今回は、さらに踏み込んで、ひとり時間を使って具体的にアイデアを生み出す方法について書きたいと思います。
まず、自分はアイデアを生み出すのが苦手だと思っている方がいらっしゃるかもしれません。でも、心配はいりません。アイデアの出し方にはちょっとしたコツがあります。それを学んで実践を繰り返せば、アイデアの出し方は上達していくものなのです。
アイデアが生まれるプロセスが目に見えないため、しばしばアイデアはゼロから生まれる。神様のお導きにより天から降ってくる。などと言われることがありますよね。しかし、そんなことはありません。わたしは既知のことを「原子」に、未知のことを「分子」に喩えています。つまり、原子と原子が結合して分子が生まれるように、既知と既知が結びついて未知が生まれるのです。
その際、頭の中が「シャーレ(実験で用いられるガラス製の平皿)になり、原子と原子を結合させます。そう考えると、既知がなければ、くっつくものがないので未知は生まれません。そうなると、いいアイデアを生み出すためには、できるだけたくさんのインプットをする必要になります。アウトプットの質を決めるのはインプット量だ言っても過言ではないと、わたしは考えています。
この考えに基づき、わたしはアイデアの生み出し方には、3つのステップがあると言っています。
それは、
・キロク
・キオク
・キカク
です。
まず、感動したこと、気になったことなどがあれば、それらを片っ端からキロクします。次に、そのキロクを脳にキオクします。すると、脳のシャーレにキオクが溜まるので、脳内であれこれキオク同士を組み合わせる作業が生まれます。その結果、キオクとキオクが結合して、これまでに無かったキカクが生まれるのです。
そのキオクとキオクの結合を生み出すのが難しいんじゃないかと思われますよね。そこで鍵を握るのが「締め切り」です。締め切りは「圧力機」のような存在で、キオクとキオクをグッと押し合わせて化学反応を起こしてくれるのです。ですから、わたしはいつも「今回は早めに企画を固めたい」と思うのですが、結局は締め切り前にブレイクスルーすることがほとんどで、こればっかりは今だにどうにもコントロールできず、いつも締め切りこそが神様だなあと思っています(笑)。
新鮮な食材を組み合わせておいしい料理をつくるのと同様に、新鮮な情報を仕入れられるよう、常に世の中にアンテナを張っておくと、お客さまにおいしいと思ってもらえるアイデアを生み出すことができるように思います。
いかがでしょうか。やったことがない方は、ぜひ感動したことや、気になったことのキロクからはじめてみてください。何度か実践しているうちに、きっとキカクが生まれる感覚に出会えるはずです。
次回は、同じく事業アイデアを生み出す際、quantumが大切にしている視点について書きたいと思います。