こんにちわ。
イタリア在住、リモートワークでオズビジョン採用アシスタントをしているサワダ・アキキーナです。
日本では3月から新卒就活が解禁という事で、街にはリクルートスーツを着た学生さんを見る機会が多くなっている日本の春。
私も採用アシスタントとして、日頃日本の学生さんと触れる事が多いのですが、その中では就活が始まる前からインターンやビジコンなどに積極的に取り組む学生さんが多く、大学生活を就職に向けた活動に重きをおく学生さんが多いことを実感しています。
さて、そんな日本の就活に慣れてる私ですが、イタリアの就職ってどうなの?
ということで、私の身近な人から聞いた話ですので、ごく個人的な見解ではありますが、
学生が就職するまでの道のりをざくっと聞いてみました。
まずは大学を卒業することに専念する
イタリアの学生は日本の学生と比べるとびっくりするくらいずっと勉強をしている印象です。
テストや課題など、やることが多く、アルバイトなどしている学生さんはほとんどいません。
イタリアの大学は入学時に試験は無いに等しく、卒業することが非常に難しいそうです。
また単位を取れば卒業できるというものではありません。
詳しいシステムは大学によって様々なので一概には言えませんが、ざっくり言うと
1.もうそろそろ卒業してみようかな…と意思決定し、教授に卒業したい旨を申告。
2.教授から与えられた課題(とんでもなく難しいらしい)の最終試験・卒論・プレゼンに向けて猛勉強
3ヶ月~1年以上かかることも。
3.上記の課題の最終論文を卒業式の場で論述する。
教授数名と卒業を見守る両親、恋人、友人を前に時間制限つきの論述を行う。
その場で論文の批評と点数を開示され、その点数が発表され点数記載の卒業証書が渡される。
この点数は今後の就職活動に大きく影響を残す。
が、時はすでに卒業式。点数が低かろうがその後は大学、教授とは離れ巣立ちの時となる。
なので、一般的に大学の一律の卒業式というものはなく、自分の意思と課題のクリア時期で卒業時期が異なります。
ちなみに2016年の大学卒業時の平均年齢は26.1歳だそうです。
引用: https://www.bergamonews.it/
卒業したらひとまず旅行
イタリア人は旅行のために働き、人生の豊かさを旅行で知ります。
1ヶ月くらいの長期旅行に行く人が多く、意識高い人は南国の島などでインターンを経験します。
(初夏に卒業を迎える学生がなぜか多いのはそのせい?)
旅行がひと段落したら就職活動
大学という後ろ盾なく一から就職活動を始めます。
何から始めるかというと
コネである。
少し古いデータですが、マッキンゼー&カンパニーがイタリアの若者の就職状況についてこのように発表していました。
就職のための支援体制の問題
30歳以下の求職者の80%は友人、知人、家族のネットワークを使い職を探し、公的雇用センターを通して職探しをする者はその3分の1程度にすぎない(ドイツでは公的雇用センターの利用者が80%を超えている)大卒の23%、高卒の43%が家族や友人を通して職を見つけている。
15歳から29歳までのイタリア人の若者で、公的雇用センターの紹介で就職した者はわずか1%に過ぎない。
引用:2014年 マッキンゼーリポート
そう、イタリアはなんといってもコネ大国
簡単なことでもコネがなければ難しく、難しい問題もコネがあればあっという間に解決する
なんてことも、大げさではありません。
あんなに必死に哲学を勉強してたのに…就職先は親のコネで見つかった運送会社の配達員…
そんなことは普通です。
(個人的にイタリアの学生さんは心理学や哲学など、深く難しいことを勉強してる人が多いように思います。)
ファーストキャリアが近所の工場の倉庫係やプールの監視員という友人もいて、その間に数年かけて本来やりたい職を探すのが現状のようです。
また、コネを作るためにインターンで無償労働する人も少なくなく、弁護士や会計士、建築士など、人気の士業を志す人は決められた時間のインターンが義務となり(100時間を超えるものが一般的)その後も経験をつむために数年のタダ働〜アルバイト並みの給料を覚悟し従事する。
イタリアですぐに仕事が見つかる職種といえば、エンジニア、薬剤師といった専門職だそうです。
また、新卒にもかかわらずFacebookやLinkedinと言ったSNSでの仕事探しもとても一般的です。
いきなり社会に放り出されて世界でも有数の就職難の環境に身を投じる学生。
しかも、イタリア社会は常に即戦力を求め、新卒はスキル不足という評価を下しているため採用には消極的。
そんな社会に対し「いつか景気が良くなるまで学生を続ける…」と、30歳くらいまでずっと勉強してる学生(日本だったらニート扱い)も少なくありません。
日本の学生さんのように、3年になったら就職を始めて、就職がひと段落したら卒論するぞ!という就活文化とは全く異なります。
そもそも失業率も高く、アルバイト程度の仕事は移民外国人の安い労働力ですぐに賄えてしまう現状。
豊かな生活を求め、コネなしで職を探すイタリア新卒の進む道は長く険しい。
こんなにも違う新卒就活戦線。
困難に違いはあれど、日本の学生さんは恵まれているなぁと切に感じました。