今回は、大学院での専門分野とは全く異なる領域の民間企業(オロ)に就職したメンバーの「就職活動」や「仕事観」に迫るコンテンツをお送りします!
橋岡 佑樹
マーケティングコミュニケーション事業部 マーケティンググループ
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 博士後期課程 中退。頭を活かす仕事を求めて、2019年 30歳でオロに新卒入社。
大手商業施設、大手自動車メーカーに対するデジタルマーケティング施策を提案するアカウント業務に従事した後に、マーケティンググループへ異動。
※ 本記事は、橋岡さんがアカウント職に就いていた際のインタビューです。(2021年時点)
研究の世界にも ”機械化” の波が確実に来ている。だから民間就職を選んだ。
ーはじめに、経歴を簡単に教えてもらってもいいですか?
あ、そこからいきますか? 経歴は傷だらけですけどいいです?(笑)
まず、20歳で大学に入りました。25歳に大学院に進学しまして、27歳に修士課程を終えて博士課程へ。で、30歳にオロに新卒入社という流れですね。
ー大学院での研究分野は何でした?
生命科学ですね。大学で精子の研究をしまして、大学院では受精卵の研究をしていました。
ーなぜ生命科学の分野に進んだんですか?
もともと医学部志望だったんです。父親が医者だった影響もあり、将来自分も医者になるんだろうなと思っていましたから。ただ、生命科学の分野に進んだのは、医者として現場に立って患者さんを診て治療するよりも、抜本的な研究をする方が命をより多く救えるんじゃないかという考えからでした。
ー大学院での研究はどうでしたか?
生命科学の分野では、研究者が人体に関する事象やメカニズムを新たに発見することが比較的よく起こります。その意味においては医学に貢献している感覚は生まれやすかったです。ただ、論文で発表した内容が実際の医療現場で実用されるまでには長い時間がかかります。基本的な研究に5年10年、そこから薬の開発に5年10年という感じで、実社会で効果が現れるまでにはとても長い年月がかかります。研究のモチベーションを保っていくためにも、個人的にはもっと早く効果を感じたいというのはありましたね。
ー橋岡さんが初めて発見した事象や、命名した事象ってあるんですか?
私が命名した事象はないですね。ただ、「こういうことが成り立つだろう」と言われていたことを実験観察で確かめて発表したりしていました。
少し専門的な内容ですが、細胞が分裂するまでの一連の事象を『細胞周期』といいます。細胞が分裂するためには、DNAを2倍に増やして分割しないといけないんですね。で、DNAを複製するときには、いろんな遺伝子が出たり入ったりするんです。そこで起こる事象を細かく観察して「こういうものが多く出現するとか」「こういうものが消失する」とかを明らかにしてました。
研究は基本的に仮説検証の繰り返しで、「◯◯が成り立つということは、それ以前の状態は▲▲なのではないか」と仮説を立てて、それを調べる手法を開発して、実験をして・・・という流れを繰り返していくというものでした。
ー博士課程の後、アカデミックの世界で働く未来もあったと思うのですが、どうして民間企業への就職を考えたんですか?
私がいた生命科学の研究は、人が手動で実験や調査を繰り返していくことが比較的多い分野です。でも、ここ10年で機械化・自動化の流れが圧倒的に進んでいます。そう遠くない将来には人間がやるべきことはどんどん減っていき、自分のやることが限られていくような感覚が強くありました。
例えば最近の話だと、「PCR検査」ってよく聞くと思います。私が大学に入った頃、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、人間がひとつひとつ手で作業を行っていました。ただ、私が学生だった間にもどんどん機械化・自動化が進み、結局いまではほとんどの工程を機械が早く正確に大量に実行できるようになっています。
そんな機械化・自動化の流れを目の当たりにすると、私がやっている作業的な部分はどんどん機械に置き換わって、ゆくゆくは「考える仕事」しか残らないだろうと思いました。でも「考える仕事」は、アカデミックの世界だけにあるものでないし、民間企業でも楽しめる仕事はありそうだと思い、就職活動を始めました。考える能力には一定の自信もありましたし、考える分野や対象を変えることで気持ちを新たに楽しめることもいろいろあるだろうと思っていました。
「技能を活かす仕事」か、「頭を活かす仕事」か
ー就職活動ですが、学部生や修士課程のときにはしましたか?
いえ、しなかったですね。強いて言えば、友人たちがどんな会社に就職したのかをチラ見した程度でした。
私は博士課程2年生の夏くらいから就職活動を始めました。
ー夏からということは、就活生向けのインターンに参加しました?
インターンは1回参加しましたね。ただ、年齢的なものが邪魔を…
ー年齢制限?
そうではなく、インターンに参加する人って若い方が多いじゃないですか。その中に踏み込んでいくには、私の中の変なプライドが邪魔をして(笑)
ーちなみに、夏以降はどのように就職活動を進めていきましたか?
なんと言いますか、「総当り」のようなことをしてましたね。興味のある分野の知っている企業を全部挙げて、それをEXCELにまとめて連絡先も一覧化して、上から電話していきました。電話口では人事の人に「どんなことやってるんですか?」みたいな質問をぶつけていました。
ーえ? そんな昭和な感じ? というかネットで調べてよ(笑)
いや、ちゃんとネット見て調べていましたよ。でも、ネットだけでは集まらない情報や人の感覚的なところを重視していたので。
ーなるほど。でもEXCELにまとめて上から総当りって、大変じゃないです?
研究では遺伝子が何億個とあって、ものすごいデータ量のEXCELで処理していたので「企業100社とか余裕」という感覚でした。「就活EXCEL、すぐ開くじゃん」みたいな。研究のEXCELはスパコンじゃないと開かないのがいっぱいあったので。
ー就活ではどんな分野を見ていたんですか?
大きく2つあって「技能を活かす」か、「頭を活かす」かで考えていました。「技能を活かす」というのは、これまでの研究で培ってきた技能の中で、機械化や自動化の波に呑まれないだろうというものがいくつかあり、それを仕事にする方向性です。例えば、実験動物を育てるとか、特定の研究に必要な解析プログラムを作る、とかですね。
「頭を活かす」というのは、ざっくり言うとコンサルティング関連の仕事ですね。戦略コンサルとか、シンクタンクの社会基盤コンサルとか、ITコンサルなどの仕事ですね。
ー就職活動を進めていく中で、「技能」と「頭」、どちらにするか悩みましたか?
就職活動を始めたときから、「頭を活かす仕事」をしたい想いが漠然とありました。一方、「技能を活かす仕事」は特殊技術なので、特定の分野にニーズがあり続けていて、それを長く仕事にしていくこともできると感じていました。ただ、自分にとって何が幸せなのかを考えていくと「頭を活かす仕事」の方がいいかなと思っていました。
私の好みの話ですが、頭を使う対象は「わからないものの方が面白い」という感覚があるんです。なので「頭を活かす仕事」をするなら、対象がどんどん変化していくものの方が面白いと考えているんです。ただでさえわからないのに、そのうえ対象がどんどん変化してしまうとしたら、もう一生飽きないじゃないですか(笑) それをちょっとずつ、ちょっとずつ理解しながら仕事する感じがいいんです。
で、「マーケティング」と「Web」は、根本的に変化が激しい領域だとを思っていたので、私の好みにあう分野だなと感じていました。
オロとの出会い、そして入社に至るまでの変遷
ーオロはどこで知ったんですか?
はっきりと覚えているんですが、それは27歳の時で、中学高校時代の友人の結婚式で知りました。新郎が働いている会社がオロでした(笑)
就職活動の中でマーケティング支援の会社を調べていくうちにオロがでてきて、「そういえば、オロにあいつがいるな」と思い出して、EXCELリストに友人の連絡先を入れて、すぐに話を聞くことにしました。
ーすごいご縁ですね!
その友人からはフラットに企業の話を聞くことができました。企業のいいところと悪いところ、メリットデメリットをいろいろ聞くことができて、その情報がとても参考になりました。会社説明会に参加しても、人事の人はだいたい良いことしか言わないですから。
ーいやいや、そんなことないですよ(汗)
責めているわけじゃないですよ(笑) 人事が会社の魅力を伝えることは大切だと思います。ただ、私の場合は年齢が年齢なんで、30歳の新卒で企業選択を間違えるわけにはいかなかった。ゆっくりと仕事をしている余裕もないので、早く実力をつけてステップアップできる環境であることが必須でした。
ー友人の話を聞いた上で、オロの選考を受けてギャップは感じましたか?
私は世の中の採用サイトとかでよく見る「アットホーム」という言葉を基本信じていない人間なので、職場というと殺伐とした感じを想像していました。でもオロを受けてみて「あ、こういうのをアットホームっていうんだ」って思いました(笑)
ーオロを選んだ決め手は何でしたか?
「分野」と「人」ですね。「分野」は、難易度が高くて変化が激しいマーケティングの仕事ができるということですね。「人」は、ペースがあうといいますか、私の言いたいことを上手に汲み取ってくれる人が多くて、話がしやすかったところですね。
ー現在はどんな仕事をしていますか?
大きなクライアント専属でデジタルマーケティングの支援を幅広く行う仕事ですね。アカウント(営業)なので施策の提案が基本的なワークですが、施策の結果についても当然責任をもつので、効果分析や考察もおこなって、次の提案につなげていきます。
入社前にイメージしていた仕事とギャップはほぼありませんが、年中通して働いてみると季節性があることに気がついたり、地域ごとの細かい特性に違いがあったりと、いろいろな気づきと学びがありますね。
大学院生の「論理的思考力」はビジネスで通用する?
ー研究で得たものが仕事で活きていると感じることはありますか?
私は研究で数値を扱ってきたので、数値に対して抵抗がないことがそれに当たります。理学系の大学院生は統計学をかじることが多いと思いますが、こういった数値を扱う経験によって身につく感覚、例えば「この差に有意性はあるか、ないか」みたいなことが感覚的にわかるのは、営業をするにしても、もっているに越したことはない感覚だと思います。
ー大学院生が培った『論理的思考力』はビジネスでも活きる、というフレーズをよく耳にしますが、実際に働いてみてどう思いますか?
論理的思考力、雑に言い換えると「自分なりのロジック(筋の通った話)」を構築できることは大切だと思います。でも、「自分なりのロジック」を扱う場面において肝となるのは、構築できることよりも、その筋道をデータや裏付けをもって人に説明できるかです。極論、「自分なりのロジック」を構築するのは誰でもできます。その上で大学院生が得意なところを挙げるなら、そのロジックを構成するデータや裏付けを集めることを苦としない、というところですかね。ひたすらに論文を読み漁って、あーでもないこーでもないと言いながら自分の論理を組み立てているので、情報を掘ることを苦としないということが言えるかなと思います。
ーなるほど。では、その「情報を掘る力」が活きた場面はありますか?
あまりいい例が浮かばないですね。。ただ、マーケティング領域の仕事において、何かを調べることは非常によくある行為ですし、特に違う畑から来た私は専門知識を大量にインプットし続ける必要があったので、書籍やWebメディアの様々なテキストを読み続けてきました。マーケティング領域で「自分なりのロジック」を構築するために情報を掘り続ける体力を持ち合わせていたことは良かったなと思います。
ー研究とビジネス、両方に携わって感じた印象的なギャップはありますか?
ビジネスの世界は「人の想いが強い」という感覚ですかね。研究では普遍の原理を探すことが目的だったので、事実をクールに追いかけてきました。が、ビジネスでは私が想像していた以上に「人の想い」でいろいろなものごとが動くんだなと感じています。
具体的には、キャッチコピーひとつでマーケティング施策の効果が全く変わってしまいます。一方、過去に効果が大きかったでコピーでも、それを短絡的に流用したりすると全く効果が出ないなんてこともありますし。マーケティングは面白いですね。
ー就職活動をしている大学院生の中には、入社時の研修や育成について気にされている人も多いかなと思います。橋岡さんが30歳でオロに新卒入社してからやってきたことを振り返ると、そのあたりはどうですか?
正直、研修とか教育とかそんなに心配しなくていいのかなと思います。私自身、全く専門違いの分野に就職したのですが、HTMLとかCSSとかWebとか、わからないことは調べて学習しながらやってこれています。
新卒で入社すると研修期間があって、研修のときには調べる時間もあるし、わからないことはわからないと言って教えてもらうことができる。
質問する時のコツは、自分の答えを最低ひとつもって聞きに行くことです。「わからないなりに調べてこう考えたんですが」と切り出せばみんな優しく教えてくれます。さらに言えば、答えはひとつとは限らないので、いろんな人と話す機会をつくることはとてもいいことだと思います。
ー新卒入社をすると「同期」ができると思いますが、年齢差もある中で馴染むことはできましたか?
就職活動中のインターンでは無駄なプライドが邪魔しましたが(笑)、オロの同期とはスムーズに馴染むことができました。オロの新卒には大学院(修士・博士課程)出のメンバーも比較的多くいますし、みんな優しいです。年上の側(私)が敬語の扱いを気にしなければ、みんなとフラットにコミュニケーションを取れて、心地よい距離感で付き合うことができます。
アカウントの仕事は楽しい?
ー約2年働いて見えてきた、アカウントのいいところは?
推しポイントとしては、提案の自由度が高く、顧客のニーズや課題に対してアウトプットとしてできることの幅が広いということですね。たいていどの企業にも得意領域があるので、仕事としてできることには限りがあります。が、オロの場合はそのできることの幅がかなり広いですね。マーケティング施策と一口に言っても、いろいろな広告媒体を扱っていたり、Webを制作していたり、はたまたデータ基盤となる業務アプリケーション作ったりと、アウトプットのあり方が多様です。
あとは、それを実現できるかは自分のアンテナの張り方と巻き込み力次第ですね。エンジニアやデザイナーなどの自分と異なる専門職のメンバーへ相談すると、アイデアを広げてくれるだけでなく、ちょちょっと手を動かしてサクッと作ってくれたりして、実現に向けた流れが突然生まれるなんてこともありますね。
ー逆にネガティブなところは?
受動的な姿勢では、なかなか身につかないことが多いというところですかね。業務の中でその周辺領域の知識をキャッチアップしたり、ともに働くメンバーの得意領域や実績を知っておくことでその人に相談して適切な情報収集を行ったりと、能動的に情報を集める工夫がとても大切ですね。
ー橋岡さんは今後どんなことを追求していきたいですか?
アカウントを極めていくのがまず最初にやるべきことですね。その先のキャリアとしてマネジメントする立場を目指していきたいです。マネジメントをやるようになると、今以上に考えるべきことが多くなると思いますので。現場のことを十分に理解してマネジメントラインに入りたいですね。
ー最後に、アカウントの仕事は楽しいですか?
考えることが尽きなくて飽きはまだ来ていません。自分がイニシアチブを発揮して推進することで、案を案で終わらせず実現させられるのはとても手応えがあって楽しいですね。
一方で営業職なので、対人スキルも磨いていく必要があります。ただ、それも捉え方次第なので、どうやったら相手にうまく伝わるのか、どうしたら相手が前向きに提案を受け入れてくれるのかなどを、相手の立場に立って状況を俯瞰してニーズを的確に捉えようと考え続けられる人は絶対に楽しめると思います。頭をフルに使って相手の心を動かす仕事がしたい人はぜひアカウントに来てほしいですね。
ーありがとうございました! 本日は博士課程を飛び出したメンバーがどんな就活をして、どんな仕事を楽しんでいるのかを具体的に知ることができました!