特集/地域リハ 地域リハビリテーションはどこまできたか
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http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r091/r091_002.html
在宅リハビリテーションの現場では機能回復,社会参加,家族支援…さまざまなリハビリテーションの形があります.地域リハビリテーション(Community based Rehabilitation)の魅力とともにひゅっぐりーの取り組みを紹介してみたいと思います.
地域リハビリテーションは高齢者や障害を抱えている方も住み慣れた地域で暮らし続けられるようにすることを理念としてリハビリテーション活動を行うことを言います.その内容は直接的にリハビリテーションを提供することだけではありません.
直接的な関与としては,障害発生予防の推進や在宅リハビリテーションですが,組織化に関する活動なども含まれており,急性期ー維持期への円滑なサービス提供システムの構築や地域住民を含めた教育支援,啓発などが主なリハビリテーション活動となっています.
国連によるリハビリテーションの定義 「身体的,精神的,かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって,各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し,かつ時間を限定したプロセスである.」
リハビリテーションはプロセスで,リハビリテーション専門職だけで取り組むものではありません.
日本ではリハビリテーション職というとPT,OT,STがイメージされますが,海外ではそうではなくリハビリテーションというとSWを中心としたチームが想像されます.多様な構成員で地域全体に働きかけていく視点が必要になります.
ひゅっぐりーが取り組む地域リハビリテーション
退院直後集中的リハビリテーション
訪問看護ステーションでは退院直後など頻回なモニタリングを要する場合に医療保険による訪問サービスの提供が可能です.ひゅっぐりーでは日常生活に強い不安を抱えている方や退院直後の改善可能性が高い方へ集中的リハビリテーションを提供しています.
実際に欧州では脳卒中者や人工関節置換術後患者などの対象者へ術後,治療後早期に退院を促し,退院後集中的に訪問リハビリテーションを提供する仕組みがあります.早期退院後リハビリテーション支援システム Early supported discharge (ESD)は在院日数短縮,死亡率低下,自宅退院率増加,長期的なADLとQOLの改善に有効であることが報告されており,日本の脳卒中ガイドライン(2009)でも行うことが強く推奨されています.
退院後1ヶ月ぐらいして落ち着いたらリハビリを始めましょうか.なんて説明がまだまだなされていますが,退院直後は転倒や再発のリスクが非常に高まるため,その間に支援の量が乏しい状態である場合プランを見直す必要性があります.
再入院予防にはは3日以内のプライマリ提供者のモニタリングが必要で,かつ1ヶ月間程度の高頻度の介入のみが有効とされています.非常に難しい再入院課題への予防策を良質共に検討していけねばなりません.
退院直後において早期に社会に適応していく視点も合わせてひゅっぐりーでは在宅リハビリテーションを提供しています.
介護予防・地域への教育・啓発
ひゅっぐりーは桜井市朝倉台という住宅地に位置しています.町内会に入会し,町内会活動を共にすることもあります.
医療機関というのは敷居が高いもので,身近な場所に相談できるところがある,相談できる人がいると言ってもらえるよな存在を目指しています.
月に一度の介護予防教室や啓発活動としての講演会などさまざまな取り組みを行っています.
地道な活動を続けていると町内からの相談事が増えてきます.地域の実情に合わせた支援を考えるきっかけにもなっています.
私が地域リハビリテーションを志したきっかけ
地域リハビリテーションには多様な視点が必要です.機能回復だけでなく,活動・参加を促進する視点,地域全体のマネジメント力が求められます.
そんな地域リハビリテーションを私が志したのはある脳卒中当事者の声がきっかけでした.
徳島県では毎年阿波踊りが開催されますが,そこに脳卒中者が全国から集まる連があります.そこで出逢った方が地域リハビリテーションの魅力を教えてくれました.
介護保険もまだない中,地域でリハビリテーションを受けられる体制をつくろうと奮闘される姿に感銘を受け,地域リハビリテーションを志しました.当事者と支援者が協働し,地域の実情に合わせた地域リハビリテーションを創造したいと思っています.
日本の地域リハビリテーションはまだまだ発展途上です.地域ケアの視点も四半世紀遅れ欧州から導入していることを加味するとまだまだ諸外国の取り組みを参考にしながら今ない取り組みを創っていかねければなりません.
人は日々歳を重ね,いつ障害を負うかわかりません.予防や治癒だけでなく,病や障害を得てもなお住みたい場所で暮らし,社会の一員であれるまちづくりをひゅっぐりーは続けていきます.