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経営理念は必要ない。仕事も遊びも「やるならとことんおもしろく!」

多くの企業がミッション・ビジョン・バリューといった経営理念を重視する中、
「やるならとことんおもしろく!」
という、たった1つのシンプルなスローガンを掲げて成功を収めた企業があります。

NKインターナショナルの代表取締役である木田直樹さんは、北海道十勝の1軒の携帯ショップから始めた事業を、北海道を代表する企業に成長させました。
「かっこよさ」を追求する意地とプライドを胸に、さらなる未来を見据える木田さんにインタビューします。

【人物紹介】

木田 直樹(きだ なおき)

株式会社NKインターナショナルなど4社の代表取締役社長。
2023年にモバイル事業を北海道・関東で20店舗に拡大し、幾度となく優良オーナーとして表彰。
老舗企業のM&Aも手がけ、雑貨・アパレル、飲食事業、ネット型オーダーアパレルブランドやライブラリーラウンジ、ライブ配信採用サービスを展開。
健康経営優良法人(大規模法人部門)に2021年から2024年まで連続で認定。
著書に『地方からつくる新しい経済圏 新ローカルベンチャー経営』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

「かっこよさ」が最高のブランディング

ーーまずは、NKインターナショナルの事業内容と創業から現在までの経緯を教えていただけますか?

私の会社では今、モバイル事業を中心に、飲食、アパレル、IT、採用動画制作、ソフトウェア開発など、多岐にわたる事業を展開しています。小さなモバイルキャリア取扱店から始めて、人材の能力を活かしながら拡大してきました。


ーー起業のきっかけは何だったのでしょうか?

札幌の専門学校を卒業した後、芸人を目指して東京に出ました。ですが、成功した芸人のパフォーマンスを見て「ここでは勝てない」と思い、芸人への道を諦めました。

北海道に戻り、地元の携帯ショップに入社した私は、そこで営業成績を上げたことで、この商売が自分の天職だと感じ、自分のお店を持ちたいと考えるようになりました。

某キャリアの高いブランド力に惹かれていたこともあり、キャリアの正規ショップをやりたいと考えているときに、帯広の隣町にある幕別町にキャリアショップがないことに気づき、十勝にお店を出すことを決意しました。ところが、当時私は25歳で経営の経験もなく、キャリアに直営ショップ出店の相談をしても相手にされませんでした。そこで最初は、正規店ほどの支援やブランド力を持たない、キャリアの商品の「取扱店」として1人で事業を始めることにしました。


ーー最初の店舗を立ち上げてから、事業が軌道に乗るまでは順調でしたか?

お店を出すからには、ただの販売店ではなく正規のキャリアショップに見せようと考え、看板をキャリアショップに似せて「○○ “専門”ショップ札内店」としました。オープン前日にキャリアの関係者には怒られましたが、「明日がオープンなんです!」とお願いして店をスタートさせることができました。

看板だけでなく、対応もキャリアショップと同じにすることは簡単ではありませんでした。特に大きな問題は、キャリアショップで使われているシステムを導入できなかったことです。そこで、お客様から見えるカウンターにダミーのパソコンを置き、手続きが完了したように見せた後、バックヤードでアナログな方法で手続きを行っていました。

内側はアナログでも、外側ではキャリアの最新システムを使いこなす様子を演出し、お客様にかっこいい姿だけを見せることにこだわっていました。その結果、私の店は北海道内でトップレベルの販売成績を上げ、4年後には「正規店にならないか」と声をかけてもらえるようになりました。お客様に見せる部分の「かっこよさ」を貫く精神は、事業を拡大しても持ち続けています。


​ーー私も店舗を拝見しました。とてもお洒落で、携帯のキャリアショップだとは思わなかったです。本社ビルも洗練されていて、とてもかっこいい印象です。ブランディングも意識されているのですか?

ビルや店舗の内装、スタッフの服装、接客など、すべてにおいて「かっこよさ」にこだわっています。それを見た人に「かっこいい!」と感じてもらうことが、シンプルかつ最も効果的なブランディングだと思っています。

全てのスタッフにスポットライトが当たる企業へ

ーーNKグループには経営理念がないと伺っています。

経営理念はありませんが、「やるならとことんおもしろく!」というスローガンがあります。そこには、仕事も遊びも楽しんで一生懸命取り組んでほしいという想いを込めました。これは、私が小学校から高校まで野球部に所属していた経験が基になっています。辛い練習も楽しさを見つけながら取り組み、一生懸命努力した結果、感動を味わえる。この感覚を社員にも感じてほしいのです。

野球をやっていない人でも、学生時代に同じような体験をしていると思います。例えば、学園祭で遅い時間まで一生懸命協力して、発表する作品をみんなで作り上げた経験です。困難や感動を分かち合うことで仲間との絆が生まれ、時間が経ってから、その仲間たちと当時の困難を笑い合える関係になっている。

社会に出ると、学生のときのように仲間と困難なことに一生懸命取り組んだり、それに対してみんなで喜びや感動を分かち合ったりする感覚を忘れてしまう人が多いと思います。私はその感覚を体験し続けられる組織を作りたいと考えています。


ーー今の時代、ビジョン・ミッション・バリューなどの経営理念をしっかり創って伝えようという流れもありますよね。

考えなくてもすぐに理解できる、とことんシンプルなメッセージにしたかったんです。多くの組織では、経験豊富な50代や40代がいて、若手がそのノウハウを学ぶ形式が多いですが、うちでは従業員のほとんどが20代です。

まだ社会に出て間もない20代のスタッフは、基本的な業務だけでなく社会人としてのスキルも身につけなければなりません。そこに複雑なミッション・ビジョン・バリューを伝えても、若手には響きませんし理解しづらくなります。だから、1つの明確な目標に向かって夢中になれる、シンプルな言葉を選びました。


ーー若手を育てる上で意識されていることはありますか?

まずは優先順位を決め、スタート地点を設定してあげることです。1つの仕事を徹底的にやることで、自分の得意な部分が見えてきます。そうすると自信がつき、最初は10個ある業務のうち1つか2つしかできなかったことが、いつの間にかバランスよくこなせるようになっているんです。


ーースローガンの言葉はシンプルでも、独自の哲学があるように感じます。

言葉が多いと、それに縛られてしまいます。スタッフには、自由な発想を持って遊びも仕事も同じように楽しんでほしいんです。仕事をおもしろいと思えることができれば、人生も輝くでしょう。

さらに、従業員全員が主役になれる環境を作りたいと思っています。例えば、NKグループのモバイル店舗のスタッフが他の代理店の店舗のスタッフから、「あの店舗はすごいですよね!」と声をかけられるような。今まで学生生活や社会でグループの中心になったことのない人にも、スポットライトが当たるような経験を提供したいのです。

出版とウェブの活用がリクルーティングの質を上げる

ーー少子化の影響でどの会社も若手の人材確保には苦労していると思います。NKグループは、若手の社員が多いですが、リクルーティングについてどのようにお考えですか?

私たちも苦労しています。少子高齢化の影響で、大手企業が大学生や専門学生の採用を積極的に進めていますし、地方の人材は経済の中心部に流れがちです。そこで私たちは高卒のリクルーティングに力を入れています。その中でも、母数勝負ではなく、人の質にこだわりたいと思っています。


ーーリクルーティングで、NKグループの魅力を伝えるために取り組んでいることはありますか?

私たちについて知ってもらうために、「リクライブ」というオンライン会社説明会のシステムを立ち上げました。北海道は広いですし、北海道以外にも私たちの魅力を知って一緒に働きたいという人がいるかもしれません。その人材確保のチャンスを逃さないために、オンラインでいつでも情報を発信できるシステムがあれば、より多くの人に私たちの魅力を伝えることができると考えました。さらに、面接や説明会の移動費の削減にもなります。自社で活用していたリクライブのシステムは今、新しいサービスとして他の企業にも活用していただいています。

リクライブのコンセプトは「台本なしの一発撮り採用動画」で、企業のリアルな姿が見えるため、応募者の質が上がる一因となっています。


ーー私の経営する出版社でも、リクライブにサポートしていただきラジオや動画を発信しています。確かに、応募者の質が上がる効果を感じています

もう1つ、2年前にクロスメディア・パブリッシングから出版した本『地方からつくる新しい経済圏 新ローカルベンチャー経営』がリクルーティングにとても貢献してくれています。


​ーーメディアやコンテンツの活用が得意なNKグループが、なぜ本を出版しようと思ったのですか?

十勝新聞が主催する全国でも三本の指に入る大きな花火大会があります。十勝新聞は民間の協賛を集めて花火大会を開催しています。私たちのグループ会社も協賛し、その特典としてフリーペーパーや年間の地域新聞広告を利用することができています。

花火大会ではフリーペーパーが10万部ほど配られていて、毎年売上に直結しているんです。新聞広告も、売り上げに貢献しています。このことから、紙媒体は依然としてマーケティングの効果があると感じ、リクライブからのオンライン発信と、紙媒体の本の出版というオフライン活用の組み合わせがブランディング・マーケティング・リクルーティングに有効だと考えました。実際に本を出版してから、応募者の質が大きく向上しました。


ーー本はどのように活用されていますか?

学校の図書室や就職活動のカウンセリング窓口に本を置いてもらい、それを読んだ人がNKグループに興味を持ってくれることがあります。

また、新卒の研修では、必ず本を読んでもらい、作文を書いてもらっています。これは、「やるならとことんおもしろく!」というスローガンに込めた想いをしっかり理解してもらうためです


ーー木田さんの執筆された本の内容はとてもシンプルでわかりやすく、誰が読んでもわかりやすいところがポイントだと思います。会社が大きくなり社員が増えると、社長の言葉が従業員全体に伝わりにくくなります。幹部スタッフが新人スタッフに教える場面でも、それぞれの伝え方のニュアンスで意味が変わってしまいます。本を使うことで、社長の言葉を正しく理解してもらうのは良い方法ですよね。

「本のここにこう書いてあるから、こんなことがしたい」という提案が社員から出てくることもあり、新しい気づきを得ることがあります。

自分で書いた本を読み返して、「このとき、こんなことを書いたんだからやるぞ!」と、背中を押してもらえることもあります。

人とモノの出会いを生み出し続けるために

ーー飲食業やアパレルなどの店舗展開をされていますが、新型コロナウィルスの影響で厳しい状況が続いたのではないですか?

創業以来順調だった経営が、新型コロナウィルスの蔓延以降横ばいになっています。同時期に携帯電話料金の引き下げの政策が発表され、モバイルの代理店の収入源が減少しました。また、私たちが販売する服や飲食店は贅沢品のため、価格高騰の中で消費者の優先順位は低くなっています。この状況から再び成長路線に乗せることを今、進めているところです。


ーー例えば、どんな戦略を考えていますか?

オンラインとオフラインを融合させ、実店舗に来店して下さるお客様を増やし、地域ごとの業績を上げていきたいと考えています。特にSNSに力を入れています。


ーーSNSを使ってグローバルにアピールするのではなく、地域ごとの業績を上げるために活用されるというのはなぜでしょうか?

実際にSNSを運用してみて、地域戦略の重要性を感じました。自社で展開するインターネットを使ったオーダーメイドのメンズアパレルブランド「USTED KOUAHKINN(アステッドコーキン)」では、全国のアフィリエイターに依頼してフォロワーを増やしましたが、注文は増えませんでした。一方で、北海道に実店舗のあるレディースアパレルブランドのSNSでは、全体のフォロワー数は少なくても地元の人がフォローしてくれている割合が多く、ライブ配信を行うと翌日には売上が上がるという結果が出ました。

競合はオフラインよりもオンラインの方が多いんです。日本の大手企業だけでなく世界を相手にしなければなりません。グローバルに勝負するには特化した何かが必要です。その何かを探すために、まずは地域に根ざした戦略を考えています。


ーーまずはローカルで鍛えてから世界へ広げるということですね。日本を代表する多くの企業も同じ戦略を取っています。例えばユニクロ(株式会社ユニクロ)は山口の商店街から、ニトリ(株式会社ニトリホールディングス)は札幌の郊外から、ヤマダデンキ(株式会社ヤマダホールディングス)は群馬の前橋からスタートしました。それを木田さんはオンラインで実行しているわけですね。
今後オンラインのみでビジネスをする企業が増える中で、店舗を持ち続ける価値はあると思いますか?

SNSのライブ配信や投稿を見たお客様がスタッフのファンになり、店舗に会いに来てくださることがあります。実際に店舗で商品を見て触れ、スタッフと話をすることで、思わぬ商品との出会いが生まれることもあります。お客様がSNSで見た商品1点だけが欲しかったとしても、他の商品を購入していただけるチャンスが生まれるんです。

そのチャンスを逃さないために、商品も魅力的に見せる必要があります。だから、ショップではディスプレイをかっこよくして、接客も含めてちゃんとお客様に価値を提供できるような環境を整えておく。

さらに、来店されたお客様にLINEの会員登録を促し、限定クーポンを配信することで、根強いファンの獲得にも取り組んでいます。オンラインとオフラインを組み合わせ、各地域のスタッフと一緒に、その地域に合った勝ちパターンを見つけたいです。


​ーー出版社でも全国的に書店が減っていて、どのように販売を伸ばすか、新しい事業に挑戦するか、いつも考えています。木田さんのように勝ちパターンを探しています。

最近、近くの大きな本屋さんが閉店し、寂しく感じています。インターネットで本を買うのも良いですが、本屋さんでの偶然の出会いも大切です。たまたま本棚で見つけた、いつもは読まないようなジャンルの本を手に取って読むことで、見える世界が変わることもあります。

2021年8月に北海道の札内に「ライブラリーラウンジ」という有料の共有スペースを立ち上げました。
ここには2,000冊以上の本を置き、お客様に新たな本との出会いを提供しています。
オフラインでの出会いは、新しい発見をもたらし、今まで知らなかった世界を見せてくれます。
紙の本やアパレル商品、モバイルの実店舗をオンラインと組み合わせ、人とモノの新しい出会いの空間を残していきたいと思っています。



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