―――ITとの出会いについて教えてください
父の仕事の関係で6歳の頃アメリカに滞在していたのですが、 遊びに行った父の友人宅に置いてあったアップルコンピューターがパソコンとの最初の出会いでした。 その後5年後、小学生時代にたまたま安売りしていたパソコンを親にねだって買ってもらい、 兄と共有していました。コンピュータを業務として初めて使ったのは大学生のアルバイトの頃ですね。
プログラマのバイトをしていた友達がいて、パソコンに興味があった自分としては、 そんなバイトあるの?ということで紹介してもらいました。 当時はまだWindows95発売前でパソコンは普及していなかった頃ですが、 『こんなに楽しくプログラム組んでお金までもらえるの?!』と思っていました。 そしてそのまま就職せずシステム開発の仕事をしていました。
その後紆余曲折あって、 結局人生で初めて入った会社がネクストスケープという事になりました(笑)。
―――初めての会社だったのですね(笑)!当時はなぜ就職しなかったのですか?
好きなことをやっていたかったんです(笑)。 2000年問題などの小さいけど大量にある仕事や巨大な ウォーターフォールでの開発がメインの時代で、どんなプログラマでも仕事がありました。こういうと語弊があるかもしれませんが、やろうと思えば プライベートを尊重できるような働き方が簡単にできた時代だったからですね。
そんな頃、汎用機からオープン系へ、JAVA、.Netと、 技術のパラダイムシフトが次々と起きました。 それに必死について行こうと、次第に自分の技術を磨くことを目標に仕事を選ぶようになりました。
―――そんな中なぜネクストスケープに入ったのですか?
それまではなんでもできるスーパーエンジニア、特にソフトウェアアーキテクチャに強みを持つエンジニアを目指すべく色んな案件を選んでいました。 技術を磨くために案件を選んでいたのですが、一方で仕事が途切れないようにするためにはどうすればいいのかを常に考えていました。
自分の価値は技術力の高さであり、それをどうやって現場で認識してもらうか、が重要でした。 その結果、現場で一番技術が高いことを認識してもらうか、自分より上の人が いたらその人のスキルを必死に盗んでさらにその上をいくように必死に勉強する日々でした。
そんな修行中の頃は色んな技術を試しては成功・失敗を繰り返す日々でしたが、 ある現場で、ふと、技術をアウトプットばかりしている自分に気が付きまして、 あぁ修行は終わったのかも…とふと思ったんです。 じゃあいよいよ腰を据えようじゃないかと就職活動をした時に出会った会社がネクストスケープでした。
複数社同時に内定をもらったものの、私がネクストスケープを選んだ理由は、ネクストスケープが一番日本人らしい、 お客さんに寄り添って、チームとして動いている働き方だったからですね。
他社は技術面やアーキテクチャの志向的には完全にマッチしていましたが、 個で動いているように感じました。それでは今までフリーでやってきたのと変わりませんから、 チームで色々動くけど、メンバーそれぞれがベタベタしていない、 自律的な動き方をしている社風を最終的には選びました。
ネクストスケープの最大の魅力は、自分でこれがやりたい!こうしたい!と思ったら自分の力で事態を打開する交渉を行ったり、社内調整を行うことで実現することが可能なところです。 マニュアルがあって動くタイプの人や受け身の人、自分の型を強烈に持っていて譲れない人には不向きだと思いますが、 自律的な人にはやりたいことが何でもできるところだと思っています。 その人が何かしたいって時は、やりたい!って自ら動けば手を差し伸べてくれる会社ですから。
―――上坂さんの業務について教えてください
コンサルティング&テクノロジー部の部長として、9名のメンバーと共に社内の技術力向上、社外への技術教育やコンサルティング事業推進、プリセールスとしてお客様にソリューション提案をしています。
また、ネクストスケープのエバンジェリストとしての2種類の業務も引き続き行っています。
ひとつは社外でのNS知名度向上のために勉強会やセミナーでの登壇をしています。
もうひとつは、新規の顧客開拓です。
ネクストスケープとお客様とのファーストコンタクトの場で、Microsoft Azureをメインとした技術的なコンサルティングを軽く行うことで、会社の信用度や発注に向けての確度向上を図っています。
―――エバンジェリストになったいきさつを教えてください
会社で求められたエバンジェリストというロールに求められていた事と、 たまたま自分がやっていたことがリンクしていたからだと思います(笑)。
入社して間もない頃、社内で1度TDDについて発表したことがありました。 その直後に外部で登壇する話が会社に舞い込んできて、たまたま自分に白羽の矢が立ち、 社内で『登壇する人』と認知されてしまったのもあるのかもしれません(笑)。
Microsoft Azure MVPの受賞についてはネクストスケープのAzureに関する技術力の高さを 証明する、という会社のアピールの一環として、同僚のMicrosoft MVPの青木さんにアドバイスをいただきながら同賞に応募することになったのがきっかけです。 受賞の理由は発表されないので定かではないのですが、 エバンジェリストとなってからの講演活動も理由の1つとは思いますが、それだけで決まるものじゃないらしいので、 エバンジェリストとなる前の個人的な地道な活動が功をなしたのかもしれません。
―――上坂さんといえば、人を引き付けるセッションですが、元から喋り上手だったのですか?
そんなことないですよ(笑)。セッションで話すようになってから1年半ぐらいは本当に大変でした。 セッションの喋り方はセミナーで勉強して、スライドの作り方もうまい人のものを参考にして色々と試行錯誤しました。
セッションでのトークとどれぐらい関連があるのかはわかりませんが、ネクストスケープのエバンジェリストは営業的な仕事が業務の半分ぐらいを占めています。
最初のうちは営業をやったことがないのでお客様とどうやって コミュニケーションを取ったら良いのかわからない時期がしばらくありました。 「営業とは」、という枠にとらわれていたんだと思います。
営業とは、ビジネスとは、と考えるのではなく、結局の話ただ相手との人間関係なんだということに気づいたら自由に話せるようになりました。 もしかしたら、それがセッションでのトークに活かされているのかもしれません。
―――上坂さんが今気になっている技術、情報について教えてください
2つあります。
ひとつは、今気になっているというと語弊があるのですが、ネクストスケープは以前から提供している機械学習、deep learningがようやく世間で身近になったと感じています。
というのも、以前は機械学習という技術が、クラウドの時代になって、ようやく誰もが扱えるようになったというインパクトの大きさはあったものの、それを自分たちのシステムやサービスにどう組み込めば、どんな結果が得られるのかまで理解されているお客様がほとんど居なかった為、案件としての機械学習は非常に数が少なかったのです。
しかし最近では、機械学習を自分たちのシステムやサービスに組み込みたいというお客様が増えてきました。
これはdeep learningがこれまでの機械学習と同じように、気軽に使えるようになってきたというインパクトのおかげで機械学習に対する認知度が更に広がったことが理由だと考えています。
今後は、我々ネクストスケープのように、機械学習やdeep learningだけではなく、その周辺の知識や開発技術を持ち、お客様のサービスやシステムにどう組み込むか、ひいてはビジネスをどうしていくのか、というようなコンサルティングからデリバリーまでをワンストップで行う企業が増え、夢物語ではなく、お客様が本当に実現したい結果を構築出来るようになると思います。
もうひとつはMicrosoft HoloLensです。
Mixed Reality : 複合現実(以下、MR)は体験してみないとその凄さがわからないのが難点ですが、一度体感するとMRによってもたらされる未来がどんなものになるだろうかと、とてもワクワクします。
今はまだ、デバイスが重い、充電時間が短い、スペックがそこまで高くない、見た目が悪い、視野角が狭いなど、一般的に普及するまでにはまだまだ改善しなければならない点が多いわけですが、それでも「現実と3DCGが同じ世界に存在するということ」が、パソコンやスマートフォンという箱の世界の中だけでシステムを作ってきた私に新しい時代の到来を感じさせてくれています。
―――最後に、「あなたにとっての◯◯とは?」という質問に一言ずつ答えてください
―――あなたにとって一言で、ネクストスケープとは?
自由にさせてくれる遊び場、ですね。 感覚的にはそんな感じ(笑)、責任さえ負えば本当に自由です。
―――あなたにとって一言で、仕事とは?
一言でいうと難しいですが、人には天職と適職という二つの職業がある、という意見にとても共感しています。 『この仕事が本当に大好き。でもお金を稼げるとは限らない仕事』が、天職。 一方、適職は『別に好きな仕事じゃない。だけど、自分が最もお金を稼ぐのに向いている仕事』のことを指すそうです。
自分にとって今の仕事はどちらの要素も入っていますし、どちらかに偏ってもいないと思います。 エバンジェリストという仕事を始めてから特にそのように思うようになりました。 仕事って多面的な要素の組み合わせだと思っています。
―――あなたにとっての生きがいや座右の銘は?
『人間万事塞翁が馬』。 年齢を重ねるにつれ、痛感しています。
フリーランス時代は本当に色々とありました。正直、順風満帆といかないことも多かったです。 でも、その時の苦労があったからこそ今があるな、と思います。
あらゆることが良いこと、悪いことの前兆でトータルすると結局は平均なんだな、と心の底から思うようになりました。 だから『良いことがあっても、気を引き締めなさい、 悪いことあっても、良いことがあるんだから』と考えるようにしています(笑)。