「Web3業界への就職や転職に興味がある」
「Web3ゲームの最前線ってどんな感じ?」
「Web3ゲーム開発はどんな人に向いているの?」
上記のような疑問がある方も多いでしょう。
2023年6月26日、Mint TownはBLOCKSMITH&Co.と共同で、初となるWeb3ゲーム業界向け採用イベント「Web3ゲーム開発の未来予想図 −ガラケーからスマホを制覇した世代が語る−」を開催しました。
Web3のマスアダプションを牽引するのは、Web3ゲームといわれています。今回のイベントでは「Web3ゲームの未来予想図」をテーマに、Web3ゲーム開発における最新動向のシェアや、最前線のプレイヤーによるトークセッションなどが実施されました。
本記事ではWeb3ゲーム開発に現在進行形で取り組んでいるプレイヤーのトークセッション「『キャプテン翼 -RIVALS-』特別セッション -Web3ゲームの今と未来 -」の模様をお届けします。
Web3業界やゲーム開発に興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
『キャプテン翼 -RIVALS-』とは
原作『キャプテン翼』に実際に登場する選手たちをNFTで育成し、他のプレイヤーと対戦できる新感覚Web3ゲームです。1月のリリース以降グローバルでユーザーを獲得。5月にはガバナンストークン「TSUBASAGT」が海外の取引所で上場。公式アンバサダーに長友選手、イニエスタ選手が就任しています。
人気IPを活用したWeb3ゲームの現状
小柳津
『キャプテン翼RIVALS』を半年間運営してみて、どのようなIPがWeb3ゲームにマッチすると思いますか?
藤好
Web3ゲームに特別相性がいいIPはないと思います。成功したタイトルもないので、慎重な版元が多い印象です。『キャプテン翼RIVALS』を、日本のIPが世界に進出する突破口としていきたいですね。
守安
ゲームの歴史を見ればいくつかのヒット作が誕生して、類似するゲームが増え、その後の差別化方法にIPが活用されています。そのためゲーム業界において、IPは非常に重要です。また、Web3ゲームの特徴としてNFTによるコレクション性があることから、Web3ゲームとIPは相性がいいといえるでしょう。
小柳津
藤原さんはWeb3ゲームとIPに関して、パブリッシャーとしてではなく周辺からどのように見ていますか?
藤原
海外のVCはWeb2.0ゲームでヒットしたIPがWeb3ゲームでいつくるのかと口を揃えて言っています。ただし人気IPを用いたWeb3ゲームがリリースされたからといって、すぐにヒットする状況ではないと見ています。守安さんと同じく、まずはWeb3ゲームのヒット作が生まれて、そこからIP活用の流れでしょう。
小柳津
守安さんは『キャプテン翼RIVALS』に取り組むなかで、この国での反応が意外とよかったなど、想定外の盛り上がりを感じたことはありますか?
守安
日本では非常に熱心にプレーされていると思います。流行っている国でいうとベトナムですね。Axie Infinityの生みの親ということもあるので。ただ、課金ハードルの高さはあるように感じています。
Web3ゲームのマーケティング・コミュニティ育成の重要性
小柳津
マーケティングに関して、Web2.0時代からの変化をどのように見ていますか?
藤原
モバイルゲームでの予算はほぼデジタルマーケティングに使われますが、Web3ゲームではデジタルマーケティングがあまり機能していないことがマスアダプションに至っていない大きな要因だと考えています。
Web3マーケティングの手法としてはコミュニティがよく取り上げられます。Web2.0時代のように大きな母数を求めるよりは、強固なコミュニティを形成してWeb3ゲームならではのKPIを達成していくものです。ただ、もう少しデジタルマーケティングによるユーザー獲得も模索する必要があると思います。
一方、海外ではクエストやインセンティブをフックにしたユーザー獲得が多く見られます。
小柳津
Web3マーケターにとっては、いろいろな手法にチャレンジできる面白いフェーズですよね。藤好さんはいかがですか?
藤好
Web3ゲームのマーケティングではDiscordがよく使われます。ただ、Discordはゲーム好きな若者に浸透しているから使われているともいえます。
ユーザーと接点を持つ方法としては、昔でいえば高橋名人がメディアに露出してという類いと大きく変わっていないのかなと。作り手自体もコンテンツとなり、ユーザー獲得に貢献していく形です。
小柳津
守安さんはゲームと同時にコミュニティプラットフォームの形成にも取り組んでいます。どのような未来を描いているのでしょうか。
守安
ユーザー獲得の課題として、Web3ゲームで遊んだことがある人も、これから遊びたい人も少ないことが挙げられます。そのうえブロックチェーンの難しさもあるので、ハードルは非常に高いです。また「このプラットホームに出せば集客できる」というものもほぼない状態です。App StoreやGoogle PlayがWeb3ゲームフレンドリーになれば変わるのかもしれませんが、現状はそうじゃない。総じて集客が困難な状況です。
逆にいうと、Web3ゲームに関心のあるユーザーベースを抱えているサービスがあれば、将来的に送客ができて、プラットフォームとして機能するはず。そこをMint Townとしては、3年後あたりを見据えて作っていくことが重要だと思っています。
実際、2006年にモバゲーを作ったときは、ソーシャルゲームはありませんでした。3年後の2009年に怪盗ロワイヤルをリリースしたときには、無料ゲームとコミュニティでユーザーベースを作っていました。結果、リリースから1週間で数百万人のユーザー獲得に成功したので、そういう取り組みを今から仕込んでおくことが重要だと思います。
Web3ゲーム開発に不可欠な規制とは 各国の最新状況
小柳津
Web3ゲームはWeb2時代と比べて、法律や金融面の規制と向き合わなきゃいけないところが多いと思います。守安さんが一番苦労しているのはどのようなところでしょうか?
守安
集客のためのプラットフォームがある利点は、ルールが定まっていることです。決済手段ややっていいことと悪いことが明確です。作り手側からすると一見不自由ですが、ある意味やるべきことが明確で考えることが少ないといえます。一方、Web3ゲームは砂漠の中から芽を出そうという状況です。トークンひとつとっても考えることの振れ幅が大きい。また、法律面だけではなく会計面や税務面をどうするのか、どの国から配信するのかという選択肢も多く、複雑だと感じています。とくに法律は国ごとに半年や1年単位で次々と変化するので、かなり柔軟に進める必要があると思っています。
小柳津
藤原さんは各国の最新状況をどのように見ていますか?
藤原
国ごとに違いがある状況だと思います。たとえば韓国ではPlay to earnのゲームの流通許可がなかなか出ないこともあります。また、スカラーシップ発祥の地の東南アジアでは、スカラーシップ制度がないとそもそも相手にされません。ブラジルではWeb3をeスポーツの文脈で広めようとするチームもあります。
現状はこの国が優位というものはない印象です。ただ、全体的に無料で遊べる方向性に寄ってきていると思います。
藤好
国ごとにGDPの差はあるので、お金を払って始める難しさはあると思います。そこで無料のお試し版を提供するのはゲームに限らずいろいろなサービスであることなので、対応を検討する必要があると感じています。
小柳津
東南アジアなどの話もありました。中国やアメリカなどから進出したWeb2.0ゲームとWeb3ゲームでは進出順が異なるという見方もありますが、國光さんはどのように見ていますか?
國光
Play to earnの構造は初期にNFTを購入して30〜90日で回収するもの。結局、to earnの原資が必要になるわけです。Free to playのユーザーが増えれば増えるほど、その原資は課金ユーザーがもとになるから、ゲーム規模もGDPに比例します。いかに課金余力はあるが課金するつもりはない人に課金してもらうのかが重要になるのは、Web2.0もWeb3も変わらないと思います。そういう意味では、フィリピンやベトナム、ブラジルなどの無課金ユーザーを集めて、アクティブユーザー数を増やすことで、ガバナンストークン投資家の参入が増えるといえます。
そうなると本質的にはNFTやユーティリティトークンを買ってくれたり、ゲームにお金を払ってくれたりするユーザーを増やすことが重要になります。「課金ユーザー数×ARPU(Average Revenue Per User)」を増やす方法が最もシンプルで、それなりに所得の高い国のユーザーをどれだけ増やせるかが鍵になるのはWeb2.0もWeb3も変わりません。
小柳津
藤原さんはゲームパブリッシャーやエンドユーザーに向けて取り組んでいることもあると思うので、簡単にご説明いただけますか。
藤原
YGG Japanのプロダクト開発では、2023年5月にWeb3も対応できるインフルエンサーマッチングプラットフォーム「3rdoor」をリリースしました。海外のパブリッシャーに話を聞くと、大体5000〜1万ドルの予算規模でテストマーケティングをしたい。なぜならWeb3かつ他国のカルチャーやマーケティングとなると何もわからないから、といわれます。
テストマーケティングをするときに最初に出てくるのはインフルエンサーマーケティングなので、その入り口を作ってあげるのは最適だと思います。基本的に代理店は1万ドルの予算規模では相手にしないと思うので、手数料を取らずに日本の市場を試してみてくださいといえるモデルを作りました。
また日本語かつゲームコミュニティに特化したウォレットが日本になかったので、台湾のKryptoGOが共同でリリースしました。他にもWeb3ゲームのメディア「GabeeTown」も運営しています。総じて、YGG Japanの活動はWeb3への入り口をどう作るのかが軸になっています。
小柳津
インフルエンサーの報酬にはガバナンストークンも活用されているのでしょうか?
藤原
今受けられるもので言うと、フィアット(法定通貨)とステーブルコインも可能です。今後はインフルエンサーにトークンも送れるようにしたいと思っています。
Web3ゲーム開発に必要なスキル エンジニア / マーケ / 経営者
小柳津
Web3ゲーム開発に必要なスキルについて、みなさんはどうお考えでしょうか?
守安
ゲーム開発に関しては、従来のソーシャルゲームと大差ないと思います。なので、Web2.0時代に活躍されていたエンジニアはWeb3ゲームでも活躍できるでしょう。一方、Web2.0時代からの大きな変化として、Web3ゲームは金融サービスの側面を持つようになることが挙げられます。従来は詫び石を配布する対応が一般的でしたが、Web3ゲームでは金銭的な補填も含めて致命的なトラブルになるので、スピーディーな開発体制のうえで、金融サービスと同じぐらいの安定性、堅牢性が必要とされる難しさはあります。
藤好
Web3ゲームは少人数でスピーディーに開発していきます。『キャプテン翼RIVALS』も積極性のある10人前後の開発チームです。プロデューサーとしてゴールイメージを共有して、各自が開発しやすいように、スタートアップやベンチャーのように動くチームを作れたことは功を奏していると思います。
実際に週2回アップデートしているタイトルはなかなかないので、開発チームの起動力は売りになっていると思います。
小柳津
Web3マーケターに求められる素質はどうでしょう?
藤原
Web3マーケティングは非常に面白いです。なぜならWeb3ゲームのマーケティングは、知らない国でパズルのように1から戦略を立てていくようなフェーズだからです。未知の領域に積極的に挑戦できる人には向いていると思います。また英語は必ず求められると思います。
國光
Web2.0からWeb3に移るうえでのアンラーニングでいえば、Web3ゲームの楽しさを再定義する必要があると思います。Web2.0ゲームと同じ土俵では勝てませんからね。Web3ゲームの楽しさに正解は出ていませんが、見えているところでいえばPlay to earnやコミュニティ。そうしたWeb3ゲームならではの楽しさの答えが見つかった瞬間に、一気にマスアダプションも進むのかなと思います。
今後の業界展望
小柳津
今後の業界展望を聞かせてください。
藤好
ゲーム開発者の視点では、ブロックチェーンという新技術とエンタメをどのように掛け合わせてヒット作を生み出すのかを模索していきたいと思います。
藤原
今は非常に苦しい状況下でのゲーム開発だと思うので、まずはWeb3ゲーム自体が増えて、ヒットする打率が上がってくれば、業界的に盛り上がるのではないかと楽しみです。
守安
Web3ゲームのマスアダプションにはもう少し時間がかかると見ています。ルールメイキングが進んで『Axie Infinity』や『STEPN』に次ぐ新たなヒット作が生まれれば、業界として一気に盛り上がると思っています。
國光
日本はゲームデベロッパーもユーザーもWeb3ゲームに関するリテラシーが非常に高いです。また法整備もアメリカなどに比べて進んでいると思います。今後は初期に参入したプレイヤーが高値で自分だけ売り抜けるような構造を改善する必要があります。ゲームデベロッパーも政府もインフルエンサーも手を取り合って、中長期的にWeb3ゲーム業界を盛り上げていく。それができれば、日本が世界でも最先端にいけると思いますね。
そのためにMint Townは絶賛採用中です。ぜひ一緒に業界を盛り上げていきましょう。
株式会社BLOCKSMITH&Co.イベントレポート記事
https://www.blocksmithand.co.jp/news/113