こちらの記事は2022年11月22日にオウンドメディアで公開した記事を再掲載したものになります。
2022年10月、新感覚ブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS-』を2022年内にローンチすることを発表したMint Town。
Web3ゲームはゲーム業界で頭角を現わしている新たな市場である一方、ソーシャルゲームと比べて未知な部分が多いとされています。そのためエンジニアにとっても、キャリア選択の一つに成り得るかどうか迷う方も多いことでしょう。
そこで今回は、Mint Town COOの守安に、Web3ゲーム事業の可能性と魅力についてインタビューしました。ゲーム業界の歴史を振り返りながら、日本発のWeb3ゲームとしてMint Townがどんな挑戦をしていくか語ってもらいます。
取締役 COO 守安功(もりやす・いさお)
1998年、東京大学大学院(工学系研究科航空宇宙工学)修了、同年4月、日本オラクル株式会社入社。1999年11月、システムエンジニアとして株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2004年に携帯オークションサイト「モバオク」、アフィリエイトネットワーク「ポケットアフィリエイト」、2006年2月には、「モバゲータウン(現:Mobage)」を立ち上げ、同年6月、取締役に就任。2009年4月、取締役兼COO就任。2010年4月、取締役兼ソーシャルメディア事業本部長兼COO就任。2011年6月、代表取締役社長兼CEO就任。2021年6月退任。2021年10月、株式会社タイミー取締役COO就任。2022年3月退任。同年6月、株式会社Thirdverseに入社。2023年5月、株式会社Mint Town取締役COOに就任。
ゲーム市場の変遷と、注目を集めるWeb3ゲーム市場
──まずはゲーム業界の市場環境について教えてください。
ゲーム産業のこれまでを振り返ると、テクノロジーの進化に伴ってハードウェアやビジネスモデルが進化していった歴史があります。1980年代はHome Computerが台頭し、2000年代にはインターネットが登場しました。ビジネスモデルもソフトウェアのパッケージ販売からアイテム課金型(Free-to-Play)へ移行し、ゲーム専用ハードだけでなく、PCやスマホでゲームを楽しむ人たちが増えました。
そして2020年代に入り、少しずつ注目を集めているのがブロックチェーンのテクノロジーを活かしたWeb3ゲームです。遊んで稼ぐ(Play-to-Earn)型のゲームとして、現在主流のソーシャルゲームとは異なるニーズに応えるものとなっています。
──Web3ゲームの人気が徐々に高まっている理由は何でしょうか?
ブロックチェーン技術の特徴として「非代替性(改ざんできない)」・「所有権の証明」というものがあります。これをゲームに応用すると例えば、MMOのRPGで登場する剣や鎧をブロックチェーン上で管理させることで資産性を持たせることもできるでしょう。
現時点で代表的なBCGを挙げるとすれば「Axie Infinity」がわかりやすいと思います。2021年の夏にDAU(Daily Active User)が230万人を超えたゲームです。自分で育てたモンスターを使ってプレイヤー同士で対戦し、勝利すると暗号資産が手に入るというのが基本的な仕組みです。
ソーシャルゲームは「ゲームを楽しむ」ことを動機としますが、Web3ゲームは現状においては「ゲームで稼ぐ」ことを動機とします。しかし私たちは、5年後、10年後の未来にはこれらの動機が融合し、「ゲームを楽しんで稼ぎたい」という嗜好に変わるのではと予測しています。
ソーシャルゲームとWeb3ゲーム、共通点と差異
──現在主流のソーシャルゲームとWeb3ゲームの間には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
ビジネス面と技術面でそれぞれ違いがあります。
まずビジネス面からお伝えすると、ソーシャルゲームの場合にはユーザーがゲーム内通貨を購入して消費する「アイテム課金型」のビジネスモデルが一般的です。企業側はゲームキャラクターの成長に合わせて次々と有料のアイテムを用意し、それらを購入してもらうことで売上に変えてきました。
一方でWeb3ゲームの場合は「Play-to-Earn型」のビジネスモデルに変わり、お金の流れは双方向になります。ユーザーはアイテムを購入することもできれば、それをほかのユーザーに販売して対価を得ることも可能です。企業側は、マーケットプレイス内でのユーザー間売買による手数料で売上を得る仕組みなど、別途考える必要があるでしょう。
──技術面ではどのような差異があるのでしょうか。
ソーシャルゲーム(スマホアプリゲーム)は現在、開発の長期化が顕著になっています。3年かけて一つのタイトルを作るということもざらですね。また開発メンバーも分業制で多くの人たちが携わり、企画中心で設計したゲームデザインを実装に落とすことがほとんどです。
一方Web3ゲームでは、黎明期の業界なので成功モデルが日進月歩で進化していて、トレンドに合わせて頻繁に仕様変更が発生する。こうした背景から少人数・短期開発のスタイルが求められます。現時点でどんなゲームがヒットするかは未知であり、だからこそエンジニアは世の中の状況を見ながら、仕様を柔軟に調整していく必要があります。
また、ゲームデザインとトークン経済圏のバランス調整も重要です。「アイテム課金型」はアイテムの供給量をどんなに増やしても問題はありませんでした。しかし「Play-to-Earn」の場合には、アイテムの流通量を調整し、消費と獲得のバランスを調整するゼロサム設計が求められます。
開発チームにも、ゲームのクライアントエンジニアとサーバサイドエンジニアのほか、ブロックチェーン基盤エンジニアを迎える必要があるでしょう。
──ブロックチェーンならではの特徴があるわけですね。
そうですね。ただ、ソーシャルゲーム(スマホアプリゲーム)エンジニアの方々に強くお伝えしたいのは、じつはWeb3ゲームも技術面では大きく変わらないということです。
確かにブロックチェーン基盤やゼロサム設計を考慮するなど違いはあるものの、面白いゲームを作るという点においては共通しています。
Web3ゲームの成功モデルが確立され市場も成熟していけば、現在のソーシャルゲーム(スマホアプリゲーム)に見るような巨額の資金も投入されていくはずです。アクションやグラフィックなどにこだわった大作も生まれ、長期・分業型でゲーム制作をする時代が来る可能性は十分にあるでしょう。
それが5年先、10年先になるかはわかりませんが、楽しむことと稼ぐこと、両方のバリューが融合する未来を私たちは目指しています。これまでゲームのクラアントエンジニア・サーバーサイドエンジニアとして活躍されてきた方であれば、その培ってきた技術を使って貢献できると考えています。
Mint Townの3つの強みと、地政学的な優位性
──ゲーム業界の変遷とWeb3ゲームの特徴について把握ができました。ここからは、Mint Townとしての事業戦略を聞いてみたいと思います。今後、どのようなプランを描いていますか?
私たちは今後の2〜3年で「ヒットタイトルの量産」と「BCGのプラットフォーム構築」を目指していきます。その先には、世界有数のWeb3ゲームパブリッシャーになることと、世界No.1のWeb3ゲームプラットフォーマーになるというゴールを描いています。
──パブリッシャーとプラットフォーマーという2つの言葉が出てきました。まずはパブリッシング事業の方針について聞かせてください。
パブリッシング事業では、Web3ゲームを広くリーチさせていくために、各プラットフォームストアの制約を受けないモバイルブラウザ上での展開を考えています。その際に活かせるのは、3つのMint Townの強みです。
1つめはソーシャルゲーム開発者やIPオーナーとの関係性です。私自身はDeNA時代の人脈・ネットワークがありますし、CEOの國光も長くゲーム業界を牽引してきました。これにより、人気アニメキャラクターのライセンス獲得などにおいて優位性を発揮できるでしょう。
2つめは強固な配信スキームを有していることです。Mint Townは、シンガポール・米国・日本に拠点の有し、暗号資産の発行からゲーム配信まで、ブロックチェーンゲームのグローバルな配信を行うためのストラクチャーを整備しており、また監査や税務上、課題となり得る点を解決しています。
そして3つめが、海外マーケティングやトークンエコノミクスに関するノウハウが集まる体制を作り上げている点です。これは2023年末までに10タイトルをリリースする計画があるからこそ得られると思っています。
他社ではこれだけの数をリリースするのは難しい。なぜなら大手企業の場合には、パッケージ販売やアイテム課金型という既存のビジネスモデルがどうしても優先されることが多く、本格的な進出には時間がかかるためです。
また、中国では政府の方針により暗号資産が全面的に禁止されています。欧米ではユーザーもディベロッパーも「Play-to-Earn」モデルのゲームに強い拒否感を持っています。日本にも「Web3ゲームはゲームじゃない」と考える人たちはいると思いますが、そのアレルギー反応が欧米諸国ですとより強いのです。
つまり、このような地政学的な背景と大手企業の事情を考えると「ヒットタイトルの量産」という方針を打ち出せる企業はゼロに等しい。だからこそMint Townが、Web3ゲームに関するノウハウ量で大きくリードができると考えているんです。
──もう1つ、Web3ゲームの世界No.1プラットフォーマーになるというビジョンも掲げていました。
こちらも代表の國光と握り合っている、大きな目標の一つですね。私はDeNA時代にMobageで、國光はgumiの時代にGREE上で多数のヒットタイトルを作り、日本のソーシャルゲーム市場を盛り上げてきました。
当時はガラケーで高機能なゲームを作る技術は日本が優位で、海外のソーシャルゲーム市場もこれからというタイミングでした。そのため、プラットフォーマーとして世界でNo.1を取るチャンスだと捉え、多額の投資をしたわけなんです。
ただし結果は惨敗。AppleやGoogleが優勢になり、DeNAをはじめ日本勢はプラットフォーマーにはなれませんでした。
私も國光もこのような苦渋を味わってきたわけですが、ここで再び、Web3ゲームという従来のゲームとはルールが異なる分野が誕生しました。しかも現状では世界を見渡しても、Web3ゲーム専用のプラットフォームはまだ存在していません。
そういう意味では、難易度はもちろん高いものの、この領域で「世界No.1になれる可能性」が出てきたと考えています。
時代を変える、新たなゲームパラダイムへの挑戦
──大きな目標に向かうからこそ困難も多いと思います。Mint Townの現在地と、これからの課題についても教えてください。
Mint Townでは、シンガポール・米国・日本に拠点の有し、暗号資産の発行からゲーム配信まで、ブロックチェーンゲームのグローバルな配信を行うためのストラクチャーを整備しております。
開発チーム自体は20名ほどで、中には大手モバイルゲーム会社で活躍した方にも参画してもらっています。リリース状況としては、2022年内に新感覚ブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS-』をローンチするなど、計5本のタイトルが開発フェーズに入っています。
ただし、今の時点で内製化ができているのは1タイトルのみです。このパイプラインをまず2ラインまで増やすため、今後はディレクターやエンジニアを中心に採用を強化していきます。
──採用が課題ということでしたが、Mint Townで働く魅力について最後にメッセージをお願いします。
私は10代の頃、アニメの影響をたくさん受けて育ってきました。
当時、サッカー少年だった私は『キャプテン翼』の連載を毎週欠かさず読んでいたものです。これが私より上の世代になると『巨人の星』を読んで野球を始めたり、もっと下の世代だと『SLAM DUNK』をきっかけにバスケットボールを始めているかもしれません。そして、似たようなことがゲームの世界でも起こっていると思います。
こうした日々の生活に影響を与えられる仕事に誇りを持っていますし、まだ黎明期のWeb3ゲーム業界で世界No.1のプラットフォームになれる可能性があることにもワクワクしています。すでにお伝えしたように、海外や国内大手の企業はWeb3ゲーム業界へ参入するには課題やリスクがあるため、すぐには入ってこれません。
私はDeNA時代、世界No.1のゲームプラットフォームにはなれませんでした。しかし再び、挑戦と実現のチャンスに出会えたわけです。想像以上にカオスな道のりかもしれませんが、それ以上の希望がある領域だと思います。
このように、時代を変える新しいゲームパラダイムにワクワクできる方や、新規ゲームを一から作ることに喜びを持てる方には、Mint Townは絶好のフィールドだといえるでしょう。こうした環境を楽しめる方と、ぜひ一緒に世界No.1を目指していけたら嬉しいですね。