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【複数事例解説】今話題のリテールメディアとは?活用事例と運営のポイント(後編)

【この記事について】
アプリマーケティングプラットフォーム「MGRe(メグリ)」は、OMOを推進していきたいメーカーや小売業を営む企業にご導入いただいています。

今回は、2023年10月6日(金)に実施した『リテールメディアに関するセミナー』の様子をレポート形式でお届けします。小売企業の新たな収益源として注目されているリテールメディアとは?各企業の活用事例や運営のポイントを解説しました!

2023年10月に公開された記事を一部修正して転載した記事です。

<登壇者>

メグリ株式会社
代表取締役 田代 健太郎
新卒でSIERに入社し、R&D部門に従事。2003年株式会社メンバーズ入社し、大企業のWebサイト構築にエンジニア・プロジェクトマネージャーとして参画する。2007年に株式会社ランチェスター(現:メグリ株式会社)を創業。企業のWebサイトやアプリの受託開発実績を重ね、2020年にSaaS型アプリマーケティングプラットフォーム「MGRe (メグリ)」のサービス提供を開始。

はじめに

本日は、【リテールメディア】という新しいマーケティング手法について、大きく分けて以下の4つをお話できればと思います。(①②は前編の記事で解説しています)
① リテールメディアの概要
② リテールメディアが注目される背景
③ リテールメディアの活用事例
④ リテールメディア運営のポイント

③リテールメディアの活用事例

すでに多くのメディア等で紹介されている事例ではありますが、各々のコンセプトを比較してみると、違いや優位性という部分が見えてきます。ぜひその辺りを意識しながら、各事例を確認していきましょう。

■事例①:ヤマダデンキ

ヤマダデンキさんは、リテールメディアを展開していく上で「IoT」や「AI」を非常に得意としている「アドインテ」という会社さんとタッグを組んでいらっしゃいます。

出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」

具体的に活用しているメディアとしては、店舗にあるデジタルサイネージとアプリがあげられます。

出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」

サイネージとアプリを連動させ、サイネージ広告媒体で発信する広告枠を販売するという仕組みをとっています。サイネージで放映された商品・サービスを既に認知している方に対して、即座にアプリでプッシュ通知を送り、購買を促せる仕様ですね。

■出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」

上図からも分かる通り、プラットフォームおよびカスタマージャーニーとしては、綺麗に流れができています。普段からヤマダデンキのアプリをご利用されているお客様に対して、来店していただくために様々なコミュニケーションをとられています。その中のひとつが、広告ですね。さらに、店頭では入店を促進をするためにサイネージが設置されており、店内ではアプリへプッシュ通知などを飛ばすことができます。

このアプリのプッシュ通知に関しては、アドインテさんと協業をされていらっしゃるので、ビーコンやWi-Fiの検知機能といったソリューションを使っています。結果、目の前のお客様を検知することでアプリに対してアクションが取れるという仕組みですね。これらの施策のデータを分析をして、あらゆるマーケティングに活用されていらっしゃいます。

■事例②:ファミリーマート

ファミリーマートさんの事例で特に特徴的なのが、デジタルサイネージ・レジ前のモニター・チラシなどを活用し、店舗そのものをメディア化しているという点です。

出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」

また、店頭そのもののメディア化の中で、視覚に訴えかけるだけではなく、店内放送も活用して聴覚という部分でも情報を顧客に伝えている、という点もポイントです。

出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」


事例③:セブン-イレブン

セブン-イレブンは、2022年3月より、自社アプリ「セブン‐イレブンアプリ」上で、セブン-イレブンで商品を扱うメーカーの広告配信を実験的に開始しました。

出典:MGRe資料「リテールメディアとは?」

セブン-イレブンのアプリには、商品購買に合わせたゲーミフィケーション(※1)の要素があるのをご存じでしょうか?おにぎりやサンドイッチなどを購入すると、購入数に合わせてバッチ(※2)と言われるデジタルインセンティブ(※3)が提供されます。この構造からわかるのは、ひとりひとりのセブン-イレブンでの購買履歴が全てデータ化されているという事実です。

※1 ゲーミフィケーション:ゲームの要素やデザインをゲームを本来の目的としないサービス等に導入し、人々の参加やエンゲージメント、行動を促進する手法のこと。
※2 バッチ:セブン-イレブンのアプリ内で付与されるランクのこと。買物・nanacoチャージ・店舗巡りといった特定の行動によって付与される。
※3 デジタルインセンティブ:デジタル環境において提供される報酬や動機付けのこと。ポイント・マイルの付与や割引クーポンなどがあげられる。

そのため、顧客がセブンアプリを提示して商品を買うと、誰がいつどこで何を買ったのか、全てデータとして保存されます。セブン-イレブンには、顧客(生活者)の商品購買情報をもとに広告配信ができる環境がすでに整っている、というのは大きなポイントですね。また、広告配信をして、広告をきっかけに購買につながったか、それがどういう理由なのか、まで分析できる環境が整っているのではないかと推測しています。

実際にアプリに対する広告配信によって、他のSNSやアプリ内のバナーの広告掲載の購買率が2.3倍になったという結果も出ているようです。単純に、アプリが販促機能を持ち合わせているというだけではなく、アプリをメディアとして開いていただくために様々なコンテンツを提供していく、というのが重要ですね。

店内にあるサイネージに関しても、お客様の体験を損なわないための設置場所・台数を意識をしている点も大きな特徴です。

■事例④:マツモトキヨシ

マツモトキヨシさんの特徴は、「リテールアド(Retail Ad)」(※4)をすでに利用されていた、という点です。

※4 リテールアド(Retail Ad):小売業界における広告の一種。小売業者が自社の商品やサービスを宣伝し、顧客に対して販売促進を行うために使用する広告を指す。

Googleのプラットフォームを活用した販促モデル「Matsukiyo Ads(マツキヨアド)」を提供しており、メーカーと共同で販促を行える仕組みが構築されています。

具体的には、まずメーカーとリテールメディアの運営企業であるマツキヨさんがどういった商品を広告提供していくのか、ということを決定・検討します。その上で、オウンドメディアではなく自社のデータを使って、広告を配信します。

つまり、マツモトキヨシのデータを用いているものの、広告配信先としては外部メディアを使っている、という構図です。もちろん外部メディアでお客様との接点を作り出した後に、マツキヨさんのオウンドメディアであるアプリを使用した広告配信をされています。

さらには、その広告のインパクトまで分析するといったような仕組みまで整っており、認知から購買までをまるっとメーカーさんに寄り添った、広告代理店のような取り組みをされてらっしゃいます。この部分が、他のリテールメディアを提供されている企業様とマツキヨさんの大きな違いですね。

では、具体的に成果がどうだったのか、という点を紹介します。認知から最終的な商品の購買までを、マツモトキヨシさんが設計された方法で広告配信をした結果、購買率が176%に伸びました。

大きく購買が伸びたということも重要なポイントですが、もう一つ大きなポイントは、値下げをせずに購買率176%を達成した点です。昨今のドラッグストアでの販促は、どうしてもポイントやクーポン、割引など、利益を損なうような販促が多くなってきているのが実情です。
そのような中で、利益を保ちつつ購買を伸ばした上記の施策は、大きなポイントかと思います。

以上、四つほど事例を紹介しましたが、それぞれコンセプトやスタンスが違うのが分かると思います。今後、どのやり方がデファクトスタンダード(※5)になっていくのかは、現時点では誰にもわかりませんが、先行事例をもとにリテールメディアに取り組む予定の企業様は、ぜひ自社なりのコンセプトを持っていただければと思います。

※5 デファクトスタンダード(De facto standard):特定の分野や産業において、実際の使用状況や市場によって広く受け入れられ、標準的な役割を果たしている規約や技術、製品、プロトコルのこと。

④リテールメディア運営における二つの注意点

注意点(1):生活者にとって心地よい体験設計をすること

生活者にとって心地よい体験設計というのは、リテールメディアを成功に導く大きな鍵だと思っています。

上図をご覧ください。利益を優先してメディアを運営した場合(左側)と、顧客体験を優先してメディアを運営した場合(右側)の比較です。左側は、短期的な利益を求めていますね。広告をクリックしてもらいやすいインパクトのあるクリエイティブは、短期的な収益にはつながります。

しかし、インパクトを重視するあまり、広告の数や不適切な表現によって企業の誤解を招くような内容になっていると、広告を出した企業のブランドイメージの毀損に繋がります。かつ、不適切な表現をする企業だと理解した生活者は、企業(メーカー)から離れていく。なので、本業である商品の販売という部分に悪影響を及ぼしかねません。

次に、右側の顧客体験を優先していく場合を見てみましょう。重要なのは、生活者(顧客)ひとりひとりが本当に欲しい、有意義だと思っているコンテンツや商品情報を、適切なクリエイティブで届けていくという点です。正確な情報を適切なタイミングで届けることで、広告主である企業(メーカー)の商品の売上げが伸びていきますし、中長期的にみたブランドイメージもアップします。つまり、短期的な販促ではなく、「ブランディング」という点にも寄与してくるのです。

もちろん、企業(メーカー)の商品が売れるということは、販促活動にも繋がるので、本業である商品の販売での収益の増大に繋がります。加えて、広告の価値が高いということになれば、中長期的には広告出稿が増えていくというような好循環が生まれてくるという訳です。

このように、利益優先の場合と顧客体験優先の場合を比較してみると、やはり顧客体験を最初に考えるのがいかに重要なポイントなのか、ということが見えてきますね。

注意点(2):プライバシーの保護

近年、サードパーティクッキー(※5)の規制がプライバシー保護の観点でスタートしています。どんなに有用なデータであっても、データの持ち主である生活者に対して適切な利用をしているということを示していく必要があるのです。

※5 サードパーティクッキー(3rd Party Cookie):あるサイトでのユーザーの行動や嗜好といった情報を第三者が追跡できる技術のこと。

まず、リテールメディアとは、小売企業が独自で収集をする個人情報を広告に活用していくという仕組みです。しかし、リテール企業1社で全てを実現していくということは、なかなか難しいというのが実態ではないかと思っています。そのため、いろいろなプラットフォームや外部ベンダーに情報を提供していくことが前提になってくるという点を、まずはご理解ください。

その前提に立ったときに、外部に対して個人情報の提供・活用をしていきますよ、という内容をきちんと生活者に対して示す必要があります。各メディアで接点のある生活者(お客様)が情報収集をするタイミングで、規約等に、データをどういうふうに利用するのか、第三者への提供も含めて実施する旨を記載しなくてはなりません。「生活者の個人情報を適切に取り扱いますよ」ということを、わかりやすく説明していくということが、リテールメディアを運営する企業の責任ということになっています。

規約などに目を通さず、プライバシー情報の提供を許可する方も多いと思います。しかし、企業側の姿勢としては、生活者が納得しやすい安心できるメディアであると示すことが非常に重要な役目になってくるのではないでしょうか。

さいごに

リテールメディアは、まだまだ新しいマーケティング手法です。特に、国内ではスタートしたばかりですので、もしかすると更なる技術の発展やデータの活用、AIの進化などによって発展していくのではないか、という市場の期待値があります。

市場が大きくなっていく中で、リテールメディアを運営していく企業様、自社で運営しないという企業様、どちらもいらっしゃるかと思います。しかし、どちらにせよ「リテールメディア」という新しいマーケティング手法があるということを認識をしておくのは、非常に重要なポイントです。大きな変化がどんどんと起きていく時代の中で、きちんと情報をキャッチアップしておきたいですね。

今回は、【後編:リテールメディアの活用事例・注意点】をお届けしました!
前編ではリテールメディアの概要・注目される背景をお伝えしておりますので、ぜひこちらもご参考ください😊

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